PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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山岳写真に憧れて
vol.5 2023年8月・蝶ヶ岳編

PHOTO YODOBASHI前回に続きこの夏2度目となる上高地のバスターミナル。前々回の「再びの富士登山編」の通り、2度目の富士登山を調子よく登れたことで、「高低差1,000mを超える日帰り登山もできる」という判断ができました。余裕を持って2泊できればいいですが、2日目の早朝から登り、下山後にそのまま撤収すれば、普段の週末に1泊2日でも可能だろうと装備を調えます。あとは予定がない天候のよい週末を待つしかありません。ただ、予想外にそのタイミングはすぐにやってきました。富士登山の翌週末も安定した晴天の予報です。金曜日の夜に急遽再訪を決め、夜中の中央道を走り、明け方に沢渡(さわんど)へ。駐車場で仮眠し、7時半のバスで上高地へ。

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梓川に掛かる河童橋から。上高地は北アルプスの山々までとても近いこともあり、少し歩くだけでもその山容の変化を楽しめます。木々のすぐ横、左端に見えるのが西穂高岳(2,909m)、右端の手前の山に隠れ頂上だけ見えるのが前穂高岳(3,090m)、真ん中にそびえるピークはジャンダルム(3,163m、Google Eartch)。この日は約6km歩いて徳沢まで行くだけと時間や体力にも余裕があるため、少し遠回りな梓川右岸のハイキングを楽しみながら向かいました。前回は家族や友人と4名で2泊3日だったこともあり、食料を含め約10kgの荷物を背負いましたが、今回はソロの1泊2日ということもあり、絞り込んで約6.5kg。

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川霧が見えます。散策路はよく整備されていて、木道のあるところでは川のすぐ近くや湿地の上を歩くこともあるなど変化も愉しめます。昼間は観光客で賑やかな散策路も、早朝は登山者だけでとても静か。

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明神を過ぎると観光客はほぼいなくなります。ここから先は登山者のみの静かな世界。徳澤園のキャンプ場にテントを張り、あとは酒盛り。徳澤園の売店にてビールやチューハイ、ワイン等のお酒やつまみも現地調達できるのでとても助かります。

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明るいうちに夕食を済まし、暗くなるとともに就寝。夜中に星を見ることもなく朝まで熟睡してしまいました。


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日の出とともに起床し、朝食を済ましたら登山の準備を。シュラフ等の登山中に使わないものはそのままテントとともにキャンプ場に置いていきます。大きなザックに入れて持ってきた小さなザックを背負い、徳澤園の端にある蝶ヶ岳・永塀山(ながかべやま)の登山口から登山を開始します。ここからは長野県への入山届けが必要になります(ウェブでも提出可)。上高地はツキノワグマの生息地。徳沢に限らず、上高地バスターミナルに近い小梨平でも目撃情報が多数あるほどですから、熊鈴の持参は必須です。

PHOTO YODOBASHI登山道へ入った途端に始まる急な上り。尾根に沿うように登り、一気に標高を上げて行きます。標高は1,500mを超えていますが、2,500mを超える富士登山と比べれば呼吸はずいぶん楽ですね。

PHOTO YODOBASHI登山道はよく整備され危ないところはほとんどありません。人の多い徳澤園とは異なり、とても静か。徳澤へと下山する人とたまにすれ違う程度です。展望ははほとんどなく、淡々と歩みを進めていきます。

PHOTO YODOBASHI時にはこんなキノコも。後で調べてみると毒があるようですね。ここは中部山岳国立公園、見るだけで楽しみましょう。

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3時間かけて約1,000m登ると傾斜も緩やかになり、しばらく行くけば長塀山(2,564m)の山頂へ。「ここが山頂」と言われないとわからないような樹林帯の中にあり、展望もまったくありません。ここを過ぎるとしばらく下り、まだゆるやかに上っていきます。

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森林限界が近づいてきたのか木々が徐々に低くなり、空が広がってきます。小さな池を過ぎると、一気に視界が開けました。すれ違った人に「あともう少しですよ!」と励ましの一声をいただき、胸が高鳴ります。

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進む方向には、稜線を歩く人! これからあそこまで登るのです。

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蝶ヶ岳ヒュッテが見えてきました。その手前にある山頂ももうすぐです。

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蝶ヶ岳(2,677m)へ登頂しました! 徳沢(1,555m)から距離にして6km、獲得標高は1,200mほど。ほぼコースタイム通りの3時間半の道のりでした。ソロだったこともあり、ペースを崩さず登ることができました。

