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Insta360 Ace Pro - Long Term Report
vol.1 ロードバイクとの出会い〜ウェアラブルカメラ導入編

ロードバイクとの衝撃的な出会いから10年。手に入れるまでは考えもしなかったことですが、気づけば100km、200kmとロングツーリングに出てしまうほどのめり込んでしまいました。人力で走る自転車に長い時間乗っていると、流れていく景色の記憶もより色濃いものになり、非日常感が増していきます。その記憶を記録として残そうと、最初はスマートフォンやコンパクトカメラで自転車を停めては撮影していましたが、いつしかそれが動画撮影になり、走行中の景色を記録するように。撮影機材も最初はスマートフォンでしたが、近年はサイクリングというアクティビティとの相性がいいウェアラブルカメラを使い始め、最近になってよりよい映像を残したいと画質のよさが定評の「Insta360 Ace Pro」を入手しました。このコラムでは、その「Insta360 Ace Pro」での走行中の記録からより深い使いこなしまでをロングタームでお届けしたいと思います。今回は第1回として、ロードバイクに乗り始め、「Insta360 Ace Pro」という理想に近い機材へ辿り着いたところまでをお楽しみください。

今回の目次:
  1. ロードバイクで見えた非日常の映像を撮る。
  2. 日常を超える世界を撮るための専用機材とは。
  3. Insta360 Ace Proを選択した理由。

ロードバイクで見えた非日常の映像を撮る。

10年ほど前の夏のお話。花火イベントを撮影しようとシティサイクルに大型三脚を括りつけ、35mmフルサイズ一眼レフと300mm F4の大きなレンズを背中に担ぎ撮影ポイントへ向かいました。会場に近い低い山なら自宅から10km程度。「なんとか往復できるだろう」と思っていましたが、ストレッチすらろくにしたことのなかった身体は正直なものです。高い気温と湿度は耐えがたく、持参した水筒の水はすぐに枯渇し、滝のように汗を掻きながら登坂し、撮影に挑むのでした。撮影を終え、夜風にあたりながらの帰り支度をしていると、ふと登ってきた急坂が目に止まります。正確にいうと視線の先は急坂ではなく、とんでもないスピードで満面の笑顔を振り撒きながら自転車で登っていく人でした。「なんであの急坂を平然と漕げるんだ?あの自転車はなんなんだ?」と、筆者の頭には「?」が10個くらい浮かびます。そのときが、今でも続く私の趣味、ロードバイクとの出会いでした。

PHOTO YODOBASHI衝撃の出会いから2週間。以来、自転車のことが頭から離れません。仕事の合間にスポーツタイプの自転車を調べましたが、ロードバイクを手に入れるには軽自動車並みの出費の覚悟が必要です。でもそれは、家族を持つサラリーマンとしては無理な話。「花火も存分に撮ったからもう満足ではないか?」と新たな物欲を鎮める理由を考えていると、何やら聞こえてきます。「子どもたちもすっかり大きくなって気軽には撮らせてくれないし、誰も行ったことのない場所へ自力で行って、自分にしか撮れない画を撮ってみようぜ!」ともう一人の自分がやたらと叫ぶのです。そんな葛藤の中で「カチッ」と、脳内のスイッチが動きました。

ウェブで調べ尽くし、手頃な価格のクロスバイクを購入しましたが、その2ヶ月後には笑顔で山を登れないことを知ります。背に腹は代えられず、大切にしてきた趣味の機材を手放し、ロードバイクを手に入れるために全力を注ぎました。限られた予算で選んだのはアルミ製の軽量フレームのロードバイク。自分仕様にカスタマイズしたロードバイクが体に合ってくると、乗るほどに走ることが楽しくなってくるのです。平日でも10km、20km、週末は100km、200kmと、一度に走れる距離はどんどん伸びていきます。筆者の住む大阪は中心地から20kmも走れば山と出会う地形。気づけば、苦しいながらも笑顔で登坂している自分がいました。

