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美瑛の景色を突き詰めていくと、気がついたらカメラを持って「山」に居た。
写真家・中西敏貴インタビュー "写真の履歴書"

中西敏貴さんは、北海道上川郡美瑛町に居を構える写真家。現在東京品川のキヤノンギャラリーSで、写真展「Kamuy」を開催中です。また、同時にその写真集も発売されました。実は中西さんと私たち編集部は顔なじみ。彼はかつてこのサイトのレギュラー編集メンバーでした。また私は古く美瑛で知り合った同じ写真好き同士です。最近山に登っているという話は前々から聞いていました。なぜまた山登り?山で何の写真を撮るのだろうと、久しぶりに会って話を聞いてみることに。

美瑛町といえば風景写真に親しみのある皆さんにとってはよく知られた場所であり、一般的にも屈指の観光スポットでもあるとても美しい場所です。イメージを固めるために手作りされた写真集見本を眺めていると、あの美瑛らしい写真は一枚もありません。また一般的なイメージの風景写真の世界とは一線を画した作品となっています。一見なにを写しているかよくわからない写真が並び、景色というよりは気配を写そうという意図を感じるフレーム、そして景色の向こうにあるものを捉え、伝えようとする構成。聞けば美瑛という美しい場所を作り上げた「起源」を探って写してきたそうです。こればかりは実際に写真展で体験していただくか写真集を手に見ていただかないと伝わらないと思いますが、ともかくボーダーを越えていってます。またそこに行き着いた話が実に面白い。なにせ美しい丘を365日夢中になって何年も撮っていたら、ふと気がついたら山に居たというのですから。

そんなわけで「写真の履歴書」と称して、中西さんの「写真事始め」、そして写真家を志し現在に至るまでどう歩んできたか。これは1人の写真好きが、ひたすらに写真に対する興味を掘り続けてきたストーリーです。

( 聞き手:フォトヨドバシ編集部 K )

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中西敏貴写真展「Kamuy」

会場:キヤノンギャラリーS
会期:2002年9月19日(土)~10月31日(土) 10:00〜17:30(日曜・祝日休館)

暗闇に浮かび上がる「起源」と「気配」。なにやら単なる自然風景の写真展ではありません。会期は残り1週間。ぜひ足を運んでみてください。

» 開催概要はこちら(キヤノンウェブサイトへ)

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遠方で写真展へ行くのが難しい...という方には、会場でも販売している写真集をどうぞ。ヨドバシ.comでもお買い求めいただけます。

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作品から感じるのは、大いなる存在の"ブレス"だった

最新作「Kamuy」について、もう少し紹介します。
現在開催中の写真展会場にて。話を聞く模様を映すのにあまりに暗く不都合だからと開場前にお願いして照明を灯しました。作品はひとつひとつがスポットライトで照らされ暗闇に浮き上がります。BGMには森の音。来場者に森の中を彷徨うかのような印象を与えています。作品は皆さんが思い浮かべるような美瑛の景色ではなく、自然が醸し出す人智を超えた如何ともしがたい生々しさが描かれています。さて、この写真展の印象を表現するのにどんな言葉が適当だろう。何か静かなバイブらしきものを感じますが、少し違う。森羅万象を包み込む大いなる存在の"ブレス"といったところでしょうか。

「大きな景色」「小さな景色」を問わず、あえての表現なのですが遠慮無く被写体をメタファとして用い、ひとつひとつの作品もあくまで結果的にそこに並ぶものであって、総体としての世界を描いています。中西さんがこれまで表現してきたことと根底で連なるものは感じるものの、それにしてもガラっと違ったものを作ったものです。なにせ一枚一枚の作品は部屋に飾るような写真とは言い難い。写真作家にとってなかなか取りにくいアプローチではないでしょうか。中西さんも、いわゆる皆さんが想像する風景写真を撮ってきた1人でした。なぜここに行き着いたのか、そのあたりも含めてクロストーク的に映像にまとめました。ぜひご覧ください。

中西敏貴 "写真の履歴書" (1) 最新作「Kamuy」へ至るまで

中西敏貴 "写真の履歴書" (2) 掘り続けてきた写真への興味

( 2020.10.23 )