PHOTO YODOBASHI

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vol.17 パキスタンへの旅 - カラコルム編 その③

Text & Photo by 中西 敏貴

© TOSHIKI NAKANISHI

フンザでの滞在を終え、 次に向かったのは上部フンザと呼ばれるエリア。それまで滞在していたドゥイカルの丘が標高2,800mほどですから、いよいよ3,000mを超えて行くことになります。今回の最終到達地点は中国との国境である「クンジュラブ峠」で、もうそこは4,700mという未体験ゾーンの標高地帯。これまでの滞在で少しずつ高度を上げてきているため、高度順応こそされているものの、さらに一気に2,000m近くも上がっていくのですから、身体がどんな反応を示すのか楽しみでもあります。かつては玄奘三蔵も超えたとされる道。どんな風景に出会えるでしょうか。

© TOSHIKI NAKANISHI

PHOTO YODOBASHI出発の日も快晴のスタート。6,000mを越える高峰群に朝日が当たり、カラコルムの朝が始まりました。とはいっても、フンザの集落に日が差し始めるのはもう少し時間が経ってから。世界最高峰の山々に囲まれている村の朝はスロースタートです。

この場所から見えているあの峰々には、いつの日か近づいてみたいという気持ちはあるものの、まだまだ筆者のスキルでは難しい場所。現状はこうして麓の村から眺めているのが安全なのかもしれません。

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

村で出会った人々ともしばしのお別れ。次に出会うのが楽しみです。それにしても、人々の目の美しさには心動かされます。老若男女問わず、キラキラしているのです。パキスタン好きのため、少し贔屓目に見ているからなのかもしれませんが、その分を差し引いたとしても、レンズを向けたくなる人々が多いのがパキスタン、特にフンザの特徴です。

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パキスタンの旅をいつもサポートしてくれているフンザ出身のガイド、アミンの家にもお世話になりました。長寿の村としても有名なフンザの人々は毎日オーガニックなものばかり食べているらしく、そんな家庭料理をふんだんに振舞ってくれました。心にも身体にも優しいフンザの味がもうすでに懐 かしく、また必ずこの場所へと帰ってくる、と心に誓ったのでした。


© TOSHIKI NAKANISHI

上部フンザの起点となるところがパスー村。この村の特徴の一つが、すぐ近くまで氷河が迫っていることでしょう。未舗装道路を30分以上走り、終着点から徒歩20分ほどで「パスー氷河」に到着です。世界的に氷河の縮小が話題となっていますが、カラコルム山脈の氷河は反対に拡大傾向にあるとのこと。その理由には詳しくありませんが、それだけ圧倒的な山体があるということなのでしょう。ただ、ガイドのアミンによると、河の末端部は短くなっているようだ、とのことで変化の激しい氷河なのかもしれません。

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そのパスー氷河を遡っていくと見えてくるのが名峰シスパーレ(7,611m)。ピオレドールを受賞した登山家の平出和也さんが登頂したことでも有名な山です。7,600mを超える場所に立つと、この世界はいったいどんなふうに見えるのでしょうか。2,000mを超える場所に立つだけでも風景の見え方が大きく変わるというのに、それが7,000mや8,000mともなると果たして。いつの日か叶うのでしょうか。

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シスパーレの反対側には現地の言葉で「トポップダン」と呼ばれている鋭峰群が立ち並びます。ガイドたちは「カテドラル」と表現していましたが、たしかに大聖堂のような風貌の山々です。

© TOSHIKI NAKANISHI

© TOSHIKI NAKANISHI

パスー村から車をさらに進め、一気に標高を上げていきます。途中には何カ所かのチェックポストがあり、警察に乗車リストを手渡します。もうすぐ国境なのですから当然ですが、こうした光景は日本では絶対に見られないわけで、ここが異国であることを再認識します。道は、カラコルム・ハイウェイという名前こそ付いてはいるものの、状況は決して良くはなく所々に崖崩れの跡などもあり、とてもスリリングなドライブが続きます。この時点で標高は3,500mをゆうに超えて4,000mに近くなってきていました。なんとなく、身体がフワフワとするのは気のせいではなかったのです。

© TOSHIKI NAKANISHI

車はさらに標高を上げ、ついにクンジュラブ峠に到着しました。もうこの時点で走ることは不可能なほど身体がいつもとは違う態。このまま長居すると高山病になってしまうでしょうから、滞在30分ほどで標高を下げます。

© TOSHIKI NAKANISHI

そんな高地でも地元の人たちはとても元気。雪原に立てられたパキスタン国旗まで行き、記念写真を撮っていました。高所になれない僕たちは車の付近でゆっくりと歩くのがやっと。こんな場所を古代の人は歩いて越えたというのですから驚きます。

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この日の最終到達地点。このゲートの向こうは中国です。日本からタイのバンコクを経由してパキスタンに入国し、そしてついには標高4,700mの中国国境までやってきました。地球規模の横移動と、日本では不可能な縦移動を組み合わせ、日常では絶対に出会えない風景を見つけることができたように思います。この峠を囲むカラコルムの山々はさらに高く、それらの場所からこの峠を見下ろすことだって出来るわけです。まだまだこの世界には未知の風景が広がっているということですね。

さて、次回はこのカラコルム・ハイウェイを一気に南下し、イスラマバード方面へと向かいます。古来の人々がこのルートを越えて旅をし、そして彼らがインダス流域に残した岩絵と古代文明の遺跡を訪ねます。(つづく)

( 2024.03.25 )

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