PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Photo by 510

エリア510
Volume 12

510からの贈る言葉

いよいよ最後のエリア510です。

未だ世の中が平和であった一昨年、確か飲み会の席で「510さんと一緒に遊ぶ」企画をオファーされました。秀作から駄作までいろいろなロケアイデアが湧きに湧いて(飲みながら、ですから)先々が楽しみなスタートです。しかし、最初は中野、次は船橋、さらに調子に乗ってウラジオストックまで足を延ばし、さ~て次は海パンいっちょで!と腕まくりをした途端にコロナ禍に見舞われ、ずっとインチキな私小説めいた話ばかりを展開して来てしまってスミません。それでも飽きずに(飽きたり呆れたりした人もいるでしょうが)エリア510を眺めて下さった方々、ポジティブに感想や質問をお寄せ下さった大勢の皆さん、心から御礼を申し上げます。有難うございました。

さてフォトヨドバシから与えられた最後のテーマは「PY読者の皆さん」への「贈る言葉」。と言われましても、どんな読者に向いて書こうかな、と悩んだわけです。なぜなら、感想や質問を送って下さる方々を介してしか、エリア510の読者層を知るすべがないからです。自分の知る限り、ニコンファン(いわゆるニコ爺だけでなく、ニコ姐を含めた老若男女)、非常勤講師を勤めたときの教え子、いろいろなジャンルの写真家、各種雑誌の編集者、ライバルでもあったカメラ(レンズ)メーカーの社員やOB、仕事上で取引きのあった方々、ニコンOBと現役社員、全国にいる親戚(最後の二つは半ば強制的に読んでもらっていますが)など様々ですから、誰に向かって書こうかと困ってしまいました。しかも偉そうに「贈る言葉」なんて、金八先生や最後の授業(懐かしい)ではあるまいし。そこで、考え付いたのは自分の経験から二つ。一つは『自分の意見を持って、それを口に出す』、もう一つは『写真は多くの趣味との親和性が高い』ということです。

さて、それらを語る(騙る?)前に、先ずケリを付けたい前哨戦があります。これまで11回のエリア510記事に対しての感想や質問には、そのたびに個別の回答をお送りしておりましたが、多くの共通項が見受けられましたので、この際それらをまとめて公開させて頂こうと思います。先ずは記憶に新しい前巻の記事から遡ります。

vol.11  F3分解

Q:「流血事件」とはどういうこと?

A:確か2時間目に差し掛かって疲れて来たころ、ラジペンが机から落ち掛かりました。それを抑えようとしたら、尖った先端が左掌にぐっさり、血がタラ〜と言う出来事です。現場は大騒ぎでした、わはは。録画されていてもこれは流せませんね。ありがたいことに応急措置ですぐに止血でき、当日夜の宴席も難なく、翌日には痛みも感じないほどでしたので、ご安心下さい。


Q:なぜ最後にダイキャストを放り出したの?

A:40年前ならこんな分解など15分で終わったのですが、忘れていた手順があった上に現物が見事なジャンク品だったため、あちこち固着していて3時間以上手こずりました。例えばシャッターダイアルの3本の小さな「芋ネジ」はすっかり錆びていましたので、泣く泣く禁じ手の電動ドリルを使ったわけです。それに加えて流血事件まで加わった顛末でしたから、結構へとへと。最後は放心状態でダイキャストを放り出した訳なのです。それにしてもちょっと乱暴でしたね。ダイキャストや回路に頬ずりでもしてお別れすれば美しかった、と大反省しています。


Q:分解の後の再組立てはしなかったの?

A:過去に僕が分解した目的の多くは事故解析するためでした。徐々にばらしながら原因を探り、見つけたらそのままの姿で担当に渡すということを繰り返していました。今回は余計な寄り道が多く、コワしてしまった部品もありましたし、日も暮れて来ましたので組立ては断念しました。


Q:F3よりもnew F-1が好きだけれど、分解してくれないの?

A:実際にNユーザーからはF4やFA、MユーザーからはX-1 motor、PユーザーからはLXなどの分解をして欲しいと声が届いています。40年前にはそれらを自分でバラし、使っているICを裸にし(これが大変)、回路図に落として特許侵害がないかなどの解析をしていました。機械的にも電気的にもメーカーの技術と創意工夫の塊でしたので、大変でしたが勉強にもなり、しかもとても楽しい時間でした。機会さえあればその懐かしい内部をもう一度見たいですね。個人的にはライカR4をもう一度分解したいと思っています。上カバーを外すと、ベースとなったさるカメラの親亀基板(これだけでも複雑)の上に、R4に仕立てるべき子亀基板(さらに複雑)が乗っていると言う、凄まじい回路基板実装でしたから。


Q:動画に出て来た細いハンダごてはどこの?

A:80年代に会社から支給されていた英国A社製のものです。細いのに熱容量が大きく、これ一本で何にでも使えました。ただ静電気に弱いCMOS回路の時代になると、しっかりアースされているハンダごてに置き換わって退役しました。それを捨てずに今でも重宝している訳です。

vol.10  半月板手術

Q:半月板ってお皿のこと?

A:いえいえ、大腿骨とひざ下の骨の間にある「部位」のことで、軟骨と一緒にクッションの役目をします。そもそもお皿は半月の形をしていないし。調べたら英語で "meniscus" と言うのですね、そう、あのレンズ形状です。


Q:その後膝はどう?

A:手術から9ヶ月以上経過し、ようやく軽いジョギングやスキップめいた動きができるようになったものの、未だ数十mがやっとです。執刀医と理学療法士の先生からは「衰えた筋肉の増強が一番」、「歩くより筋トレ!」と指示されて、毎日スクワットと写真の道具を使ってウエイトトレーニングです。ついでに高タンパクのカニカマを頬張ってプロテインも飲んで。これだけやれば筋肉バキバキになるのでしょうが、残念ながらもう成長ホルモンが…悔しいです。長丁場を覚悟して徐々に、と思っています。

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Q:そのギターは今でもあるの?

A:押し入れの奥に、埃だらけのケースに入っていましたが、本体もカポタストも無事でした。ネット情報とは大したもんで、ブランドと型名で検索したら、メーカーの来歴と当時の価格まで出て来ました。そこで、ガット6本と音叉を買いました。裸眼でコードも読めて指先も良く動く時でさえ、あの程度の腕前だったわけですから、音が出れば何でも良いと、とにかく一番安いのを。現代はクリップチューナーなる便利なものがあるのを知りましたが、これも安っすい音叉で十分。第五弦(細いほうから5本目のやつ)は開放時に「ラ」の音ですが、正しくは「A」で440Hzであることをネットのおかげで初めて知りました。そんな知識はともかく、鈍りに鈍った指先にはナイロン弦でさえ痛いですね。少しピアノが弾けるらしい孫と演奏でも、と思いましたが、習っているのは紅蓮花だそうで、あえなく敗退。

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