PHOTO YODOBASHI
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山岳写真に憧れて
vol.9 2024年7月・利尻山編
7月に少し早めの夏休みをとり、北限の離島である利尻島と礼文島を訪ねてきました。利尻島に2泊し、この旅の目的のひとつでもある利尻山の登山に挑戦、無事登頂することができました。今回はその時に撮影した写真を紹介できればと思います。利尻山は標高1,721mの独立峰であり、裾野を広げる雄大な姿から「利尻富士」とも呼ばれています。北海道土産の定番である「白い恋人」の箱に描かれている山として有名です。また日本最北の百名山でもあることから人気の山であり、登山シーズンになるのは6〜9月。特に条件のよい7月には多くの登山客で賑わいます。夏期には新千歳空港から利尻空港への直行便が運航されていますが、人気チケットのため連休に合わせて取るのはなかなか難しく、今回は稚内への飛行機、そしてバスとフェリーを乗り継ぎ利尻島へ。登山は2日目の早朝から。登りやすいといわれる鴛泊(おしどまり)コースでの登頂を目指しました。
( Photography & Text : Naz )
7月12日(金)12時40分 - 羽田空港
雨降る羽田空港から稚内空港へ2時間弱のフライト。空港からバスへ乗り継ぎ稚内駅で途中下車。バスは終点のフェリーターミナルまで運航されていますが、航空機へ持ち込めないガス缶を購入するため、駅前商店街のアウトドアショップに立ち寄ります(利尻島のホームセンターやコンビニでも購入できますが念のため)。コンビニで今晩の食料も調達し、徒歩でフェリーターミナルへ。出航までは十分に余裕があります。
7月12日(金)16時40分 - 稚内港
乗船したフェリーが出港しました。利尻島までは距離にして約50km、1時間50分の船旅です。18時30分頃、鴛泊港から利尻島へ上陸。東京は梅雨真っ只中ですが、梅雨のない北海道は曇天。これから数日間は雨は降らならない天気予報でした。
7月12日(金)19時00分 - 利尻島ファミリーキャンプ場ゆ~に
島には複数のキャンプ場があります。利尻山登山に向いているのは、鴛泊港のフェリーターミナルに近い「利尻島ファミリーキャンプ場ゆ~に」と3合目の登山口にある「利尻北麓野営場」。登山口まではフェリーターミナルから3.6kmあり、徒歩で1時間かかることから、夕方着の場合はタクシーで行くのがいいでしょう(事前予約が安心)。今回は日没も迫っていたため、港から近いキャンプ場にしました。コンビニへ立ち寄ったこともあり、近いとはいえ徒歩で30分。着いてすぐ受け付けをしてからテントを設営し、食事を済ましたら21時。移動の疲れもあったのでしょう、早々に寝てしまいました。なお、テントサイトは予約不要で1人520円/泊と格安。車やバイクの方もいますが、利尻山登山を目的に宿泊している人が多数。芝生のテントサイトにはコンパクトな山岳用のソロテントが並んでいます。緯度の高い利尻島では日の長い7月は20時頃まで明るく、明け方3時を過ぎると空が白んできます(7月12日の日没は19時21分、13日の日の出は4時00分)。
7月13日(土)5時00分 - 利尻北麓野営場・利尻山鴛泊コース3合目(登山口 220m)
日の出前の3時過ぎに起床し、軽く朝食を済ませてからテントはそのままに小さなザックでキャンプ場を出発。途中でトレッキングポールを忘れたことに気づきキャンプ場まで取りに戻ったため、40分程ロスして登山口へ辿り着いたのは5時でした。登山口にある利尻北麓野営場も設備は整っていて不自由はなさそうですが、こちらの方がテントの数も少なく静かな雰囲気でした。また島内の宿に宿泊するとこの登山口まで車で送迎をしてもらえますが、筆者はキャンプ場から徒歩で来たため、結果として海抜0mから山頂まで自分の脚で登った前回の八丈富士と同様に「Sea to Summit to Sea」となりそうです。ただ富士登山(獲得標高約1,400m)を優に超える高低差を日帰りで往復した経験がなく、登りきれるのか不安もあったことから、不測の事態に備えヘッドランプはもちろんのこと、防寒具や多めの食料と水を持参することにしました。
登山道へ入ってすぐの甘露湧水で水を2Lのペットボトル2本に汲み、それを背負って行きます。環境省の名水百選にも選ばれた名水とのことで、とても柔らかくおいしい水でした。雲が低く垂れ込め、緩やかに標高を上げていく登山道は薄い霧の森を歩いているようでした。
7月13日(土)6時43分 - 5合目(610m)
登山口が3合目ということもあり、5合目もわりと早く迎えます。登山道は多くのボランティアの方々の手により歩きやすく整備され、岩場や急登もなくとても登りやすいです。高度を上げるにつれ空が明るくなってきました。
7月13日(土)7時22分 - 6合目・第一見晴台(760m)
深い樹林帯の中を歩いているため視界はほとんどありませんが、頭上の雲がなくなり、7時頃には青空が広がり展望が開けてきました。なお、今回の登山にはドコモ回線のスマートフォンを持参しましたが、登山中に圏外になることはほぼなく、本土での登山と比べても山の中とは思えないほど電波の状態が良好でした。第一見晴台では眼下の雲に白虹も。
7月13日(土)8時42分 - 8合目・長官山(1,218m)
7合目の胸突き八丁(895m)と第二見晴台(1,120m)を経て8合目の長官山へ。目の前に利尻山の山容が迫ってきましたが、見た目では6合目ぐらいの感覚。まだこんなに登らなくてはならないのかとも思いました。ここからは一旦平坦な道になり、避難小屋まで緩やかに下ります。避難小屋の裏を含め登山口〜山頂の間には数カ所のトイレブースも設置されていました。ただし、便器が設置されているのではなく、携帯トイレの持参と持ち帰りが必要です。なお、避難小屋での宿泊は緊急時以外不可ですので、基本的には日帰り登山が必須となります。
振り返ると、眼下に見える赤い点が避難小屋、その先のピークが長官山。果てしなく続く雲海は見事でしたが、海や礼文島を望むことはできなかったのは悔やまれるところです。
7月13日(土)9時40分 - 9合目(1,410m)
次第に斜度はきつくなるものの、途中には階段等もあり終始登りやすい登山道。9合目のベンチでしっかり休憩。ここからが正念場ということで持参したおにぎりを頬張ります。標高も上がり風が冷たくなってきたため、ウインドシェルも身につけます。ここまでくれば「登頂できるだろう」という思いが確信に変わってきました。
上がってきた雲が切れると見えました!山頂は目の前です。狭いスペースにすごい人!
