PHOTO YODOBASHI
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山岳写真に憧れて
vol.8 2023年10月・八丈富士編
振り返れば1年前の今頃、伊豆諸島の八丈島にある八丈富士へ登ってきました。東京都に属しながらも近いようで遠い存在だった伊豆諸島の島々。その中で青ヶ島に次いで遠い八丈島は本土(東京)から約280km離れた海に浮かんでいます。「八丈島へ行ってみよう、せっかくだから八丈富士にも登ってみよう!」と気軽な思いつきから始まったこの旅。行くと決めたのは渡航前夜。天気予報を確認し、往復の交通手段も確保して、宿泊地とするキャンプ場の利用を申請。当日は仕事を終えてから急いでパッキングを済ませ電車で竹芝桟橋へ向かったのでした。事前に色々計画を立てる旅も楽しいものですが、こんな風に思いつくままに旅に出てみるのも悪くありません。出発までは少々慌ただしかったのですが、意外となんとかなるものです。
10月20日(金)22時10分 - 竹芝桟橋
橘丸に乗船、すぐに出航しました。竹芝桟橋のターミナルには飲食品や酔い止め等が購入できる小さな売店はありますが、キャンプ用品や登山用品はなく、もちろん島で調達できるものも限られています。事前の準備は忘れ物がないようしっかりと。チェックリストを作ると安心です。
乗船し荷物を置いたらすぐに出航。レインボーブリッジをくぐるまでは外で夜景を楽しみたいですね。
10月21日(土)8時50分 - 八丈島底土港
夜明け前に三宅島へ寄港し、半分ぐらいのお客さんが下船していきました。次の寄港地である御蔵島には波浪のため欠航扱いに。そして八丈島へは定刻通りに底土港へ接岸しました。 八丈島や三宅島のような大きな島には複数の港があり、その日の天候や海の状況により入港する港が変わります(八丈島は底土港が基本)。夏の海水浴シーズン外ということもあり、島へ来るのは、観光のほかにフィッシング、ダイビング、サイクリング等のアクティビティーを目的とした方が多いようです。
10月21日(土)8時55分 - 底土野営場
底土港から徒歩5分とアクセスのよい、底土野営場。事前に八丈島観光協会にメールして利用許可をもらいます。利用料はなんと無料。ただ周囲には商店はおろか自動販売機すらありませんので、食料をはじめとした事前の準備はしっかりしておく必要があります。野営場内には炊事場や清潔なトイレ、そして海水浴客向けのシャワーも備わっていました。利用可能な電源は用意されていませんので、モバイルバッテリーは大容量のものを持参しました。底土から距離はありますが、島の中心部には複数のスーパーや商店がありますので、食料品やちょっとした雑貨等は調達可能です。今回は一人なのでレンタカーは借りず、テントを設営しハイキング用の身支度を調えてから、中心部にあるスーパーマーケットへ向かいました。徒歩30分の道のりです。
- 悪天候時に助かりそうな東屋の前のスペースに設営。混雑しているように見えますが、写真に写っている以外のスペースを含めてテントは10張。野営場はこの写真に写った10倍以上の広さがあります。島は常時風が強いので、樹木の近くに張るのがよいようです。
- スーパーで買った「島寿司」でランチ。那覇空港で人気のお弁当「大東寿司」のルーツとなったのがこのお寿司。島寿司とは甘めのシャリに旬の魚を漬けにして握られた寿司のこと。伊豆諸島ではワサビではなくカラシが塗られています。写真は赤サバ。他にもサワラ、メダイ、メカジキ、トビウオ等季節によって様々なネタが並んでいます。これがとてもおいしいのです。
10月21日(土)12時00分 - 八丈ストア
スーパーの向かいにあった公園でランチを済まし登山を開始。集落を抜け、中腹まで繋がるつづら折りの道路を徒歩で登っていきます。車なら20分もあれば登れてしまう距離ですが、徒歩ではかなりの時間がかかります。
10月21日(土)14時00分 - 登山口
7合目(標高約500m)にある山をぐるりと周回する道路で右折し、登山口まで辿り着きました。スーパーからここまで2時間、舗装路を延々と歩くのは結構疲れます。
10月21日(土)14時35分 - 火口入口
火口の縁まで続く登山道はすべて階段でした。「さすが東京都」というべきなのか、登山装備がなくても気軽に登れてしまうくらいにしっかりと整備されています。野営場を出た頃は風もなく穏やかな天候でしたが、八丈島は「午後になると風が出る」と言われていて、この時間も強い風が吹いています。麓から見るよりも実際の火口は大きく、直径が約400m。富士山の火口のだいたい半分の直径ほど。荒々しい山容にかなりの迫力を感じます。
