PHOTO YODOBASHI

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山岳写真に憧れて
vol.1 2022年9月・富士登山編

雄大な自然に厳しさと美しさが同居する山岳写真というものにずっと憧れてきました。ただ実際に登山を伴う撮影となると、技術や知識に加え、装備や体力も必要です。ひどい肩凝り症で普段から交換レンズすら持たずに撮影へ出てしまうような私には、重い荷物を背負って山を登るという行為は、想像するだけでも気が進まないもので、実現することのない遠い夢のような存在でした。

話は変わりますが、十数年に渡り少しずつ増えていった体重をリセットしようと昨年末に始めたダイエットで10kgを超える減量に成功。できることなら運動せずに食事制限だけで...と考えていても、身体が軽くなると不思議と運動をしたくなるものなのですね。そこで始めたのが低山ハイキング。東京近郊でいえば高尾山のような気軽に行けるところです。最初は息を切らし、翌日の筋肉痛に悩まされていたものですが、二度、三度と通ううちに、筋肉痛にもならず楽しみながら登れるようになってきました。

そんなハイキングを始めたことから、叶わぬ夢だった山岳写真というものへの思いが蘇ってきます。とはいえ、低山へカメラを持って行っても、撮れるものはイメージする山岳写真にはほど遠いもの。インスタグラムでいつも見ている「#山岳写真」に並ぶダイナミックな光景は、森林限界を超えた山の稜線へ出ないいことには撮れません。登山を始めたばかりの私には、それはまだ遠い存在です。


そんな中、8月中頃に山好きな友人が(何度目かの)富士登山をしたという投稿をSNSで見かけました。急に「登ってみたい!」という欲が沸々とわき上がってきます。調べてみると、登頂には相応の体力が必要なものの、装備さえ整えれば、他の3,000mを超える山へ登るのと比べれば経験や技術的な難易度は低いようです。ただ2022年の登山のシーズンは7月上旬〜9月上旬の約2ヶ月。計画を始めた8月末から9月上旬の間には、挑戦可能な週末があと3回しかありません。経験もない者が日程だけ決めて強行するのは無茶だろうということで、その3回の週末ならいつでも行けるよう、YouTubeの動画を参考に準備を整えておき、天候が安定しそうな9月最初の週末に挑戦することを決めました。

今回選んだのは、富士スバルラインの五合目終点から始める吉田ルート。登山道と下山道が分かれていて、山小屋が多い一番人気のコースです。富士登山というと御来光を目当てに山小屋泊を伴う夜の登山をイメージしますが、日の出から登れば登山道の渋滞もなくマイペースに登れるということで、登山中の撮影が目的な私にはむしろ好都合。未明に東京を発ち高速で約1時間半、午前3時半に開通となる富士スバルライン料金所を目指します。開通後、スバルラインの終点手前の登山者用の駐車場にクルマを駐め、仮眠をして夜明けを待ちます。

※登山客がピークとなる7月中旬〜8月末、富士スバルラインはマイカー規制となり、麓の駐車場へマイカーを置いてシャトルバスで五合目へアクセスすることになります。今回はマイカー規制の解除後だったため、直直接五合目まで行くことができました。

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空が明るくなった午前6時半に駐車場を出発。駐車スペースはほぼ満車でした。この駐車場から五合目の登山口までは、無料バスが運行されていますが、今回はタイミングが合わず約30分歩きました。木々の上に現れた富士山頂の途方もない高さに圧倒されます。始める前から「登れるのだろうか?」と自信を失いかけました。

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標高2,305mの吉田口から登山開始。登山口で検温と入山料(保全協力金)を払い、記念の木札をザックに掛けてもらいます。ここから六合目まではウォーミングアップ。樹林帯をゆっくりと歩きます。火山灰でできた砂利は少々歩きにくいものの、傾斜が少なく身体を慣らすには丁度いいです。

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標高2,390mの六合目、ここから本格的な登りになります。厚い雲の中、山頂どころか100m先も見えません。登山道の傾斜は一気に強くなり、つづら折れの繰り返しが始まります。その折り返しで時々休憩を挟みつつ歩みを進めていきます。写真奥に見えるのは荷揚げ用のブルドーザー、当山道とは別の専用道が整備されているのですね。