PHOTO YODOBASHIロードバイクにのめり込むほどに、次第に走りに余裕が生まれてきます。全身で受ける風、目に飛び込んでくる風景等、五感が鋭く感じ始めます。森の深い緑や澄んだ空気、初めて聴く鳥や動物の声、見たこともなかったブルーアワーの空、旅の途中や目的地で出会う人たちからも刺激を受けます。クルマやオートバイほど速くなく、徒歩やランニングよりも速い。そんなスピード感で流れる光景を全身で感じられる幸福感。その一瞬一瞬を記憶だけに留めるのではなく残したいという欲求が生まれてきます。「数年後でも見返せる画を残したい」「自転車の旅にカメラを連れ出したい」できればスチルだけでなくムービーにも。こうしてまだ見ぬ機材探しの旅が始まったのです。


日常を超える世界を撮るための専用機材とは。

私にとってスマートフォンは、出先でのウェブ検索や交通状況確認、スナップ撮影、お財布代わりなど、日常生活に欠かせないモノ。どこに行くにも手ぶらがモットーですから、ロードバイクで県境の山を越える時もスマートフォンをハンドルにマウントし、ナビや移動記録に使っていました。補給場所や帰宅ルートの検索、BGM再生、天気状況の収集など、欠かすことのできない多くの役割を一つの端末で賄える便利なガジェットなのです。

PHOTO YODOBASHI近年発売されたスマートフォンで撮れる写真や動画の質には驚かされます。以前は自転車にマウントしたスマートフォンで風景を記録していましたが、走行中のライフラインであるスマートフォンにバッテリーを多く消耗する撮影まで任せることはできません。モバイルバッテリーの追加も考えましたが、様々な役割を担うスマートフォンと撮影機材は分けたいと考え、撮影専用のカメラが欲しくなってきました。最初に手に入れたのは1型センサーのコンパクトカメラ。サイクリングジャージの背中ポケットにカメラを忍ばせ、撮りたい風景を目にすると自転車を停めて撮影を楽しんでいました。しかし100kmを超える距離を頻繁に走るようになると、カメラの重みと嵩張りが耐えがたくなってきました。しかも季節や天候によって汗や雨で濡れることもあり、扱いに気を使います。2台目のコンパクトカメラにいたっては、一度も撮ることなく汗で使用不能になってしまったのでした。

安全に走るためにも⾛りに集中したい。走行のリズムを維持しにくいコンパクトカメラをやめ、撮影も兼ねるスマートフォンをハンドルに取り回しよくマウントし、⾃転⾞旅をすることにしましたが、様々な役割を担うスマートフォンだけにサクっと撮れない歯痒さがどうにも満足できません。「もっとアクティビティに集中できる撮影専⽤機はないのだろうか?」そこで検討したのがウェアラブルカメラ。カタログ上のスペックやネットでの口コミ、⾃転⾞仲間が撮る画からの印象は、⼩さな筐体で取り回しがよく、画質もそこそこよい。丈夫で防⽔のボディは少々⼿荒に扱っても⼤丈夫そうです。「これならロードバイク旅のいい相棒になるのでは?」そう思いはじめました。耐熱・耐寒、防⽔性能が⼗分で、素早く⾼画質に撮影ができ、アクティビティの邪魔をしない、そんな機種を選びたくなったのです。

そうして手に入れ最初にマウントしたのは、1080/60pで動画が撮れ、⼩さいながらも防滴ボディで振動ブレをしっかり抑えてくれるウェアラブルカメラ。明るい未来を⾒た気がしました。ただセンサーサイズが⼩さいが故、明るい⽇中でないと撮影が厳しく、どうにも相棒になりきれません。「理想のウェアラブルカメラはどんなものだろう?」と考え、挙げた条件は以下のようなものです。

