PHOTO YODOBASHI

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2021年夏・旭岳ハイクこぼれ話
「なんてことでしょう」(某番組風)

我々はピーク(山頂)を目指さない。ピークは君の中にあるんだ。

いや、写真を撮るという行為の動機のひとつとして、未だ見ぬ景色を写し止めるというものがあろうかと思います。これは写真を見る側であったとしても同じような話です。したがって純粋に見たことのない景色には無条件に惹かれます。写真家・中西さんが何やら最近山を登って写真を撮っているらしいというところから始まった山登り。確かに写真を見せてもらうと「見てみたい」とはなります。しかし、山登りでしょう? 岩場みたいなところをよじ登って、滋養強壮なドリンク片手に叫んでる絵が浮かびますが、ゼーハゼーハ言いながら醜くダラダラと汗を流し、嘲笑誘うへたりこんでる自分の絵でそれが何度も上書きされるのです。過去に記事でお届けしたように高尾山に何度か登りました。気持ちよくはあるのです、垣間ね。しかしのめり込むほどじゃ、、そんなわけで、旭岳ハイクの前日うそぶいていた台詞が冒頭のものとなります。

しかし、中西さんはちゃんと我々を染める手段を用意してくれていました。我々は我々で、未知なるものに惹かれて、何度か旭岳には足を運んでいるわけです。となると、なんとなく自分の中でもケリを付けたくなります。「だから、どうなんだ?」と。自分を追い込むために、せっせと山登りグッズを買い揃えます。登山靴にザック、ストックに、各種衣装、おお荷物にならない水筒も要るな、熊よけの鈴、、買い物は楽しい、実に楽しい。特に扉の向こう側のための買い物は最高に楽しいのです。カメラだってそうですよね?
「これを撮るためにはコレが必要だ!」なーんて必要ないんですけどね、99%(笑)まあこの浪費と言うべき衝動も、要は脱皮行動みたいなものだろうと思うのです。揃ってくると、とりあえず実戦へ出撃したくなるもので中西さんに連絡。彼は実に百戦錬磨・手練の営業マンのようでした。いやあ、こんな美しい世界があるのかと。感心しちゃいました。そんな珍道中のこぼれ話と、買ったものについて少しお届けしたいなと思います。

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設定されたルートは、姿見駅(ロープウェイ駅)から裾合平までチングルマを眺めて、中岳温泉で足湯に浸かるハイキング。

往復10kmほどでしょうか。山登りマイスターの皆さんからすれば「あーハイハイ」というものでしょうけれど、平地を普通に10km歩くのでもなかなかです。我々の作例撮影ロケでも一日で歩く最大距離に近いかもしれません。高低差はさほどありません。山登りではなく「ハイキング」。登ってくれてるのは1600mまで我々を運んでくれるロープウェイ様です。隊員は中西さん、編集部からZ II、TA、Kという4名編隊となります。ちなみに、姿見の池あたりから地獄谷の横の尾根を登って一気に山頂を目指すルートと、我々が目指す中岳温泉を回っていくルートがあるようです。ハイ、我々はピークを己の胸に秘めております。また今度!

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やってまいりました。旭岳。冬はこのハイマツも雪の下、真っ白になってしまいます。それはそれで何とも言えず美しいのですが、晴天の夏の景色も本当に美しいです。相変わらず噴煙はモクモク。雪の場合細かなアップダウンはすべてがリセットされるのですが、夏は・・・。あまり登らないとはいえ、それなりにはアップダウンします。今年の北海道は異常に気温が高いのか、山の上でもまったく涼しくはありません。山の天気は変わりやすく、いつも登る前まで天気予報とにらめっこですが、奇跡的にこの日は最高の晴れ間が広がってくれました。いざ出発です。

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裾合平まで行かずとも咲いてました、チングルマ。しかし駅を降りてすぐのこのあたりで満開気味だとすると、先に歩を進めるとひょっとすると未だ時期が早いかもしれません。

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歩いてきた道のりを振り返ると、画面中央の遠くに見えるのが美瑛町、中央やや左側に小さく見える建物がロープウェイ姿見駅です。そうなんです。歩いてきた道のりを自分の足で戻らなきゃならないのが山登りのステキなところ。

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ハイマツの植生帯を超えると雪渓がお出まし。スカッと抜ける場所まで来ると、なんとも言えぬ光景が広がっていました。10数年前に写真愛好家の先輩に連れられてニュージーランドの南島を訪れましたが、それを彷彿させる景色です。この景色を見るだけでも値打ちがあるなとため息が漏れました。ここに椅子を出してスキットルで一杯やれれば最高でしょう。下山できない恐れがありますが。

