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vol.19 パキスタンへの旅 - バロチスタン編 その①
Text & Photo by 中西 敏貴
パキスタン北部の旅を終え、いよいよ南部の旅がスタートです。まずはイスラマバードから国内線でフライトし、旅のスタートであるカラチに到着しました。カラチはかつてのパキスタンの首都。世界有数のメガシティと言われ、街の様相も北部とは一変します。気温も高く、空も北部ほどクリアではありません。しかし、それがこの街の特徴でもあり魅力でもあるのです。バザールには人が溢れ、道路を走る車の数も桁違い。人々の熱気と言えばいいのでしょうか。生きるためのエネルギーのようなものが充満している街がカラチです。今回の旅の最終目的地はバロチスタン州にあるヒンゴル国立公園なのですが、その前にカラチからインダスハイウェイを北上し、インダス文明の有名な遺跡であるモヘンジョダロへ向かうことにしました。
ハイウェイを北上中に飛び込んでくる光景は、こうした乗り合いタクシーの姿。SUZUKIの車が利用されていることが多いので「SUZUKI TAXI」です。乗車定員は果たして何人なのかわからないほどに人が乗っている車も多く見かけました。国が変わればその基準も変化するということですね。一つの国で暮らしていると、その基準でしか物事を考えることができませんが、こうして旅をすれば違ったスタンダードを知ることができます。
ハイウェイには相当年季の入ったトラックも多く走っていますが、まだまだ現役。そして、ドライブインに入る度に、そこで昼寝をしている人もよく見かけます。彼らはきっとトラックドライバーなのでしょう。ハイウェイを長時間走り、穀物などを遠くの街へ届けるのが仕事です。
街が出現するごとに魅力的な人々と出会います。北部の人たちとは肌の色も異なり、言葉も少し違うようです。たくさんの部族が入り混じり、国という一つの概念で繋がっているのがパキスタンなのかもしれません。この複雑な様相が魅力の一つです。
モヘンジョダロへ向かう途中にある古いバザールに立ち寄りました。これまでの旅で最も人に溢れたバザールで、人も動物も物も全てが溢れかえっている印象です。日本で暮らしていては絶対に味わうことのできない喧騒があり、クラクションの音、人々の声、カレーの匂いなど、全てが混ざり合う感覚です。
ハイウェイ沿いで時々見かけるのがこうしたキャンプ。家畜と一緒に移動しているのでしょうか。眠る場所も食事をする場所も、すべて屋外のようです。
この街が煙っている理由はいくつもあると思いますが、沢山見かけたのがレンガ工場でモクモクと煙を上げています。手作業で土をこね、成形し、屋外の窯で焼き上げていくのです。
長い時間インダスハイウェイを北上し、やっとのことでモヘンジョダロに到着しました。遺跡は先ほど見かけたものと同じようなレンガで出来ています。「死者の丘」という意味の遺跡ですが、実はこれは都市の名前ではありません。古来から、ここには死者が埋葬されている、という意味でそう呼ばれていたものが遺跡の名前になったと言われています。その昔、社会の教科書に書かれていたことは朧げながら記憶していますが、その遺跡にこうして大人になって訪ねる日が来るとは思いもしませんでした。歴史をもっと学んでおけば、世界の旅はより深くなっただろうと、今更ながらに反省します。
南部の旅の最初の目的地モヘンジョダロはとても巨大な遺跡でした。聞くと、ここには何層も遺跡が埋もれているようで、発掘作業はまだほんの一部しか完了していないそう。いったい何世紀分の遺跡が眠っているのでしょうか。インダス文字の解明も進んでいないことから、インダス文明にはまだまだ謎が多いらしく、俄然興味が深まりいつの日か写真で探求したい気持ちが湧き上がってきました。僕たちが生きている間に、少しでも謎が解明されていくことを期待したいと思います。
さて、ここからはハイウェイを南下しつつ、現在地シンド州からバロチスタン州へと向かうことになりますが、その前に両州の分水嶺となる山岳地帯へ向い、バローチ族の暮らすエリアを訪ねます。(つづく)
( 2024.05.22 )
文化を知って、土地を知る。やっぱり知りたいインダス文明。
砂埃の国の旅を快適にするためにもブロアーは必ずポケットに。
パキスタンで食べたビリヤニを今でも思い出します。
現地ガイドに倣ってスカーフを必ず持っていきます。