PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

  • 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
  • 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
  • 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。

2群7枚目  レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
続・エフチの「チ」

馬橋所長

そう、それ。それなの!

ですよね、そこ疑問に感じちゃいますよね。順を追って説明しましょう。前回、レンズの明るさには焦点距離が関わってくるという話をしかけて終わりましたが、覚えてますか?

町田

たしかに、そのようなことを仰ってましたな。

3号

レンズの明るさは、入口から像面中央にどれだけ光を集められるかが、まず大事なのです。前玉径いっぱいを使って像面中央に光を集めているかはレンズ次第ですが、イメージとしてはこんな感じです。

町田

新宿光学総合研究所

たくさんのヒカリくんも、入口を越えては、入っていけません。
おや、1人だけヤンチャな子がいますね。

さきほど出てきた、入射瞳ですが、あれは「有効口径」とも呼びます。つまり、レンズが像面中央に集める光の入口の大きさです。

町田
馬橋所長

ユウコウコウケイ、ユウコウコウケイ。

2号

入口が明るさにとって大事というのはわかりますが、焦点距離が関わって、それが左右されるというのなら、イメージとしてはこんな感じ??

新宿光学総合研究所

4号

離れるから暗くなっていく・・・ということだよね。

ちょっと違いますね。

町田
4号

そういうことじゃないのか。

少しややこしくなりますが、焦点距離の回で、こんな話がありましたよね

町田
焦点距離とは、主点から焦点までの距離を指し、非常に遠くにある被写体に対して、そのレンズが作る像の大きさを表したものである。
焦点距離が大きいほど像は大きくなり、焦点距離が小さいほど像は小さくなる。

つまり、レンズが像面中央に集める光の入口が同じ大きさで、焦点距離が短いものと、長いものがあったとします。焦点距離の短いものは被写体が小さく(倍率が小さく)、長いものは大きく写りますよね。

町田
2号

それはそうですね。

物体のある決められた面積(単位面積)あたりで考えると、焦点距離が短いほど集まる光は多くなり「明るい」となります。焦点距離が長いほど「暗い」となります。入口の大きさが同じですから。

町田

たとえば、焦点距離が2倍になれば像の大きさは2倍になりますが、面積は4倍になります。有効口径が同じであれば、単位面積あたりの明るさは4分の1になってしまうということです。
また、部屋の中の明るさが部屋のサイズと窓の大きさの関係でどのようになるかを考えてもらえると分かりやすいと思います。部屋のサイズが大きい部屋を小さい部屋と同じ明るさにするためには、窓を大きくして窓から入り込む光の量を増やさなければいけませんよね。部屋のサイズを焦点距離、窓の大きさを有効口径とすると、レンズの明るさにも同じことが言えるということです。

町田
2号

なるほど、そういう理屈なのですね。

はい、レンズの明るさに焦点距離が関わってくる理由はそういうことです。そこで、、F値ってなに?という答えなのですが、F値は次のように定まるものです。

町田
F=焦点距離(f)÷有効口径

つまり、F値というものは、焦点距離と光の入口の「比」なのです。

町田
馬橋所長2号

(目をぱちくり)

1号

なるほど、あくまでも「比」だからこそ・・

4号

どんなレンズでも共通の指標として成り立つというわけか!

そういうことですね。これが「F値の実態」です。

町田
馬橋所長1号2号
3号4号

なるほど〜。

ここまで、像面中央に関して考えてきましたが、像面周辺でも同じように明るさを表す指標があります。それが、周辺光量です。周辺光量は、画面中心部に対する周辺部の光量を表します。周辺の光束は絞り以外のところでケラレルことが多いため、レンズを斜めからのぞき込むと円ではなく以下のように見えることが多いです。

原田

新宿光学総合研究所

イメージとしては、以下のような感じです。像面中央には4列のヒカリくんが到達しますが、周辺には2列のヒカリくんしか到達しません。その分周辺が中央に比べて暗くなります。

町田

新宿光学総合研究所

周辺の光束が絞り以外のところでケラレルというのは、例えば長い筒を斜めにしてみると段々と向こうが見えなくなることを想像してください。長い筒で細いと、少し傾けただけで向こうが見えなくなりますよね。じゃあ、長い筒でも傾けても向こうがしっかり見えるようにするにはどうすればよいと思いますか?

町田
馬橋所長

わかっちゃった、筒を太くすればいいんじゃない?

正解です。長くした分、太くすればよいのです。それをレンズに当てはめると、前玉と後玉の径が大きいとレンズを斜めから見ても向こうが良く見える、つまり周辺光量をしっかり確保しやすいということです。だから、広角レンズはそのF値から計算した前玉に必要な径は小さいはずなのに大きな前玉になっているのは、周辺光量を確保するためという意味合いも強いのです。

町田

見た目のカッコよさのためだけに大きいわけではないのでござるな。

3号
1号

いや〜なんか今日はすっきりしたな。

2号

たしかに! F値ほどカメラ使っていて不思議な数字ってないもの。

馬橋所長

読者の皆さん、ぜひ前回のF値のレポートも御覧くださいね。ではまた、ごきげんよう。