PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

  • 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
  • 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
  • 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。

2群2枚目  とっても収まらない話
だから「収差」というのです。

簡単に言うと、レンズの理想は「点が点に」「直線が直線に」「平面が平面に」「色が滲まずに」写ることなんですけど、それがなかなかうまく行かないんです。それが収差。

原田
馬橋所長

つまり、水平線が曲がっているのは「直線が直線に写らない収差」で、街灯がハレー彗星になるのは「点が点に写らない収差」ってことね。

さすが所長、勘がいいですね。

原田
馬橋所長

いやぁ、それほどでも。。

どうやら所長が撮ってきた写真は収差のオンパレードのようです。いい機会ですから、ここでいろいろな収差について見てみましょう。

原田

(ここで研究員2~4号が登場)

4号

ずいぶん賑やかで楽しそうですね。

別に楽しかぁないですけどね。

町田
馬橋所長

すごぉく楽しいですよ~。収差のお話ですって。さあ、みなさんも一緒に聞きましょう。


まず、現代の最新レンズでも収差はあります。これを完全に無くすことは、少なくともコンシューマー向けの製品では不可能です。要は「どのぐらいなら目立たないか、許容されるか」という話なんです。で、その収差にはいくつかの種類があります。誰が見ても一目で分かるものもあれば、一見しただけでは気づかないような、分かりづらいものもあります。では、まずは分かりやすいものから。トップバッターは歪曲収差。

町田
馬橋所長

待ってました!

歪曲収差(わいきょく・しゅうさ)

現象としては「まっすぐであるはずの線が曲がる」というもの。画像の中心から外側に向かって膨らむように曲がるのを樽型の歪曲、反対に内側に向かって萎(しぼ)むように曲がるのを糸巻き型の歪曲、なんて言ったりします。こんな感じですね。

町田
  • 歪曲収差 樽型歪曲収差 樽型
  • 歪曲収差 糸巻き型歪曲収差 糸巻き型
  • <発生理由ざっくり>
    絞り前後でレンズの光を曲げる力に差があることで、画面端に行くにつれて光が到達しようとする理想的な位置と実際に到達する位置に差が発生することによって起こる。
  • <人に例えると>
    酔って帰宅して、間違ってお隣の玄関を開けてしまう
2号

「到達する位置に差が発生」したわけね。

はい、次。

原田

軸上色収差(じくじょう・いろしゅうさ)

お次は「色モノ」です。「フリンジ」って言えば、「ああ、アレね」となる人も多いと思います。画像の中心に出る軸上色収差と、画像の周辺部で像の内側と外側に違う色の色づきが出る倍率色収差があります。これも画像に実際にはない、おかしな色が出るので分かりやすい収差だと思います。軸上色収差というのは、ピント面やその前後に紫や緑の色づきが出るものです。

町田

軸上色収差軸上色収差

  • <発生理由ざっくり>
    ガラスは、それを透過する光の波長(色)によって屈折率(どのぐらいの角度で曲がるか)が違うため、色ごとにピント位置がずれることによって起こる。
  • <人に例えると>
    歩幅が違うと一緒に歩くのが大変

倍率色収差(ばいりつ・いろしゅうさ)

画像の中心にも出る軸上色収差とは違って、画像の周辺部に出るので、パッと見ただけでは気づきにくいかもしれないですね。建物のような、線で構成された被写体だと目立つことが多いです。拡大してみるとよく分かりますね。ほら、黒い線の右側に緑色、左側に紫色が出ているのが見えますか。下の補正後のものと比べれば一目瞭然です。

町田

倍率色収差倍率色収差

倍率色収差(補正後)倍率色収差(補正後)

  • <発生理由ざっくり>
    ガラスを透過する光の波長(色)に対応する屈折率の違いで、ピント面に大きさ(倍率)の違う像が出来上がることによって起こる。
  • <人に例えると>
    つま先をタンスの角にぶつけやすい
1号

無理があるなあ。

世界の周辺には、虹がかかっている。

原田