PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Find a landscape
vol.15 パキスタンへの旅 - カラコルム編 その①

Text & Photo by 中西 敏貴

© TOSHIKI NAKANISHI

長年北海道で撮影を続けてきて、新鮮な気持ちが無くなってきたころ、古くからの友人が旅のプロを紹介してくれました。その方が僕に勧めてくれたのは、パキスタンへの旅。絶景はもちろん人々も素晴らしい。その言葉に惹かれて初めてパキスタンへと向かったのは、2019年のことでした。先進国へは何度か行ったことがある筆者でしたが、中央アジアは初めて。行く前は不安の気持ちの方が勝っていたものの、結局のところパキスタンの魅力に取り憑かれてしまい、翌2020年2月にも再訪。そうして一気にパキスタン熱が高まるばかりだった時、ご存知の通り世界は閉ざされてしまいました。

そこから3年。ついにパキスタン北部のカラコルム山脈へと旅立つことが出来ました。高峰が連なりを見せるカラコルムは、いつかは見てみたいと思っていた場所であり、そしてその麓で暮らす人々の暮らしも魅力的。絶景という安易な言葉では表現したくないほどに、北部パキスタンは心揺さぶられる旅となりました。

とても長い旅となったので、何度かに分けて連載をお届けする予定です。旅をしている気分でお付き合いください。

© TOSHIKI NAKANISHI

PHOTO YODOBASHI成田からバンコクを経由して、パキスタンの首都イスラマバードへは、約11時間のフライト。トランジットがあるためか、毎回それほど遠いとは感じません。特に、往路はなおさら短く感じてしまうもの。これ、海外への旅では多くの方が感じていることではないでしょうか。

イスラマバードは首都になって急速に発展している都市。道路も整備され、都会的な空気感が漂います。空港から市街地へと向かう際に見える光景は、想像以上に整った街並みで驚かされます。この日は一旦ホテルにチェックイン。翌朝に次の目的地スカルドゥへとフライトです。

© TOSHIKI NAKANISHI

イスラマバードからスカルドゥへのフライトは有視界飛行のため、天気が悪いとフライトキャンセルになることも多い路線。この日もなぜか3時間のディレイ。予定通りに飛ばないのは海外では良くあることですね。それでもこのフライトを選ぶ理由は、この景色が見られるからに他なりません。世界第9位の名峰ナンガパルバットをはじめ、カラコルムの山々が手に届くような距離で迫ってくるのです。1時間強の短いフライトですが、寝る暇もないほど。この後、カラコルムの谷間を少しずつ高度を下げていきます。

© TOSHIKI NAKANISHI

スカルドゥ空港はインダス川の中州にあるイメージ。周囲を高峰に囲まれているので、実際より狭い空間に降りていくように感じます。でも、ここまでくればもう安心。あとは着陸です。このスカルドゥの町は、K2などへアタックする遠征隊が滞在する場所としても知られ、海外のツーリストもよく訪れる観光の町としての顔もあります。賑やかなバザールでは中古の登山道具なども売られていて、時々掘り出し物が見つかることもあります。

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

スカルドゥからは車に乗り換え、さらに谷の奥にあるシガールの村へと向かいます。道中、前をパキスタンでよく見かける「デコトラ」がゆっくりと走っていました。過剰すぎる装飾ですが、車移動が多いパキスタンドライバーの楽しみの一つなのかもしれません。そして、すれ違う多くの車が日本車であることにも驚きました。TOYOTA、SUZUKIといった、僕たちに馴染み深いロゴをつけた車が本当によく走っているのです。ドライバーに聞くと、日本車は壊れないからいいのだそう。

© TOSHIKI NAKANISHI

シガールの谷からは、さらにTOYOTAの四輪駆動車に乗り換えてより険しい場所へ。車移動が多いとはいえ、道路事情はそれほど良くはなく、舗装されている道ばかりではありません。道のような、道ではないような場所をゆっくりと進み、到着した先には絶景が待っている。北部パキスタンはそんな驚きが続く旅でもあるのです。


© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

パキスタンの旅のもう一つの醍醐味は、人々との出会い。宗教上、女性とのコミュニケーションは簡単ではありませんが、男性は基本的にフレンドリー。こちらから声をかけるまでもなく、向こうから笑顔で挨拶をしてくれます。もちろん写真撮影も大歓迎されることが多く、つい撮らされてしまうことも。それにしても、イケメンが多い国なのです、パキスタンは。

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

子供たちも元気。空き地やそこにある道具を使って遊んでいる姿は、かつての日本のようでもあります。今はこうした光景は、日本ではほとんど見かけなくなったのだろうと思いますが、子を持つ親としては、懐かしいという感情とは少し異なる、複雑な思いが込み上げてくるのでした。

© TOSHIKI NAKANISHI

食は旅の楽しみの一つ。とにかく美味しいスパイスカレーと、オーガニックな食材を使った料理は、何度食べても感動します。朝、昼、夜と何かしらのカレーがいただけるというのは、カレー好きにとっては最高の国なのです。ただし、スパイスの量は現地基準なので、食べすぎると日本人の胃腸には厳しい時もあるので注意は必要なのですが。

© TOSHIKI NAKANISHI

イスラムの国だと実感する象徴がモスク。その大きさや規模は様々ですが、祈りを捧げている人の多さをみると、この国の宗教観が理解できるような気がします。シガールの村でも、毎朝5時にはコーランが大音量で流れ、目覚まし要らず。人々が生きることと宗教とは密接に関係していることを、この国は教えてくれます。

© TOSHIKI NAKANISHI

スカルドゥからシガールの村は秋真っ盛りでした。黄葉しているのはポプラなのですが、これは村の人が少しずつ植えたものだそう。子供が生まれるとポプラを植え、結婚する際にその木で家を建てるというのです。つまり、この素晴らしい景色は、自然と人の暮らしが組み合わさって生まれたもの、ということになります。確かに斜面を見ると自然に生えている木々はほとんどありません。人が暮らす集落にだけ、こうして木々が茂っているのです。

木は日陰を作り、暑さを和らげてくれることでしょう。成長したものは材木となり、風雨から守ってくれるはず。風の強い日は、これらが防風林の役割を果たしてくれます。人々の暮らしの知恵が、この風景を作っているというわけですね。カラコルム山脈の麓に形成されたこうした集落の存在こそが、風景に厚みを与え、だからこそ心に深く刻み込まれるのでしょう。(つづく)

<カラコルム山脈を見上げる村への行き方>

① 日本からバンコク経由でパキスタン・イスラマバードへ(約11時間のフライト)
② イスラマバードからスカルドゥへ(約1時間のフライト)
③ スカルドゥから各村へ(陸路で2~10時間)

パキスタンは個人旅行も可能な国ですが、国内の公共交通機関が整っていないため、移動には現地ガイド、現地ドライバーの手配が安全かつ便利です。また、外務省の渡航レベルが2のエリアでもあります。その点でも、現地法人を持ち、パキスタンに精通した旅行会社に諸々の手配を頼む方が安心です。

( 2023.12.18 )

Loading..
Loading..

今回の旅の基本セット。小さなデータ量ながら高精細。EVFの仕上がりが秀逸です。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..
Loading..
Loading..

海外の長旅では容量は多いに越したことはありません。旅の思い出を沢山持ち帰るために。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..
Loading..
Loading..

季節を問わず軽快なダウンジャケットは旅の必需品。寒い夜はこれを着て寝ると快適です。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..
Loading..
Loading..

暖房事情が良くない国への旅の必需品。布団に入れてポカポカ。

価格:Loading..(税込) Loading..Loading..)
定価:Loading.. | 販売開始日:Loading..
Loading..