PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
- 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
- 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
- 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。
2群1枚目 レンズとは、なんじゃらほい
凸に始まり、凸に終わるのであります。
凸レンズであるからこそ、レンズ全体を通ってきた光が中心方向に曲がって、ある一点に集まる。つまり、これがいわゆる「焦点」です。 |
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そういえば小学生の時に理科の授業でやりましたね。虫メガネで太陽の光を集めて、こんなふうにして黒い紙をチリチリと焦がすという実験を。 |
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あちちち。所長、熱いでござる。 |
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あ、ごめんなさい。黒いシャツを着てらしたのでつい。穴が開きましたね・・ |
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あれ? ちょっと待って。レンズの断面図を見ると、凸レンズばかりじゃないですよね。真ん中がへこんでいる凹レンズもありますが、これって・・・ |
いいところに気付きましたね。実は凹レンズもプリズムの集合体です。ただし凸レンズの時とは逆に、プリズムを逆さまにしたもの。それが凹レンズです。 |
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逆さまにして真ん中をへこませたということは、光の曲がり方はどうなるんだろう? |
それもまさに凸レンズとは逆でレンズの外側、つまり中心方向に集まるのではなく、広がる方向に曲がっていくことになります。 |
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最終的に光を一点に集めるために、レンズの中心方向に向かって曲げるというのは何となく理解できるんですけど、外側に曲げるということもあるんですね。いったい何のために? |
私はレンズの断面図を見る時に、こんな想像をするんです。「これはヒカリくん冒険物語である」と。 |
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ヒカリくんイメージ図。お見知りおきを。
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ヒカリくんの! |
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冒険物語! |
「オイラ、良い写真になるぞ!」という大志を抱いて、レンズに勢いよく飛び込んでいくヒカリくん。 |
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(ぽかーん) |
最初のうちはスイスイ。凸レンズでスイスイ。ヒカリくんは「こんなの、ぜんぜん楽勝だぜい!」と言いながらどんどん奥へと進んでいきます。しかし! |
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しかし? |
そこに突如として現れる凹レンズ。「ええっ? 聞いてないよお」と思いつつも、為すすべもなく凹レンズに飲み込まれていくヒカリくん。「おいおい、オイラが行きたいのはそっちじゃないんだよ〜。それじゃ逆方向だよう!」嗚呼、果たしてヒカリくんの運命やいかに! |
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すごい。完全に物語の世界に入り込んでいる。 |
こうなってしまうともう何を言っても無駄なので、最後まで聞いてあげてください。ホントすいません。 |
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しかし次の瞬間、救世主のように一枚の凸レンズが現れたではありませんか! レンズの外側に向かって投げ出されそうになったヒカリくんの体は、この救世主のおかげで無理やり内側に引き戻されました。危機一髪。 |
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(まばらな拍手) |
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えーと、つまりアレですね、レンズの断面図というのはひとつのストーリーで、凹レンズは起承転結の「転」であると。 |
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そして、その後に出てくる凸レンズによって伏線は回収され、「結」へと向かっていくと。 |
その通りです。レンズの奥に向かって光をどう導くか? それを考える上で、あえて逆の働きをする凹レンズが必要になるんです。 |
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1枚目が凹から始まるレンズもありますよね。 |
ええ、ありますね。それはいきなり事件の場面から始まって、過去に遡っていく作りのドラマみたいなもんです。要するにストーリーの組み立て方が違うだけです。 |
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なるほど、そういうことなんですね。 |
レンズ構成のパターンにはいろいろなものがあって、それぞれに特長があります。でもすべてのパターンに共通しているのは、どんな形のレンズがどれだけ入っていようと、1本のレンズ全体で見れば、ひとつの凸レンズになっているということ。そうじゃないと最後、焦点に光が集まりませんからね。そして、レンズ設計の大先輩たちが本当に偉大だなあと思うのは、現代のレンズの構成のほとんどは、はるか昔に考え出されたものをベースにして考えられるということ。現代のレンズ設計は昔とは比べ物にならないほど精密で繊細なものですが、元を辿れば昔のレンズの応用だったりするんです。 |
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あのう、もう一つ疑問があるんですけど・・・ |
はい、どうぞ。 |
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どうしてあんなにたくさんのレンズが、1本のレンズの中に入っているんですか? 本当にあんなに要るのですか? |
お、これまた鋭い質問が来ましたね。それはですね・・・ |
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それは・・・? |
次回。 |
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