PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

  • 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
  • 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
  • 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。

3群7枚目  設計図と完成品のはざまで
試作のプロフェッショナルたち (前編)

試作担当者は調整上手

2号

製品の開発を続けられている中で、製品自体にも変化が生まれていますか?

今のカメラはムービーの性能が飛躍的に上がっているので、放熱や静音への配慮などは、かつてより気にかけています。それらも試作の段階でいろいろ試しながら開発しています。

今榮
1号

新しいことをやろうとすれば必ず試作があり、その試作で得たことが経験値として蓄積され、さらに次の新しいことに繋がる。さっきも話にありましたけど、試作が無くなることはないんですね。

そうですね。試作にも段階があって、文字通り「お試し」で作ってみるような試作から、実際に製品へ組み込む前提の試作まで、さまざまです。ただ最近は「お試し」の試作は減りました。データの蓄積が進んできたからです。いきなり、製品に近いところで試作を作るケースが増えました。

今榮

メカの試作の話が続きましたが、実はレンズ(ガラス)にも試作があります。今まで作ったことがないような形状や大きさの非球面レンズを採用するような時は、設計値通りのモノが本当にできるのかを確かめるために試作をすることがあります。仮にできたとしても、作るのに時間がかかったり、歩留まりが悪ければ対処する必要がありますしね。

町田
4号

ふと思ったんですが、試作品って作るの大変ですよね? だって、量産する時には必要なパーツがぜんぶ揃っているけど、試作の段階ではそうではないはず。すべてのパーツを自分たちで作っているわけではないでしょう?

いいところに気づいてくれましたね! まさにそうなんですよ。ガラス屋さん、金属加工屋さん、樹脂加工屋さん、電子部品屋さん・・・たくさんのパートナー会社さんに一点ものを発注して揃えなくちゃいけないんですが、発注から納品までのリードタイムもそれぞれ違ったりするので、うっかりしていると必要なタイミングで試作品が作れなくなります。そうなると全体の開発スケジュールにまで影響が及びかねません。

今榮

それが試作品づくりの大変なところです。なので試作担当って、光学、メカ、電気など多方面に高度な知識があると同時に、人との折衝力やスケジュール管理能力にも長けた人が多いんです。そうじゃないと務まらない。

原田
1号

試作品づくりって、裏を返せば人と人との繋がりや仕事を調整してまとめ上げることなんですね。

そう言われるとくすぐったいですけどね。まぁそんな感じで、試作担当の仕事は新製品が無事に出荷されるまで続きます。今まさに工場で生産しているものから問題が起きる可能性もありますから、常に備えておかないといけません。

今榮
3号

よし、決めたでござる。拙者もがんばって高い方のレンズを買うでござる。

4号

「迷ったら両方買え」という名言もあるぞ。

ああっ、なんと有難いお言葉!

原田
馬橋所長

またこの流れが始まった。