PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

  • 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
  • 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
  • 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。

3群4枚目  「単」とは言え複雑で奥深い
やっぱり単焦点が好き

いやー、すっかり間が空いてしまいましたが、みなさまお変わりありませんか。
前回はズームレンズの話でしたが、今回は「単焦点レンズ」がテーマです。
写真用単焦点レンズはすでに200年の歴史がありますが、今なお進化を続けています。基本的な仕組みは何も変わらないのに、200年もの間進化し続けている工業製品なんて、そうそうありません。使う場面を選ばないズームレンズの性能がここまで向上した現代においても、写真を撮る人を魅了してやまない単焦点レンズ。その魅力はいったい何なのでしょう。設計の難しさはどこにあるのでしょう。そして設計者が思い描く単焦点レンズの未来とは。今回も深〜いレポートになりましたよ。

  1. 単焦点レンズの魅力って?
  2. 単焦点レンズの設計だってむずかしい
  3. レンズ=牧羊犬?
  4. 新しい価値の創造

単焦点レンズの魅力って?

3号

2号殿にお聞きしたいのでござるが、普段はズームレンズと単焦点レンズ、どちらを使うことが多いでござるか。

2号

私はもっぱら単焦点だなあ。しかも持ち歩くのは常に1本だけだったりする。

3号

拙者、前回の話をつらつらと読み返していたのでござるが・・・

2号

ズームレンズね。

3号

ズームレンズは「焦点距離を無段階に変えられるのでどんな場面にも対応しやすい」のが利点、という話があったでござる。ということは、焦点距離を変えられない単焦点レンズは、その場その場での対応力に欠ける、ということでござるな?

2号

えーと、逆説的、かつ言葉を選ばなければ、そういうことになるよね。

3号

それなのに、どうして2号殿は単焦点、しかも1本だけなのでござるか?

2号

どうしてと言われてもなあ・・・

3号

やはり大きなボケでござるか。あるいはコンパクトさでござるか。

2号

もちろんそれもあるけど、でもそれだけじゃないんだよなあ・・・うまく言えないや。

なかなか興味深い話をされてますなあ。

原田
2号

原田さんも単焦点ですよね? 自他共に認める単焦点フリークですから。

日曜の夕方にやっている、長寿お笑い番組の名前を聞くだけで心がザワザワし始める原田です。

原田
2号

持っていくのは、単焦点レンズ1本だけですよね? もちろん。

いや、そこは違いますね。何本か持っていきますよ。

原田
2号

えっ? なんか意外・・・

50mm F3.5のバージョン違いを5本とか。(実話)

原田
2号

ごめんなさい、聞いた私が悪かったです。

3号

原田さんの場合は、どうして単焦点レンズなのでござるか?

さっき、「単焦点レンズは対応力に欠ける」という話をされていましたが、単焦点の面白さがまさにそこにあるからです。

原田
3号

うーむ、分からぬ。

レンズが対応力に欠ける。ではどうするか? 人間の側が対応すればいいんですよ。対応することを余儀なくされる、と言った方が正しいかな。そこが面白い。

原田
2号

そうそう! まさにそういうことなんです、私が言いたかったのも。 あースッキリした!

3号

拙者はまだピンと来ないのでござるが・・・

2号

要するにね、誰がどう見たって広角レンズで撮るべき広い風景があったとするでしょ? でも手元には50mmの単焦点しかない。じゃあどうするか。諦めずに工夫してなんとか撮るじゃない。頭と体を使ってね。そこが面白いんだって話。

全景を撮ることができないんだったら、一部分を切り取ることで逆にこの広さを表現する方法はないか? と頭をひねってみたり。

原田
2号

「考えて、工夫して、実践してみる」という点で撮影者が試されるのよ、単焦点レンズって。

ポジティブな諦め。あるいは「これ1本でなんとかしてやる」という覚悟。それが痛快。これは多くの人が共感してくれるんじゃないかなあ。

原田
馬橋所長

はい、決まり! 前回がズームレンズだったから、今回のお題は「単焦点レンズ」。

望むところです!

原田