PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
山岳写真に憧れて
vol.2 2022年10月・木曽駒ヶ岳編
前回の富士登山から1ヶ月が過ぎた10月中旬、山の秋に終わりが近づく中、自分へのご褒美を兼ねて近場の低山ではない「山」へ行ってみることに。登山ビギナーの筆者は知らなかったのですが、日本には谷川岳や那須岳、御嶽山や八ヶ岳等、ロープウェイで一気に高所まで運んでくれる山があるらしく、そんな中から今回は中央アルプスの木曽駒ヶ岳へ登ってみることにしました。木曽駒ヶ岳がどんな山かイメージできなくとも、「千畳敷カール」という名前やこんな写真の風景をイメージできる方は多いと思います。私もそうでした。調べてみると、麓からバスとロープウェイを乗り継いで標高2,612mの千畳敷カールまで一気にワープ。そこから駒ヶ岳山頂への高低差は約300m。これなら私にも登れそうです。
東京から中央道で約4時間。徹夜登山にならぬよう、夜のうちに東京を発ち、長野県駒ヶ根市へ。麓の菅の台駐車場へ車を停めて朝まで仮眠をとります。バスの始発は日の出直後の午前6時過ぎ。私は明るくなるのを待って午前6時半頃列に並び、チケット購入をしてからバスへ乗車します。標高850mの麓から1,662mのしらび平までの所要時間は30分ほど。普段は30分間隔で運行されているバスも多数の観光客・登山客が訪れる繁忙期には臨時便が増発され、ほぼ随時運行となっていました。駒ヶ岳ロープウェイの駅があるしらび平へのアクセスは、マイカー規制のためバスまたはタクシー、そして徒歩になるとのこと。
しらび平駅で再び列に並び、ロープウェイに乗車します。「こんなに人気スポットだったのか」と驚くほどの人出です。こちらも通常時の30分間隔から9分間隔の随時運転へと短縮されていたため、さほど待たずに乗ることができました。麓の紅葉はまだこれからで、950m標高が上がる千畳敷カールは既に終わりを迎えていましたが、ロープウェイの窓からは見事な紅葉を目にすることができました。ただ満員で身動きがとれず、人越しに見る紅葉となりました。
午前8時、千畳敷カールへ到着。先を急ぎたいところですが、登る山は3,000m級、高地順応を兼ねてトイレを済ましたり準備体操をしつつ40分ほど過ごします。それから登山計画書の届け出も忘れずに(条例により義務化されているそうです)。眼前にそそり立つ険しい山々。目の前まできて「こんな壁のような斜面を登れる?」との思いが頭をよぎります。目をこらすと登山者が見えてきます。どうやら写真でいう真ん中のあたり、稜線の一番低いところを目指すようです。
登山道を進むと、その壁が近づいてきました。人多いですね〜。お子さんからご年配の方まで多くの方が登っていきます。気持ちを引き締め、ここから一気に標高を上げていきます。
登るほどに角度が厳しくなり、標高もあるのか息も上がってきます。少しキツいですが、時々休めば登りきれる程度です。ロープウェイの千畳敷駅から写真を撮りながら休みながらでも50分ほどで登りきることができました。
2,850mの乗越浄土(のっこしじょうど)へ。稜線へ出ると景色が一変。憧れていた風景に気持ちが高まります。
目前に迫る2,931mの宝剣岳。この場所からも登頂している人がよく見えます。そして自分が高所恐怖症であることに初めて気づきました。この日は稜線上でも無風に近く、暖かな陽射しが降りそそぎ、持参した防寒用のダウンジャケットが不要な1日でした。
森林限界を超えた高所らしい風景が360度広がります。写真を撮り始めるとなかなか先へ進めませんね。
乗越浄土からまず中岳へ。駒ヶ岳はその先。写真は中岳へ登る途中、乗越浄土を振り返って撮影。雲のかかる伊那谷の向こうには南アルプス。そしてその先に富士山も!