八丈島は数字の「8」を左へ傾けたような形をしていて、2つの火山が繋がって島ができています。八丈富士(西山)は北西側にあり、南東側の三原山(東山)の方が歴史は古いそう。写真はその八丈富士から三原山を望んだもの。山と山の間にある平らなところに多くの人が住み、役所や病院、空港や港など主要な施設も集まっています。左側に見えるのが底土港。
火口を一周する「お鉢巡り」は時計回りの一方通行。火口の縁は高低差があり、道が狭く人が1人通れる程度の幅しかありません。しかも火口の内側も外側も切り立った箇所が多く、強い風の中歩くのはなかなかスリリングでした。時々、低い姿勢をとって強い風をやり過ごすほどに。最後の噴火から500年を経て火口の中には緑が広がり、湿地帯のようになっていました。池も見えますね。
>10月21日(土)15時05分 - 山頂
火口の内側へ入ると風が止みます。お鉢巡りを先行する人のシルエットが遠くに見えました(写真の中心)。その手前の高くなったところにも何か建っていますが、それが山頂にあたるところ。お鉢巡りを始めて30分、ランチをした麓の公園から約3時間かけての登頂です。1,000mにも満たない山ですが、海抜0mからスタートしての854.3mですから、登り応えはしっかりあります。自分の脚で達成する「Sea to Summit」は格別の気分です。
山頂を過ぎると見えてくる八丈小島は、八丈島の沖7.5kmに浮かぶ無人島。1969年までは有人島だったとのことで、上陸ツアーも行われているそう。
10月21日(土)15時55分 - 火口入口
お鉢巡りは約1.6kmの道のり。1時間前後で歩けるようですが、もっと長い時間がかかったように感じました。ここから再び登山口まで1,280段ある階段で下ります。
10月21日(土)16時35分 - 登山口
7合目の周回道路まで下った30分後には日没です。近くには展望のよい「ふれあい牧場」もありますが、既に営業は終了しています。麓までは暗い中をつづら折れの道路を下りることになりました。往路で寄ったスーパーマーケットには18時前に。そこで食料を調達し底土野営場へ着いたのは19時頃でした。約8時間の山行、この日の歩数は31,400歩、脚が筋肉痛になりました。
10月22日(日)12時30分 - みはらしの湯
翌日は疲れを癒やしに温泉めぐり。島には複数の町営の温泉があり、それぞれが町営バスで結ばれています。しかも温泉入り放題とバス乗り放題がセットになった2日間有効のチケットがありました(記事末尾のリンク参照ください)。オンラインでそのチケットを求め、2つの温泉へ入りに行きます。バスは概ね2時間に1本。次のバスが来るまでゆっくり入れます。午前中に野営場を出発し、お昼頃に「末吉温泉 みはらしの湯」へ、そして「樫立向里温泉 ふれあいの湯」にも立ち寄り、買い物を済ませてから再び野営場へ戻った頃にはすっかり暗くなっていました。初めて島へ訪れた場合はレンタカーを借りて周遊するのが効率はよさそうです。
みはらしの湯からの展望、天気がよければ約70km離れた青ヶ島が見えます。休憩室の大きな窓から撮影しましたが、露天風呂からも同じ展望が得られます。普段住んでいる東京とは別世界の東京。聞こえるのは波の音と風の音だけ。最高です。
10月23日(月)11時20分 - 八丈島空港
船で1泊、島ではのんびり2泊。野営場からゆっくり撤収し、予約しておいたシェアタクシーで八丈島空港へ。帰りは飛行機です。伊豆諸島の島々へは調布飛行場からセスナ機で結ばれていますが、八丈島だけは羽田空港へ1日3便(B737)で結ばれているため、他の島と比べ空路の利便性が高くなっています。この日は昼過ぎの第2便、都内から都内への近距離便のためわずか55分のフライト。フェリーですと約10時間かかりますから、行きは夜行の船、帰りは飛行機というのが効率よく遊べそうです。オフシーズンとなる10〜12月は金曜夜発等除外日はあるものの、往復で12,000円となる割引運賃もあるそうですので、急がないなら往復フェリーも悪くないですね。
( Photography & Text : Naz )
( 2024.11.05 )
コンパクトなAPS-Cのカメラとも相性のいい、小型で軽量な大口径広角ズーム。登山では風景を撮ることが多いですから、15〜27mm相当をカバーする広角ズームレンズがとても便利でした。
今回の撮影に使用したα6500の後景モデル「α6700」。最新のAPS-Cボディです。
国内にも目を向けた「地球の歩き方」に伊豆諸島と小笠原諸島をまとめた一冊が登場しました!
八丈のお酒。島産の芋に麦焼酎をブレンドしてつくられた島焼酎です。