FUJIFILM GFX 50S × GF63mmF2.8 R WR
春爛漫

プライベートな撮影では、「今日こんなシーンに遭遇したんだけど、どう？」というような写真を好んで撮っています。人間や動物の営みを観察して「面白い」、「かわいい」、「それわかる」、「とにかくすごい」などと思った時にシャッターを切る傾向があります。被写体単体が面白いパターンもありますが、異なる要素が混ざり合って面白くなっているパターンが多い気がします。興味の中心はシーンの美しさやカッコよさではなくイベントそのものにあるので、ドラマチックな陰影やボケ味のような演出的要素はあってもなくてもいいというスタンスです。このような撮影には、まずチャンスに居合わせることができて、それを確実に捉えられるカメラが必要です。つまり、可搬性が高く、AFが素早く、あるいはマニュアルフォーカスがしやすいカメラに自然と手が伸びます。画質については高いに越したことはありませんが、まあ1インチセンサー搭載機で十分かなと考えています。

そんな私に編集会議の場で手渡されたのはGFX 50SとGF63mmF2.8 R WRの組み合わせ。完全なオーバースペックですし、サイズもこれまた堂々たるものです。どうなることやらと思いつつ撮り始めたのですが、数カット撮って気持ちが変わりました。ラージフォーマットでありながら35mm判のフラッグシップクラスの感覚で使える上にAFもキビキビ反応してくれるので、意外にも撮りにくさを感じることはありませんでした。やはり階調や深度の厚みが35mm判などで見る世界とはまるで違っていて、描写に潤いとか余裕といったものを感じるのです。緻密な描写がもたらす説得力は写欲を牽引し、絵画のように思わず見入ってしまいます。フィルムシミュレーションはテーマに合わせてベルビアにしましたが、カラフルでもわざとらしさが無いので「やりすぎ」になることがなく、演出っぽさを前面に出したくない私にはうってつけでした。4 : 3という縦方向にも余裕を持たせたフォーマットも、自分のようにフレーム内に多くの現象を入れ込むスタイルにはぴったり。3 : 2より縦や前後方向の関係性を使った表現がしやすく、縦位置を使う必要性もほとんど感じませんでした。

機材を変えることの効果はあると言えばあるし、ないと言えばないのかもしれませんが、GFXはその効果をストレートに感じさせてくれます。コンデジで十分と思っていた私。機材を返却後、重度のGFX欠乏症に苛まれております。

( Photography & Text : TAK )

( 2022.05.24 )