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溶岩の岩場もかなりありました。階段や砂利道はペースが速い分息が上がりやすく、同じ動作を繰り返すため疲れやすく感じましたが、こういった岩場はルートを探してゆっくり進んでいくため私には疲れにくく楽しいものに感じました。ただ、今回の富士登山に同行してくれた妻曰く、高所恐怖症にはこの岩場が相当な難関だったとのこと。実際に登っているときは感じませんでしたが、写真で見ると確かに結構な傾斜ですね。

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晴れ間が見えていた数十秒後には雨がパラついたりと山の天気は目まぐるしく変わります。できるだけ小さく軽く高画質にと持参したカメラはSONY RX1R IIIとRX0 II。特に、起動が速く片手でササッと撮れるRX0 IIはとても重宝しました。頑丈で防水なのもありがたい。

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六合目から約1時間。延々と続く登りに飽きてきた頃、標高2,700mの七合目を迎えます。ここからは少し登るごとに山小屋が現れ、そこでの休憩を挟みながら「次の山小屋まで頑張ろう」とリズムを持って歩みを進められます。標高3,000mを超え、八合目となる3,100mの山小屋手前で強い雨に遭いました。とても登山を続行することはできない状況です。山小屋で有料のトイレを借り、用を済ましてから防水のウェアを着込み雨宿りをします(といっても雨を凌げる屋根はありません)。そして、ここで急に登頂を諦め下山するかの判断を迫られました。スマートフォンで雨雲の動きを見ると、下山道の方へ向かっており、私には「(下山せずに)続行」と言われたような気がしました。ただ、雨によって足止めを喰らい、岩登りに時間を取られ、多めの休憩もあったことで、登頂できても下山する前に日が暮れてしまうことがスマートフォンの登山アプリから把握できました。ここで登山用のヘッドライトがなければ断念するしかありませんでしたが、幸いにも目の前の山小屋で2人分のライトを入手することができました(万が一を考え持参しなかったのは大いに反省すべき点です)。

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雨雲が通り過ぎ、山小屋を出発すると天気が回復してきました。相変わらず雲の中ではあるものの、上昇気流に乗って上がってくる雲に時折切れ間ができて光が射してきます。そして標高3,360mの本八合目を超えたところでなんと雲の上へ! 登山続行を決めたにしても、山頂も雲の中で展望はないだろうと想像していたため、これは嬉しい誤算でした。雲の上へ出るのは、飛行機の窓から見た景色以外では初めてのこと。気分が上がり、疲労で重くなった足も少し軽く感じます。また長い休憩が幸いしたのか、3,000mを超えても高山病の症状はありません。お守りがわりに購入しておいた酸素ボンベは、富士登山の記念品となりました。

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写真は本八合目の山小屋を見下ろしたところから。もうここまでは雲が追ってきません。空気は冷たいものの、快晴の陽射しは強く露出した肌に刺さるようです。ここまで来てようやく「登頂したい」という気持ちから「登頂できそうだ」という気持ちに変わってきました。とはいっても、持ち合わせているのは根性だけです。

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登山道から見る下山道。空には月も浮かんでいます。昼を過ぎ、多くの人々が下山を始めています。雲海でだいたいの水平は出ていると思いますが、日常生活では目にすることのない角度の傾斜です。標高を上げ続け、雲海もだいぶ下へと離れていきました。

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本八合目から1時間強をかけ、八合五勺を超えて標高3,580mの九合目へ。山頂まではあと30分、残り少ない力を振り絞ります。頂上手前の鳥居にさしかかりました。これをくぐると吉田口・須走口の山頂(標高3,710m)です! 「人生で一度は登ってみたい」と思っていた富士山頂へ足を踏み入れたところで不覚にも感動して目頭が熱くなりました。諦めずに1mmでも歩みを進められたらいつか山頂へ辿り着けるのですね。


  • PHOTO YODOBASHI七合目、日の出館(標高2,720m)
  • PHOTO YODOBASHI七合目、七合目トモエ館(標高2,740m)
  • PHOTO YODOBASHI七合目、鎌岩館(標高2,790m)
  • PHOTO YODOBASHI七合目、富士一館(標高2,800m)
  • PHOTO YODOBASHI本七合目、鳥居荘(標高2,900m)
  • PHOTO YODOBASHI七合目、東洋館(標高3,000m)
  • PHOTO YODOBASHI八合目、太子館(標高3,100m)
  • PHOTO YODOBASHI八合目、蓬莱館(標高3,150m)
  • PHOTO YODOBASHI八合目、白雲荘(標高3,200m)
  • PHOTO YODOBASHI八合目、元祖室・冨士山天拝宮(標高3,250m)
  • PHOTO YODOBASHI本八合目、本八合目富士山ホテル(標高3,400m)
  • PHOTO YODOBASHI本八合目、本八合目トモエ館(標高3,400m)
  • PHOTO YODOBASHI八合五勺、御来光館(標高3,450m)
  • PHOTO YODOBASHI九合目、迎久須志神社(標高3,600m)