7月13日(土)11時26分 - 利尻山北峰登頂(1,718.7m)
無事登頂!登山口から山頂まで休憩を含め6時間半かかりました。なお、コースタイムは登りが6時間、下りが4時間とのことで、特に速くもない標準的なタイムです。
最高峰は南峯の1,721mですが、崩落が進んでいるため立ち入り禁止となっており、北峰が現在は登頂可能な山頂となっています。山頂から見えたのはこれだけ。あとはすべて雲に隠れていました。とはいえ、雲の上の晴天の中登頂できたのは最高の気分です。
山頂には30分ほど滞在して下山を開始。食料をいろいろ持って来てはいましたが、9合目で食べたばかりだったこともあり、山頂での食事はパスしました。お昼を過ぎ次第に雲が上がってきました。
避難小屋を過ぎた頃には山頂は雲の中へ。北海道の山は本土の山に比べると標高こそ低いものの、高緯度なため森林限界が低く、高山植物も本土より低い標高で見られるのが嬉しいですね。名前はわからなかったものの、登山道でも多くの花を見ることができました。
7月13日(土)16時00分 - 利尻北麓野営場(利尻山鴛泊コース登山口)
鴛泊コースのピストン山行のため下山は省略しますが、上りに比べ下りは延々と長く感じました。まさに「こんなに登ってきたっけ?」と思うくらいに。自販機で購入した缶コーラがとにかく美味しかった。休憩もほとんどせずに黙々と下りましたが、太股の筋肉が疲労で痛み出していたこともあり、所要時間はコースタイム通りの4時間。キャンプ場に忘れたトレッキングポールを取りに戻ったのは正解でした。
7月13日(土)17時00分 - 利尻島ファミリーキャンプ場ゆ~に
キャンプ場まで戻ってきました。もう1泊泊まる手続きをして、向かいの町営温泉へ。その後コンビニでビールを購入し、テントで食事。暗くなる頃には就寝。疲労たっぷりで夜明けまでぐっすり眠れました。
7月14日(日)11時00分 - 鴛泊港
翌朝はゆっくり撤収をしてキャンプ場を後にします。漁港では海の日に合わせて漁協の方々がお祭りを開催していました。そこを覗いてから、フェリーを待つ間に港の食堂で名物の利尻昆布ラーメンを。その後は礼文島と稚内に1泊ずつして東京へ帰りました。この登山で膝の痛みは出なかったものの、脚の筋肉痛は登山後1週間くらい続きました。富士登山のように高所ではないため心肺への負荷は少ないものの、行程の長さを考えると疲労度が高いのも仕方がないでしょう。iPhoneによれば、この日は40,147歩、歩行距離29.5km、上がった階数513階相当とのことでした。
利尻島は2度目だったことから観光はしませんでしたが、初めての場合はもう1日使ってレンタカーやレンタサイクルでの島内一周もおすすめ。またこの記事では割愛しますが、今回初めて訪れた礼文島も利尻島とは異なる魅力があり、改めて訪ねてみたいと思う場所でした。写真はフェリーが接岸する香深港に近い桃岩をめぐったときのもの。次回は利尻登山のかわりに礼文島トレッキングを楽しみたいです。なお、礼文島は中西敏貴さんの記事でも紹介されていますので、ぜひご覧ください。
( 2024.11.21 )
水深10mの防水や2mの落下耐性等を持ちながらも、小型軽量で速写性が高いため、登山のようなアクティビティとの相性がいいカメラです。キレのよい24mm相当の単焦点レンズにより、記録用としてだけではない写真が得られます。
超軽量でロングハイキングにも最適なカーボンポール。登山・下山時の脚の負担軽減のほか、登山時には上半身で推進力も生み出せます。2本セットのほか、1本単位でもご購入いただけます。
495gと軽量ながらもR値7.1と厳冬期にも使えるエアマット。低温下でなくてもR値の高いマットは背中が温かく、多めのエアにより寝心地も良好です。
今回持参しましたチタン製ハンドルレスクッカー。ソロ登山に最適な550mlサイズです。110サイズのOD缶に加え、Primus P116等のコンパクトなガスバーナーもスタッキング可能です。
イグナイターも内蔵しながらも64gと軽量・コンパクトなガスバーナー。湯沸かしメインでお使いの方におすすめです。
ハンドルレスクッカーと合わせて使うピンチリフター。6gと超軽量ですが強度も十分。使い勝手も良好です。とても小さいため紛失にご注意ください。