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じゃんけん ジャケ買い ムール貝

じゃんけん ジャケ買い ムール貝
第2回

カンノ・トオル 「ロマンチック・ギター」
(2022年4月、埼玉県さいたま市にて発見)

皆様こんにちは。ジャケ買い2回目です。相変わらず中古レコード屋さん巡りをしております。前回お話ししたように、今までもジャケ買いは数えきれないほどしてきました。しかしジャケ買いを目的にレコード屋さんに行ったことは一度もありません。ジャケ買いというのはいろんな条件が揃った末に生まれる、ちょっとした出来心、偶然の産物なんですね。それがですよ。こんな連載を始めてしまったものですからヘンな使命感が芽生えてしまい、「ジャケ買いをしに行く」という、おかしな状況に陥りつつあります。まさに本末転倒。しかしまぁ、ジャケ買いが目的であろうとなかろうと、「あるレコード店の、その時の在庫における、ジャケ買いにふさわしいレコードの含有率」は変わらないわけで、つまり最終的にレコード屋から出てきた時に手にしているものは一緒なので、別にどっちでもいいっちゃいいのですが、正直プレッシャーではあります。はい。

音楽のジャンルによって多少傾向が違ったりしますが、いちばん多いジャケットデザインは演奏者自身のポートレートやグループショットです。しかし経験的にそういうジャケットはジャケ買いまで昇華しづらい。だってそうでしょう? 人の姿や顔を「素敵に見えるように」写したジャケットでジャケ買いをしたくなるって、それは「相当なもの」ですよ。どう相当なのかはいろいろでしょうが、とにかく相当なものです。しかし! 今回ワタクシは、その「相当なもの」に出会ってしまいました。

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ある日、いつものように行きつけの中古レコード屋へ行き、毎回最初にチェックする棚の前に立つと、なんだか様子が違う。よく見ると、どうやらレコード棚の配置換えがあったようなんですな。その棚に書かれていたのは「廃盤日本歌謡」。ほう。ワタクシの専門分野は60〜70年代のブリティッシュロックですが、クラシックやジャズ、果てはゴリゴリの北欧ヘヴィメタルに至るまで、何でも聴きますし、どのカテゴリにも贔屓のミュージシャンがいます。ただ、唯一疎(うと)いのが日本のロックや歌謡曲。日本人としての基礎教養と言っていいであろう、サザンオールスターズやB'zですら、ワタクシは殆ど知らないのです。有名な曲ならメロディや歌詞を口ずさめたりするものの(それでも部分的にですが)、その曲名までは知らないのが普通。だからカラオケに誘われると地獄です。小学生で洋楽にずっぽりとハマってしまうと、そうなります。

そんなワタクシがなぜその日本歌謡、しかも廃盤の棚を漁る気になったのか。それはひとえに前述の「ジャケ買いをしなければいけない」という邪念以外の何物でもありません。さらに言うと、棚を漁る前にすでにミッションは達成されていました。このレコードが一番手前にあって、私のことをじっと見ていたのです。これを見た瞬間、今日はもうこれ以上レコードを探さなくていいと確信しました。それがこれです。