PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
4群1枚目 100年間変えられないことを、考えて、決める
Zマウントはこうして生まれた
マウント=憲法
新しいマウントを考えるにあたって、まずどこから決めたんですか? |
マウントの径をどのぐらいにするか? です。 |
マウント径は大きければ大きいほどよいのでござろう? |
光学的な理屈だけを考えればその通りですが、マウント径が大きくなるということは、ボディもレンズも大きくなることを意味します。それはそれで、われわれが目指していることに逆行してしまいます。 |
ああ、そっか。 |
考える時はできることが無限なんですけどね、一度決めたら、そこから先は思いっきり有限の世界です。われわれは「制約」という言葉をよく使いますが、マウントなんて、本当にただの制約でしかない。他に何を変えても、変えることができたとしても、ここだけは変えられない。要するにマウントは憲法なんです。 |
マウント=憲法かあ。なるほどなあ。 |
じゃあどのぐらいがいいのか。その落としどころを探っていく作業は、まさに森羅万象のカラクリを解き明かしていくような感じで、それは大変でした。結局、やはりレンズにこだわるべきだろう、その力を最大限引き出すためにはどうあればいいのか? その結論がマウント内径55mm、フランジバック16mmだったんです。 |
マウント内径55mmってかなりの大口径ですよね。フルサイズカメラで、今いちばん大きなマウントじゃないかなあ。 |
Fマウントの弱点というか、まさにさっき話にあった「制約」ですよね、その制約をぜんぶ取り払ってみたらこうなったという(笑) |
ででーん!(とZ のノクト登場) |
おおおっ! |
その反動で作っちゃったレンズがこれですね。 |
ちょっと触ってもいいですか? うわー、すごい。極薄のピントでマニュアルフォーカスなのに、ピントの山が掴みやすいんですね。 |
マウントのポテンシャルが高いからこそ、こういった弩級のレンズを作ることができたんです。Fマウントでは光学とメカがわずか0.1mmの取り合いで喧嘩になってましたからね(笑)。どれだけシビアな世界なのかピンと来ないかもしれませんが、それがこれだけ大きくなるって、本当にえらいことで。 |
そうですよね。今までよりちょっと良いことができる、どころじゃないですもんね。まるで違うことができるってことですもん。 |
その違うことを、サイズが同じだったら光学性能に振るのもよし、同じ光学性能だったらレンズをもっと小さくするのもよし、もっと安く作るもよし。Z 50mm F1.2のインタビューでも言いましたが、今私たちは過去最高に光学設計がやりやすい位置にいるんです。光学設計のできることが、どの方位に対しても格段に優位になりました。 |
もう一本、Zマウントの高いポテンシャルを象徴するレンズとしてZ 135/1.8 Plenaがあります。下の写真を見ると画面の最周辺まで、いわゆる玉ボケがきれいな丸のまま写っていますよね? これはZマウントが大口径かつショートフランジバックだからこそ、玉ボケの光線がケラれてラグビーボールにならずにセンサーまで届いているのです。 |
そのあたりの評価が、カメラグランプリ2024(カメラ記者クラブ主催)での「レンズ賞」と「あなたが選ぶベストレンズ賞」のダブル受賞に繋がったんですよね! |
- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内