乗越浄土から20分ほどで2,925mの中岳山頂へ。午前10時、ここから駒ヶ岳までは40分ほど。
中岳から少し下り、駒ヶ岳を見上げます。写真で見えるほど実際にはなだらかではありませんが、千畳敷カールからの急登に比べれば楽しくあっという間に登れてしまいます。
上昇気流に乗り、稜線の上まで雲が上がってきました。山の稜線を境に天気が異なるのはこういう状況なのですね。
午前10時半、木曽山脈の最高峰である標高2,956mの駒ヶ岳へ無事登頂。3,000m級の山ですから、登山のウェア類や雨具、トレッキングポール等の装備は整えてきましたが、天候がよければ千畳敷駅から約1時間半で軽々と登れ、山岳写真で見た風景を直に目にできる体験は得がたいものがあります。
山頂でランチをいただきました。風がほとんどなくとても穏やか。昼が近くなり、雲が上がってきました。持参したガスバーナーで湯を沸かし、フリーズドライのガーリックピラフと豚汁を楽しんだ後にコーヒーも。どれもこれ以上ない味わいでした。
どこまでも続く雲海。富士山同様、山頂は雲海の上に出ますが、前回上った富士山頂より約700m低い標高もあり、その雲がより近くに広がります。赤い屋根の山小屋は、頂上直下にある「頂上木曽小屋」。2,956mもあるこんな場所にも建物を建ててしまう人のすごさを感じました。いつか泊まってみたいです。
山頂から360度の景色を存分に堪能して下山を始めます。青い屋根の山小屋は「頂上山荘」。こちらは2,870mとのこと。こちらにはテント場もありました。
下山ルートは登山ルートを戻るピストン山行。こちらは真下から見上げた宝剣岳。
乗越浄土から千畳敷カールへ下ると、こちらは既に雲の中。同じルートの往復でも登山時と下山時ではまったく異なる景色を見ながら進めます。午後1時前には千畳敷駅へ着き、休憩をしてからロープウェイ、バスを乗り継いで午後2時過ぎに車を停めた菅の台まで無事下山。登山というよりはハイキングぐらいの感覚で(筋肉痛にもならずに)国内有数の高所登山ができるというのは素晴らしいですね。これが筆者の中央アルプスデビューとなりました。12月の今ごろはもう雪の中でしょうか。これから冬の間、しばらくはトレーニングも兼ねて低山ハイクを楽しみたいと思います。
( Photography & Text : Naz )
( 2022.12.08 )
少々大きく重いカメラですが、頑丈で信頼性のある扱いやすいボディです。
今回の山行のために新調しました。山岳撮影に最適な画角を持ち、小型・軽量でワイド寄りの標準ズームレンズです。
小型軽量で扱いやすいガスバーナー。イグナイターのないシンプルなタイプですから、ライターもお忘れなく持参を。
極薄の0.3mmチタンで作られた超軽量ポット。500mlあれば、フリーズドライのごはんに豚汁、コーヒーの分まで一気に沸かせます。
お湯を入れて15分待つアルファ米と異なり、わずか3分で熱々をいただけるフリーズドライの山飯。「ほりにし」をかけての味変もおすすめです。
(こちらは石井スポーツ店頭でお受け取りいただける商品です)
その、アウトドアスパイス「ほりにし」はこちら。キャンプだけでなく、登山の際も小さな容器に入れていくと、食事の時に大活躍です。
「Origami」と名付けられたスターバックスのドリップバッグは、一般的なドリップバックと異なり、カップの上へフィルターが載るスタイル。フィルターの底がコーヒーに浸からず、小さなカップでもおいしいコーヒーをいただけます。
クッカーとスタッキングがしやすい取っ手なしのチタンカップ。160mlのお湯で作る豚汁にもコーヒーにもちょうどいい220mlの容量です。
デイハイクには余裕のある24L。背面がメッシュ仕様のため、汗が抜けやすく快適です。ウエストにあるサイドポケットも撮影小物を収納するのに便利。
登山にはタオルやハンカチより軽量で乾きやすい手ぬぐいが最適。首に巻けば防寒に、細長く裂けば緊急時の包帯代わりにもなります。