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このあたりで一面チングルマが咲く景色に出会うつもりでしたが、少し時期が早かったようです。いいんですよ、また来ましょう。秋の時期に来ると今度は紅葉で楽しめるそうです。紅葉自体もおそらく全国で一番早く訪れます。撮影でたとえば桜前線を南から北へ追いかけるように、標高を上げていくとまた違った世界が広がります。

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いやあ、気持ちいい。全国いろいろなところで新機種握って撮影してきましたが、ちょっとない景色かも。

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「ハイキング」でもそれなりにアップダウンはありますが、なかなか急な岩場が現れたら、今回の最終地点・中岳温泉はもうすぐ。温泉と言っても足をつける程度の大きさです。ガイドをつとめてくれた中西さんに「あとどれぐらい?」と尋ねると、なんちゃらの出前の如く「もうすぐですよ!」を何度か繰り返していました。ガイドさんとして素晴らしい仕事です。おそらく私の瞳孔が満開だったのでしょう。

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さて、到着。湧き水のように小さな穴からお湯が湧き出していて辺りは硫黄臭が立ち込めています。とりあえずせっせと登山靴を脱ぎます。

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いやー極楽。画面右上から源泉が流れ出し、画面左上は沢と繋がっています。源泉がなかなかな温度なので、沢側に座った方は時折、「あぢい!」という声を聞くと足でかき混ぜます。ここではじめて会ったもの同士、しばし歓談。


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さて、ここからは登山グッズの紹介を少し。まず登山靴ですが、これがなければ始まらない!というほどに大事なものです(と、実感しました)。また、買い方自体も大事です。お店に行って適当に買えばいいかといえばそうではありません。登山目的に合わせて選び、その上で自分の足にきっちり合わせ込む(フィッティング)ことが何より大事です。登山靴を買ってみて痛切に感じたのは逆説的なのですが、「日頃こんなに足のことが気になっていたのか」ということです。登山中に足のことが気にかかることは一切ありませんでした。疲れたり足が痛かったり、つまりそんなことがなかったわけです。この経験から、普段履きの靴もきっちり自分の足に合わせたいと感じる次第です。以下、今回共にした2名からのコメントも掲載します。参考になれば幸いです。

編集部 TA (靴は写真右上)

サイズは一般的ながら、足の形が幅狭の甲低で選ぶのが大変でした。お店で形にあうような靴を何足か履かせていただきましたが、一足ごとにどれも違いがあって、何を重視するかによって自分に合う靴が変わるため、お店の方に相談に乗っていただき探りました。ナロータイプの靴などをいろいろ試した結果、その際に最も高価でしたがスポルティバというメーカーのものを選びました。よりフィット感を高めるために、インソール(中じき)をお願いしてもう一度履いてみるとぴったりとフィットしました。撮影をしながらのハイクは、足もとにそこまで注意を払いながら歩けないのですが(どうしても歩き方が雑に)それでも足を捻ることなく、雪解けの水の中に入っても、濡れて染み込んでくるなんてことも皆無。とにかくどんな歩き方をしても疲れにくい、怪我をしにくい、と実感しました。むしろきちんと適した靴を履いて登らないと、それが理由で登山の楽しさにたどり着けず、とてももったいないことになるのではないかと感じます。

編集部 Z II (靴は写真左下)

1回目の高尾山登山の後、すぐさま銀座の石井スポーツにて登山靴を見に行きました。普通のスニーカーでは下り坂でつま先が痛いことや悪路での足首への心配があったからです。フィッティングスタッフは山専門の方で、どんな所を登るのか、登山の経験値など細かにヒアリング。その上で予算のことや靴の素材やデザインを決め、あとは実際に店内に用意された傾斜路で試し履きをさせてくれます。入念にフィッティングすることで、次回の登山に対して不安どころか根拠のない自信が湧いてくるのが不思議。今回のコースは登山というよりはアップダウンのあるハイキングコースといったところでしたが、それでも残雪の斜面や、水溜り、岩場など様々なシーンに遭遇します。教わったように靴紐をきつく締めることによって、下り傾斜の際につま先が突っ込みすぎず痛めることを防いでくれました。また、足首とかかとのホールドがしっかりしていることで悪路でも捻挫の心配を軽減してくれて一歩一歩を力強く進めることができました。これは間違いなく入念に選んだ登山靴のおかげです。今回はゴアテックス製の軽量防水素材の靴を選びましたが、「ベテランになる程、革製を選ぶ」とのこと。革製は重いのに何が良いのだろう?と登山靴の奥深さが妙に心をくすぐり、いつか革製の登山靴を所有してみたいと思います。

» 登山靴のフィッティングについては、以前「登山靴フィッティングは科学だ!」として掲載しました。こちらからご覧いただけます。

ヨドバシ.comの石井スポーツで選ぶ 登山靴専門ストアへ - 最適な靴の選び方からサイズ計測までご案内いたします

石井スポーツの実店舗でフィッティングしたい方はこちらの店舗一覧をご参照ください。


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その他登山グッズについてご紹介。これが普段の生活でも使い回せるものばかりで、なにも登山だけに限らず活用できます。ただ、軽量かつ機能的であることが大事だとは思うので、他のジャンルのものを転用するならばスポーツ界隈のものがよさそうです。