  • 小型軽量であること...スマホとの表面積比較
  • 防⽔構造であること...以前に使用のウェアラブルカメラへの不満
  • 取り外しがよく、振動・衝撃に強いマウント機構であること...Aceシリーズの磁気マウントシステム
  • ⻑回しに耐える放熱構造であること...スマホ比較
  • スマートフォン以上の画質であること...センサーサイズ比較、画像処理チップへの期待 <1/1.3型の大型センサー 最新のAIチップ ライカと共同開発された高性能16mm相当の超広角レンズ>
  • 夜間撮影でもノイズが少ないこと...スマホ比較、センサーサイズ・画像処理チップへの期待 <PureVideoモード>
  • セルフィーも可能なモニター構造であること...<フリップ式モニター>
  • スマートフォンと共用可能なUSB-TypeCコネクタであること
  • できるだけ広い画角であること <16mm相当の超広角レンズ>
  • 給電しながら撮影できること

と、挙げ出すとキリがないものの、こんな条件をクリアしそうで期待できるスペックのウェアラブルカメラが発売されることを知った時の胸の高鳴りといったらもう、今だに鮮明に覚えています。


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Insta360 Ace Proを選択した理由。

Insta360は中国深センに設立されたArashi Vision社のカメラブランド。2016年にiPhoneに接続して使える手頃な価格の全天球カメラ(360度カメラ、またはVRカメラとも呼ばれる)が大ヒットし、一躍トップメーカーとなった。筆者が持つInsta360へのブランドイメージはそんなものでした。

PHOTO YODOBASHI最近のInsta360のウェアラブルカメラといえば、同社が強みを持つ360度全方位をカバーし、他に類のない映像が撮れるXシリーズを思い浮かべます。2022年9月に発売された「Insta360 X3」を手にする機会があり、1/2型センサーで360度の画角、5.7Kの革新的な映像には衝撃を受けました。見えない自撮り棒を用いた撮影なら「もはやこれ一択」と反応してしまいました。

しかし冷静に考えると、自転車の前方や後方から突き出して自撮り棒をマウントするスタイルのXシリーズは、ライド中の撮影に気が取られてしまいます。つまり、もっとアクティビティに集中したいのです。「あ、そういえば君そこに居たね」くらいが相棒との距離感としてちょうどいいのです。そういう意味では、Xシリーズより筐体サイズが小さく、広角域で一方向のみを撮影できるオーソドックスなウェアラブルカメラがしっくりくるのです。この「しっくり感」だけはどうして外せません。

そして、いよいよ、遂に、2023年秋に「Insta360 Ace Pro」が発売されるとのニュースが!最新のAIチップに1/1.3型の大型センサーを採用し、ライカと共同開発された高性能16mm相当の超広角レンズを組み合わせ、『低照度撮影を再定義した』というPureVideoモードに興味津々。8K24pや4K120pの動画クオリティ、最大48MPでのスチル撮影、ボディ単体での10mの防水、基本性能が高い上に『夜のシーンでも驚くような画質。』というコピーがブスブス音を立てて胸に刺さるではないですか。

納得のセンサーサイズ、夜間走行時の撮影に強いスペック、ウェアラブルカメラでは珍しいフリップ式モニターは、セルフィーなどアングルの幅も広がります。「Insta360が考えるAce Proの製品コンセプトと、僕のアクティビティ。めっちゃ被ってるんじゃない?」という思いと「360度カメラのトップメーカーが放つスタンダードな画角のカメラでもInsta360のエッセンスを体験できるかもしれない。」そんな言葉が頭の中をグルグル巡り出すと、もう我慢できません。撮影予算からは少しオーバーしていたものの、「しっくり」への期待がすべてを吹き飛ばし、気付けばヨドバシエクストリーム便が届いたのでした。

( Photography, Videography & Text : OTTOn )

次回予告:
Long Term Report vol.2 - 手に入れたInsta360 Ace Proの実力を探る〜様々な条件でテスト
旅先での撮影やサイクリングをはじめとしたアクティビティでの記録をメインに「Insta360 Ace Pro」をよき相棒とすべく、撮影時の工夫や使いこなし等をロングタームレポートとしてお届けしていきます。時々、関⻄弁が暴発し皆さまのお⽿汚しになるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

( 2024.09.13 )

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