PHOTO YODOBASHI

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vol.16 パキスタンへの旅 - カラコルム編 その②

Text & Photo by 中西 敏貴

© TOSHIKI NAKANISHI

PHOTO YODOBASHIカラコルムの山並みを見ながら過ごす日々が数日過ぎ、体内時計はすっかりパキスタン時間になりました。それでも高揚感は収まるどころか高まるばかり。宿の部屋を一歩出るだけで、これだけの光景が見られるのですから、写真好きにとっては致し方ないといったところでしょう。例によって朝の5時には大音量のコーランが村中に響き渡り、半ば強制的に起こされます。つまり、日の出前に起き出すことの多い写真家にとっては、ある意味ではありがたい国なのです。

さて今回は、数日滞在したシガールからインド国境に近いカプルーへと向かい、さらにはフンザへと向かう大移動の旅をお届けします。岩のような山肌と砂礫の大地が続いたかと思えば、突然黄葉に包まれた村が出現する絶景ルートです。

© TOSHIKI NAKANISHI

シガールからカプルーへと向かう道中に出会った男性3人組。冬支度のために薪を拾い集めて来て、ちょうど休憩のためにここに座っていたのだそう。出会った場所は村からかなり距離のあるところでしたが、彼らは毎日のようにその距離を歩いて仕事をしているといいます。トラックや馬も使わずに、自分の足で歩く。楽をして写真を撮るな、自分の足で撮れ、という心の声がしたようなしないような。

© TOSHIKI NAKANISHI

カプルーへと向かう道中にはいくつかの村がありましたが、この場所は特に目に焼き付いています。到着した時間がよかったこともあり、黄葉がキラキラと輝き、風景が立体的に見えます。そしてそれらの黄葉は上から見るとサークル状に広がっています。村の名前をガイドに聞くと「ゴール」と教えてくれました。意味は「丸い」。なるほど、確かにこの村を高台から見ると円形状に広がっているのがわかります。

© TOSHIKI NAKANISHI

ゴールの少し先には小さなバザールがありました。日本でいうところの商店街のようなものです。色々なものが売られていますが、このバザールで目立っていたのは肉屋。彼らは店員なのか、それとも客なのかよくわかりませんが、吊るされた肉の横でポーズ。パキスタンの男性は大抵フレンドリーで、お願いするまでもなく撮れとアピールしてきます。

© TOSHIKI NAKANISHI

また薪拾いの男性に出会いました。どれくらい遠くから歩いてきたのかわかりませんが、近くに薪が拾えそうな場所はなかったので、おそらく相当な距離を歩いて拾い集めてきたのでしょう。もう日本では見ることのない光景ですが、これが彼らの日常なのかもしれません。

© TOSHIKI NAKANISHI

途中写真を撮りながらだったこともあり、5時間以上かけてカプルーへ到着。長旅になりました。今日はここでランチタイムです。

© TOSHIKI NAKANISHI

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カプルーには、村の一番眺めの良い場所にフォート(城)があります。かつてこの村を治めていた王族が住んでいたところ。今はホテルとして整備され、ツーリストも宿泊できるようになっていますが、さすがは王の家と言わんばかりの絶景です。感心してみていると、特別にと、支配人がフォートの屋上へと案内してくれました。国は違えど、統治者は高いところがお好きなようです。

© TOSHIKI NAKANISHI

シガールへと戻った後は、一気にフンザへと車を走らせます。ここからは数時間のロングドライブですが、とにかく絶景が続くので寝ている暇などありません。インダス川を眺めつつ、時折出現する黄葉の村の風景に感嘆の声をあげるドライブ。天気も相変わらず快晴で、雪を纏ったカラコルムが美しい姿を見せています。

© TOSHIKI NAKANISHI

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絶景ドライブを終え、日没近くにフンザの中心地カリマバードに到着しました。この地域には、1974年までフンザ藩王国があったそうで、50年ほど前まではパキスタンとは別の国として存在していたことになります。かつては玄奘三蔵が中国へ旅をする途中にも立ち寄った村とされ、フンザはそれほどの長い歴史を積み重ねてきた由緒ある村なのです。これまで見てきたどの村よりも横に広く、こうして夕日が差し込む時間もありました。川幅が広いということは、人も暮らしやすかったはず。村が大きく発展している理由のひとつなのでしょう。

© TOSHIKI NAKANISHI

ホテルの北には、フンザピーク(6,270m)やレディフィンガー(5,985m)が迫る圧倒的なロケーション。この写真を撮影している場所で2,800mを超えているのですが、そんなことすら忘れてしまうスケール感で山々が迫ってきます。北海道で2,000m超えの山は数えるほどしかないのですが、今日のホテルはそれよりも上にあるということ。高度の感覚がおかしくなります。

© TOSHIKI NAKANISHI

地元のガイドがゴールデンピークと呼ぶ、スパンティーク(7,027m)。夕日を浴びて黄金色に輝くからそう呼ばれるとのことですが、むしろ日没後の残照に浮かび上がる姿に震えました。

© TOSHIKI NAKANISHI

夕日を眺めていたドゥイカルの丘(2,800m)へ真夜中にもう一度上がってきました。満月に近かったため星撮影には不向きでしたが、それでも空気が澄んでいるのでしょう。しっかりと星が写ってくれています。何よりも、月明かりに浮かび上がるカラコルム山脈の美しいこと。ラカポシ(7,788m)、ディラン(7,266m)、ウルタル(7,388m)といった高峰群が、夜の空に輝いています。パキスタンに通うようになってすぐに聞いた「フンザ」の素晴らしさ。その理由の一端を、真夜中の村を眺めながら感じることができました。この先の旅は、上部フンザと呼ばれるエリアへと向かい、さらに標高を上げていきます。富士山よりも高い場所を訪ねる旅はもうしばらく続きます。(つづく)

( 2024.01.11 )

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