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穂高連峰の山頂付近は雲に隠れていますが、上高地から見上げていた山々が目線と変わらない高さに見えます(Google Earth)。まさに特等席! 谷底に見えるのは梓川の流れ。高低差が1,000m以上もあるのです。

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上高地は晴れていましたが、稜線の反対側となる安曇野側からは上昇気流に乗った雲がどんどん流れてきます。眺望のよいこの場所で昼食にしました。ガスバーナーで湯を沸かし、フリーズドライのカレーメシとドリップバッグのコーヒーをいただきます。最高の場所でいただく食事はまさに格別。登頂した満足感でこの上ない時間となりました。高所恐怖症気味な筆者には、この場所で十分。写真に写る人がいるもうちょっと先までは行けませんでした(笑)。

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雲が切れた時、短い時間でしたが槍ヶ岳(3,180m)も見えました。初めて肉眼で目にしたと思います。他の山々とは異なる山容、格好いいですね。今の実力で登ることはできませんが、「あの山をもっと近くから見てみたい」とそう思いました。

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蝶ヶ岳ヒュッテでトイレを借り、給水もしていきます。持参した1.5Lの水は飲み水と昼食とでほぼ使い切りました。下山まで含めればもう1L程度は持参したいところ。事前にここで給水できることを調べていたため、1kgの軽量化ができました。ただ、晴天が続くと水不足となり、給水できない場合もあるので事前の情報収集が必要です。蝶ヶ岳ヒュッテを後にしてしばらくは常念山脈の稜線歩き。ご褒美ですね!

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横尾分岐から下山を開始します。ガレた稜線から少し下るとすぐ樹林帯の中へ。横尾までのルートは、徳沢からのルートよりもさらに厳しい斜度で、登るのも大変ですが、下るのも脚に相当な負担がかかります。段差も大きいため上りでは使わなかったトレッキングポールを頼りに慎重に下っていきます。

PHOTO YODOBASHI樹林帯のでは展望はほとんどなく、数カ所ある展望のよいところにはベンチが設置されていました。想定外なことに8割ほど下ったあたりから右膝が痛み出しました。これが、厳しい上りによる疲労と下りの強いストレスによるものなのか、1週間前の富士登山の疲れなのかまではわかりませんが、少しペースを落とし、膝への負荷を減らしつつ下り切るしかありません。

PHOTO YODOBASHI木々の間から差し込む木漏れ日が美しく休憩時の撮影が捗ります。ただ強い明暗は、フラットな光線下と比べて登山道の凹凸を視認しにくく、目が疲れます。

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2時間ほどかけて横尾まで下りてきました。徳沢と同様に山荘とテント場がありますが、こちらはこじんまりとして静か。ここが穂高や槍ヶ岳へ向かう涸沢へのアクセス路となります。昼過ぎということもあるのでしょうか、人もまばら。徳沢まで梓川沿いのフラットな4kmの道のりを1時間かけて歩きます。

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14時、徳沢着。日曜日の午後ということもあり、朝はテントが密集していたキャンプ場もほとんどの人が撤収していました。張られたテントも数えられる程度。休憩を挟み、テントやシュラフ等を片付け撤収。15時には徳沢を出ました。沢渡行きの最終バスが2時間後ですから、のんびりしていると間に合いません。左岸の最短ルートでバスターミナルへ向かいます。下山中に痛み出した右膝は、下りでのみ痛みを感じる程度のため、フラットなルートでは幸いにも痛みを感じることなく歩けました。河童橋までの6km道のりをかなりの早足で歩き、1本早いバスにも乗れる時間には戻ってこられましたが、乗車待ちの長い列は100mを超え、結局乗れたのは最終のバス(並んでいる人がいる限り増発するそうです)。その後は沢渡から車で松本市街まで下り、日帰りの湯で汗を流し、中央道で東京へ帰りました。この日は4万歩超えの29.9kmを歩き、2日間を合わせればフルマラソンに近い41.6kmを歩いたようです。さすがに疲れました。まだテント等の装備を背負って同じ高低差を登れる自信はありませんが、上高地・徳沢をベースキャンプにしたことにより、2,677mもの蝶ヶ岳へ登ることができ、この夏のいい思い出となりました。

( Photography & Text : Naz )

参考:YAMAP | 徳沢登山口-長塀山-蝶ヶ岳 周回コース »

( 2023.09.11 )

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