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エリア510
Volume 7

まったく収拾のつかない蒐集、あるいは収集(その2)

お元気ですか。
お変わりありませんか。

これは便りをしたためる時のお決まりの書き出しですが、今は単なる飾りではなく、本当の意味でこれを書いています。この言葉の重さを噛み締めています。お変わりありませんか。

僕自身はしっかり外出自粛を実践していますから変わりようがありません。変わりませんが・・・暇です。もうちょっと正確に言うと、チョー暇。仲間たちと会って酒を酌み交わすのが数日空いただけでも落ち着きが無くなる体質なのに、約束をすべて延期してもうすでに何ヶ月会っていないことか。去年の今頃なんか、連日連夜の送別会だったのに。現在の状態が早く終わってくれないと逆に体を悪くします・・・まぁそんなことをボヤいていても状況が好転するわけではないので、はい! 元気よくVolume7に参りましょう! 今回はVolume5の続き、「まったく収拾のつかない蒐集、あるいは収集(その2)」です。


集めるのか。それとも集まってしまうのか。単に捨てられないだけなのか。僕の場合、どれも正解なのです。しかし集めた(集まった)ものを大別すると2種類に分かれます。一つは何かの記念として。もう一つは純粋に好きだから。今回はその両方の話と、それぞれにまつわるエピソードを。

僕はお酒が大好きですが、味について評論するのは得意ではありませんし、他人の感想にもあまり興味がありません。評価の基準はシンプルに「うまかったか、まずかったか」だけ。そしてそれは、「誰とどこで飲んだか」とか「どんな話をしたか」という要素に大きく左右されます。安酒でも楽しく飲めばうまいし、高くても「早く帰りたいなあ」と思いながら飲めばまずい。その意味で、意に反してまずい酒を飲まなきゃならなかった社員時代を終えた現在は、すべてのお酒は美味しい、というわけです。

でも少々厄介なのがワイン。もちろん飲みますよ。楽しく飲めます。しかし・・・僕はワインを飲んで美味しいと感じたことが一度もないのです。今までに国内外のあちらこちらで高級(らしい)ワインをいただく機会が何度もあり、その度に「いやあ、素晴らしいワインですね」なんて言ってましたが、正直に申し上げると、美味しいと感じたことはただの一度もありません。いや、違いました。いつ飲んでもおいしいと感じるワインが一つだけありました。それは「赤玉ポートワイン」。要するに舌と鼻がお子ちゃまなんですね。

ある時、ワイン通の同僚A氏から、味と香りについて講釈、いや解説を承りました。「初夏のブルゴーニュ地方、温かい風がふんわり運んでくる土の香り・・・」などと。は? それ何? A氏が言うには、味と香りの覚え方、伝え方の一つの流派なのだとか。しかし味と香りを妙な言葉で、しかも行ったこともない土地の名前で表現されてもね~。何しろこちらは赤玉ポートワインですから、完全に理解の外です。本当に理解したければお金と時間をかけて場数を踏むのでしょうが、そこまでの熱意もなし。しかしある時、その詩的表現に長けたA氏が、ワインのラベルを嬉しそうに持って帰る光景を目撃して、はたと膝を叩いたのです。ワインという飲み物、自分の好き嫌いに関わらず飲む機会だけは多い。それなのに味の記憶がまったく当てにならない。ならば、せめてラベルを持ち帰って記録しようと。ついでに一緒に飲んだ人にひとこと書いてもらえば、その時の雰囲気も思い出せる、と。

しばらくしてワイン専用のラベルキットなるものを発見しました。粘着剤付きの透明なシールを使ってラベルの表層だけを薄く剥がし取り、台紙に貼り付けるヤツです。小学校の時にやった、お尻方面の衛生検査を思い出してください。そう、あの要領。これをいつもバッグに数セット常備しています(あ、ラベルキットの方ですよ、検査キットじゃなくて)。そのラベルキットの裏面には「購入日」「価格」「味」などを書くスペースがあるのですが、そんなことより、一緒に飲んだ人たちに署名と共にひとこといたずら書きしてもらうのが習慣です。自分には分からない、しかも忘れてしまう味なんかより、いつ、どこで、どんなメンバーと飲んだか。その方が私にとっては大切な情報。きちんとバインダーに収めて、老後の楽しみに(あ、考えてみたら今のことだ!老後か・・・)本棚にしまってあります。この記事の一番最初にある写真がまさにキットを使ってラベルを剥がしているところ。これは今年1月のウラジオストク。

Photo by 510

ラベルコレクションの一部。ご覧の通り、ワインだけではありません。上の専用バインダーもありますが、現在はクリアファイルに入れて裏のサインも見られるようにしてあります。今ではだいぶ集まりました。ワインだけでなく、怪しげな東南アジアのビールや、余り好んでは飲みませんが、日本酒もあります。それにしてもいろいろなデザインがあるものです。