PHOTO YODOBASHI

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山岳写真に憧れて
vol.3 2023年7月・再びの富士登山編

昨年9月に初めて登った富士山。初心者向きといわれる吉田ルートで五合目から山頂までを往復し、途中の雨宿りや休憩、山頂での食事も含め、所要時間が14時間にも及ぶ経験のない長丁場の登山となりました。あれから10ヶ月。高尾山や御岳山、筑波山等の東京近郊の低山を幾度も登り、長丁場の登山をこなせるであろう体力を少しずつ身につけてきました。次々と新しい山に挑戦するのもいいですが、同じ山に改めて登ってみるのも、自身が持つ体力や技術を再確認するのによいものです。そこで「今ならもう少し登れるはず」と考えていた富士登山に再び挑戦してみようと、山開き直後の7月上旬のタイミングに狙いを合わせてみましたが、自然相手では思うようにいきません。天候の安定した週末がなく、あえなく延期。その後は、天気予報から山頂の気温や風の変化までネットで観察し続ける日々。7月の終わり、数日にわたり天候が安定した週末を見つけ、準備万端でのアタックとなりました。

コロナ禍が明けたことやインバウンド需要の回復等、この夏の富士山はかつてない賑わいだそうで、ニュースでも頻繁に弾丸登山問題が取り沙汰されています。確かに乏しい登山経験と高低差1,300mに及ぶ登山と下山を一気にこなせる体力、そして安全に登山するために必要な情報・装備等、どれかひとつが欠けても安全とは言いがたいものとなってしまいます。加えて酸素の薄い高所でご来光目的の夜間の登山となれば、難易度が上がるのも当然のこと。筆者の目的は、前回と同様に「かっこいい山の写真を撮りたい」ですから、前述のような0泊2日の弾丸登山ではなく、できるだけ安全かつ楽に登れる条件を整え、日の出から登り始めて明るいうちに下山する「日帰り登山」で挑戦しました。

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富士登山・吉田ルートのスタートとなる五合目までのアクセスは、スバルラインのマイカー規制によりシャトルバスでの往復となります。前夜のうちに東京を発ち、麓の富士吉田IC付近に用意された富士山パーキング(富士北麓駐車場)へ車を停め、五合目行きの始発バスの時間まで車内で仮眠をとります。パーキング内にはバス停やトイレが設置され、駐車台数も十分。夜明け前の3時にバス停へ並び、30分後の始発を待ちます。富士山の山肌には、日の出を目指して山頂へと続く登山者の光の列が浮かんでいます。満員のバスに揺られ約45分、五合目に到着。トイレへ立ち寄り、入山料(保全協力金)を納めて吉田ルートのスタート。東の空がわずかに色を帯び始めた夜明け前、持参したヘッドライトを灯し登山口から歩みを進めます。

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高所順応とウォーミングアップを兼ねて最初は意識的にゆっくりと。次第に空が明るくなり、六合目へと向かう途中で日の出を迎えました。富士登山をする多くの人が山頂での御来光を目指して夜間登山を行いますが、標高2,300mもある五合目から先、わずかに残る樹林帯さえ抜けてしまえば(高度は違いますが)実は吉田ルートのどこからでもご来光を拝むことができます。上空は晴れ、眼下には所々に雲海が広がる素晴らしい日の出。富士山の山肌は赤く染まり、これから登るルートを見上げ胸が高鳴ります。1枚目の写真は六合目で撮影したもの。その六合目から先は、斜度のある本格的な登山道が始まります。

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前回の富士登山と異なるのは、上空に雲ひとつない快晴ということ、そして一度登った経験があるということ。勝手がわかっているということほど気持ちに余裕をもたらしてくれるものはありません。一般的な登山では1時間に300mぐらい標高を上げていきますが、酸素が薄い富士山では、強い登坂力と心肺を持っていなければそこまでの高度は稼げません。つづら折りの折り返しの度に休み、時には数歩ごとに息を整えながら小さく歩みを進めていきます。普段、上りでトレッキングポールを使うことはありませんが、息を整えるときに身体を支えることができるため、富士登山では重宝します。

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吉田ルートの登山道は歩きやすく整備された砂利道が大半で、所々にこのような岩場と階段があります。溶岩の岩は鋭利なところも多いため、グローブをしていると安心です。七合目を過ぎると山小屋が連続しますので、次の山小屋を目標にテンポよく登っていきます。途中、一度だけ30分程度の長い休憩をとり、持参したおにぎりを口にしました。

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眼下には山中湖や河口湖、箱根の向こうには伊豆半島と伊豆大島、雲海が広がる甲府盆地の先には八ヶ岳や南アルプスまで望めました。

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八合目にある山小屋 白雲荘の標高は3,200m。日本で二番目に高い山は南アルプス・北岳の3,193mですから、ここから先の標高は富士山以外にはないものとなります。

PHOTO YODOBASHI時々上昇気流に乗って小さな雲が追い抜いていきます。

PHOTO YODOBASHI昼間は登山道も空いているため、このような渋滞も数える程度。山頂に近づくほど混雑し思うように進めない夜間に比べると、昼間は自分のペースで登りやすいです。