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余計な荷物とわかっていながらも、持参したバーナーで湯を沸かし山頂で遅い昼食を摂ります。吉田ルートの山頂から火口越しに見えるのが、標高3,776mの剣が峰。今回は時間もなく御鉢巡りはできませんでしたが、もしまた登ることがあるならば、そのときはあそこまで行きたいと心に誓うのでした。

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午後5時、下山を始めます。眼下の雲に富士山の影が映っていました。下山道は岩場も階段もなく、ふかふかの砂利道が続きます。速度も出るし、下山時に痛めやすい膝にも優しいものの、単調なつづら折りが延々と続き、山小屋は一切なく、トイレも七合目と六合目にあるのみ。数時間もそれを続けていると、疲れや眠気に暗さも合わさって(私には)登っているときよりもしんどく感じました。

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PHOTO YODOBASHI一面の雲海と登山道の山小屋を見下ろします。3,700mもの高さまで登ると、2,000m台まで降りるのも相当に時間がかかります。日没が過ぎ、空の色が次第に淡くなり、夜が近づいてきました。ヘッドライトを灯し、いつしか暗闇となった下山道を休憩を挟みながら黙々と下りて行きます。見上げればたくさんの星も見えてきました。うんざりするほど続いたつづら折りも七合目を過ぎたところで終わり、六合目からは登山道と合流します。既に翌日の御来光を目指す多くの登山者が頂上を目指して登っていきます。わずか十数時間前に自分も通ったはずの道ですが、多くのイベントがありすぎて、ずっと前のことのように感じます。そして午後9時、五合目の登山口まで無事下山することができました。


入山時にいただいた山梨県発行の登山ガイドによれば、吉田ルートの歩行時間の目安は、登りが6時間10分、下りが4時間5分とのこと。自分自身も概ねこの時間でしたが、雨による中断や想定より長くなった休憩、そして同行者の体力等により、登山開始から下山までまでに要した時間は私自身が想定したよりも大幅に長いものとなりました。夏真っ盛りの7月でも9月上旬でも五合目は涼しく、山頂付近ではしっかりとした冬レベルの装備も必要になりますが、昼間の時間は7月1日で約14時間半に比べ、9月10日は約12時間半と2時間も短くなるため、昼間の登山で時間を要するかもしれないなら、シーズン前半がいいように思いました。暗闇の中を歩き、目を酷使して疲労が重なったことも考えれば、時期についても配慮が必要でした。とはいえ、限られた日程の中、防寒具や雨具を整え、初めて挑んだ富士登山はなんとか成功。60%ともいわれる登頂率で、最初のチャレンジから登頂できたのは、運が良かったからでしょう。初めて見下ろす雲海や山頂付近の別世界ともいえる光景等、それらを写真に収められたことはとてもよい経験になりました。今回の登山では経験も少なく反省点も多数あったため、それらを改善しつつ、またいつかチャレンジしてみたいと思いました。なお、同行してくれ心強かったものの、その妻は「もう二度と登らない」とのこと(笑)。脚の筋肉痛はその後4日間続くのでした。

( Photography & Text : Naz )

( 2022.09.22 )

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43MPの高画素機がこのサイズにギュッと凝縮。マウントされた35mm F2のゾナーがまた素晴らしいレンズなのです。高くても「買ってよかった」と心から思える名機です。

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4K動画も撮れる1型センサーの超小型カメラ。こちらもレンズが優秀で、歪みのない24mm相当の画角から、キレのいい画が得られます。登山時の記録に最適な1台です。

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登山時と下山時はほぼ無風でしたが、山頂は常に強い風が吹いていました。そんな状況でお湯を沸かすなら、とにかく風に強いこちらがオススメ。
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備えあれば憂いなし。危険と隣り合わせの登山ですから、予習は必須項目です。

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