PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

4群1枚目  100年間変えられないことを、考えて、決める
Zマウントはこうして生まれた

マウント=憲法

4号

新しいマウントを考えるにあたって、まずどこから決めたんですか?

マウントの径をどのぐらいにするか? です。

小濱
3号

マウント径は大きければ大きいほどよいのでござろう?

光学的な理屈だけを考えればその通りですが、マウント径が大きくなるということは、ボディもレンズも大きくなることを意味します。それはそれで、われわれが目指していることに逆行してしまいます。

小濱
1号

ああ、そっか。

考える時はできることが無限なんですけどね、一度決めたら、そこから先は思いっきり有限の世界です。われわれは「制約」という言葉をよく使いますが、マウントなんて、本当にただの制約でしかない。他に何を変えても、変えることができたとしても、ここだけは変えられない。要するにマウントは憲法なんです。

小濱
1号

マウント=憲法かあ。なるほどなあ。

じゃあどのぐらいがいいのか。その落としどころを探っていく作業は、まさに森羅万象のカラクリを解き明かしていくような感じで、それは大変でした。結局、やはりレンズにこだわるべきだろう、その力を最大限引き出すためにはどうあればいいのか? その結論がマウント内径55mm、フランジバック16mmだったんです。

小濱
2号

マウント内径55mmってかなりの大口径ですよね。フルサイズカメラで、今いちばん大きなマウントじゃないかなあ。

Fマウントの弱点というか、まさにさっき話にあった「制約」ですよね、その制約をぜんぶ取り払ってみたらこうなったという(笑)

小濱
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大きなマウント内径とショートフランジバックにより、センサーの隅々までじゅうぶんな光を届けることが可能になりました。

ででーん!(とZ のノクト登場)

原田
1号

おおおっ!

その反動で作っちゃったレンズがこれですね。

原田
1号

ちょっと触ってもいいですか? うわー、すごい。極薄のピントでマニュアルフォーカスなのに、ピントの山が掴みやすいんですね。

PHOTO YODOBASHI

ずっしり(いろんな意味で)。

マウントのポテンシャルが高いからこそ、こういった弩級のレンズを作ることができたんです。Fマウントでは光学とメカがわずか0.1mmの取り合いで喧嘩になってましたからね(笑)。どれだけシビアな世界なのかピンと来ないかもしれませんが、それがこれだけ大きくなるって、本当にえらいことで。

原田
2号

そうですよね。今までよりちょっと良いことができる、どころじゃないですもんね。まるで違うことができるってことですもん。

その違うことを、サイズが同じだったら光学性能に振るのもよし、同じ光学性能だったらレンズをもっと小さくするのもよし、もっと安く作るもよし。Z 50mm F1.2のインタビューでも言いましたが、今私たちは過去最高に光学設計がやりやすい位置にいるんです。光学設計のできることが、どの方位に対しても格段に優位になりました。

原田

もう一本、Zマウントの高いポテンシャルを象徴するレンズとしてZ 135/1.8 Plenaがあります。下の写真を見ると画面の最周辺まで、いわゆる玉ボケがきれいな丸のまま写っていますよね? これはZマウントが大口径かつショートフランジバックだからこそ、玉ボケの光線がケラれてラグビーボールにならずにセンサーまで届いているのです。

小濱

PHOTO YODOBASHI

このきれいな玉ボケ! 本当にすごいです。

2号

そのあたりの評価が、カメラグランプリ2024(カメラ記者クラブ主催)での「レンズ賞」と「あなたが選ぶベストレンズ賞」のダブル受賞に繋がったんですよね!