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10時50分、五合目から6時間半かけ吉田口の山頂(3,706m)へ登頂しました! 多くの先客で賑わっています。ベンチに腰掛け、ここで2個目のおにぎりを頬張り、登頂した喜びも噛みしめます。


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今回の目標は、前回できなかった富士山頂の火口をひと周りする「お鉢巡り」をすること。火口越しに見える、3,776mの剣ヶ峰を反時計回りで目指します。

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見たことのない荒涼とした眺め。思いつくのは火星でしょうか、地球以外の惑星にいるような光景です。山頂までの登山道に比べれば険しくないはずですが、ここは標高4,000mに迫る高所。連続するアップダウンにすぐに息が上がり、なかなか歩みが進みません。

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かつての富士山測候所だった建物が残る剣ヶ峰、目前の上りが最も厳しく感じました。そして高山病でしょうか、頭が少し痛み出します。剣ヶ峰では30分ほど記念撮影の列に並びました。そして、もう半周して吉田ルートの下山口までゆっくり戻ります。後で知りましたが、お鉢巡りは時計回りの方が急な下りがなく安全とのこと。直径780mの火口一周は、道のりにして約3km、所要時間は1時間半〜2時間とのこと。実際には休憩や待ち時間も含めて2時間半ほどかかりました。

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13時過ぎた頃、下山を始めます。本八合目までは須走ルートと下山道を共用します。吉田ルートの下山道は、山頂から七合目まで岩場や階段が一切ない斜度の強い砂利道。フカフカなためバランスを崩しやすく、転ばないよう慎重に下ります。転ばずに速く下るコツは、前傾姿勢を保つことだそうですが、既に疲労を感じる脚や膝ではそれも難しく、軽い痛みを味わいながらの下りとなりました。ここでもトレッキングポールが役立ちます。あらかじめ覚悟ができていたからなのか、前回の下山時ほど長くは感じませんでしたが、延々と続くつづら折りの砂利道には正直うんざりしてきます。

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下界より20度以上気温が低い山頂でも、着てきた登山用の長袖Tシャツ1枚で過ごせるほど暖かな日でしたが、気温が上昇し、午後になると上昇気流により雲が上がってきます。こうなると展望はほとんどありません。下山路の途中には山小屋や休憩ポイントもほぼないため、淡々と下り続けるしかありません。寝不足や疲労もあったのでしょうが、頭の痛みが強くなり、七合目のトイレ前へ辿り着いたときに腰掛けたまま30分ほど居眠りをしてしまいました。高所での睡眠は呼吸が浅くなるため高山病が進行しやすいそうですが、標高3,000m以下まで下りたこともあり、運良く頭痛を解消することができました。

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六合目で登山道と合流。このあたりまでくると疲労もピークです。五合目までの間に少し登る箇所があり、それが地味にキツい。ラストスパートをかけ、16時30分、五合目の登山口まで無事下山。五合目では休憩を取らず、出発間際だったバスに飛び乗って富士山パーキングまで戻ってから休憩。日帰りの湯へ立ち寄り、夕食も済ましてから、渋滞が残る中央道で都内へ戻りました。

登山開始から下山までに要した時間は12時間。お鉢巡りをしたこともあり、想定していたより多くの時間がかかりました。五合目から出る最終のバスは18時30分。自分ではかなりいいペースで登れたつもりでいましたが、始発のバスで行っても最終のバスまで2時間しかなかったことを踏まえると、無駄の少ないソロとはいえ。日帰り登山をするには余裕はあまりなく思えました。もし最終のバスが行ってしまったら、始発のバスまで五合目で夜明かししなくてはなりませんから、登山時から下山時刻をある程度予想しておく必要があるように感じました(スマートフォンに入れた登山アプリが役に立ちました)。

余談ですが、真夏とはいえ高所ということもあり、長袖・長ズボンで登山をしました。キャップも被っていましたが、唯一直射日光下で肌が露出していた首の後ろが激しく日焼けしていることに下山後の風呂で気づきます。その後数日はヒリヒリと痛み、一緒に焼けた耳たぶの後ろまで皮が剥ける始末。富士山の紫外線の強さを痛感しました。日焼け止めと、全周に鍔のある帽子の使用をおすすめします。また、登山した日は数日雨が降らない乾燥した状態だったこともあり、下山道は砂塵が舞いやすく、下着の中まで赤茶色の細かな砂が入り込んでいました。その砂塵を呼吸時に吸い込んでしまったからなのか、咳き込むこともありました。念のためマスクの持参もおすすめします。


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最後におまけを。以前、飛行機から撮影した冬の富士山。手前の山肌に吉田ルートの登山道と下山道が写っていました(画像のクリックで大きな画像を表示します)。富士山は関東周辺の山へ登るとよく目にしますが、どこから見てもその頂の高さは別格。「あんな山によく登ったよな」と自分でも改めて感じてしまうのです。

参考:富士山オフィシャルサイト »

( 2023.08.22 )

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