まずはバックパックのご紹介。そもそも私は背負うのが苦手で(荷物を極力持ち歩きたくない)、バッグの中でも実は一番縁がないのがバックパックでした。とはいえ必要なので買いましたが、まずものすごく軽いのに驚きました。背面はフレームが入って、背中に密着する部分はメッシュとなり、ベタっとパックが背中に沿うことがありません。実際山で背中との間の通気性が保たれるため不快感はなし。これは快適。快適となると両手が塞がれない自由度は素晴らしいもので、自転車にバイクに活用したいと思うに至りました。これは上蓋がついてパック自体が巾着になってるのもポンポンと放り込めて便利!

ヨドバシ.comの石井スポーツで選ぶ バックパック専門ストアへ - 多彩なアイテムから用途別やブランド別にお選びいただけます


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1. 半袖シャツ
速乾性でストレッチのきいたものです。
2. 長ズボン
速乾性があり、ストレッチが効いて、かつ撥水性が高いものです。山に登るならできれば長ズボン。
3. 長袖シャツ
半袖シャツと同様です。少し肌寒さを感じるときはこちらをメインに。

この3品は、どれもクルクル巻きにして荷物の中へ放り込めるため、旅先などでも重宝しそうです。速乾性が高いため、たとえばバイクでツーリングのときにも使い回せます(夏場はともかく汗をかきます)。またホテルでじゃぶじゃぶ洗って、ユニットバスの中で引っ掛けておけば翌朝また着ることができるので、荷物が減らせてコンパクトになり最高です!

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山の天気は変わりやすいためその対策と、ペットボトルでもよいのですが水を効率よく持ち歩くために。

4. ウインドブレーカー
薄手のものですがしっかり風を遮ってくれます。普段でもアウターの上でも下でもこれを着込めばあったか。
5. レインウェア
これがある意味最も高価。防寒用に使うこともできます。自転車やバイクには多少工夫して使うことができます。
6. ビニールの水筒
山で何が飲みたいかと言えばともかく水。1.5Lぐらい入って中身がなければ丸めればOK。キャンプなどでも重宝しそうです。

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なくてもなんとかなったり代用が利くものもありますが、気分を高めるために買っておきましょう。

7. 帽子
帽子はツバのついたものではなく、丸帽子で速乾性の高いものがよいと思います。くるくる巻にしてパックの中に突っ込めます。また山の上は紫外線が強いですから全方位に遮光してくれる帽子がよいと思います。
8. インナーシャツ
速乾性のシャツの下にメッシュ状のこれを着ておくとさらに快適。
9. グローブ
お忘れなく。着けていると安心ですよ。
10. ダウンジャケット
持っておくと安心。その防寒性の高さからは驚くほど小さくまとめられます。
11. 登山用靴下
登山靴フィッティングの際にこれを込みで行います。かなり厚みがあるので、体温保持と衝撃吸収に役立ってくれます。
12. ストック
私はお皿をつけるとスキーストックとしても使えるものを選びました。今回のようなハイキング程度ではさほど必要ありませんが、手を直接なにかに突くことを避けるためにも持っておくと安心です。「おっ」と躓いた時に突っ張るものがあれば余計な怪我から自分の身を守れます。左右セットで持っていれば誰かに1本貸すこともできます。

山登り用にすべて買い揃えましたが、いずれも軽量で高機能だからこそ普段遣いに転用すれば便利なウェアに。したがって、買い揃えても案外コストパフォーマンスが高いのです。確かに普段着てる人をよく見かけます。

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撮り手にとって、美しい景色をまず見ること、これは幸せなこと。

行きはまばゆいほどの晴天だったのが、帰りは雲が垂れ込めて(というより包まれ?)見る景色もドラマチックに変化。確かに撮るには魅力を感じるロケーションです。身の安全について常に気を配る必要はありますが、ファインダーを覗いていてともかく退屈することがありません。シャッターを無尽蔵に切りたくなるのだから、我々にとってはこんなに楽しいことはないわけです。今回登山靴を始めとして、装備を整えて上がったため、当然ながらストレスが軽減されました。美しい景色に心躍り、包まれて歩を進める充足感は、やはり「またここに来たい」と思わされるのです。山頂にいっても被写体的には面白みにかけるかもしれませんが、純粋に一度上まであがってみたいとも思うように。日頃から大した運動もしていませんが、全身運動になっていいねえなんて思ったりもして。できれば、紅葉シーズンにそれも初雪がオーバーラップする頃、もう一度再訪したいと思っています。またお会いしましょう。

( 2021.08.18 )