PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
4群1枚目 100年間変えられないことを、考えて、決める
Zマウントはこうして生まれた
発端は、「ニコンを輝かせる」だった
というわけで、こちらがZマウントを考えた小濱さんです。 |
もちろん1から10まで私ひとりで考えたわけではありませんよ。プロジェクトの旗振り役として基本となる部分を考えて、いろんな人の意見を聞きながら最終的な形にまとめた、という感じです。 |
小濱さんも、言ってみれば一介のサラリーマンですから、やはり会社からその命を受けたわけですよね? |
そうです。 |
そういう指示って、どんなふうに下されるんでござるか。やはり真夜中、港に停めた車の中とか。 |
それは大昔のスパイ映画ですね。ふつうに昼間、会議室で言われました。 |
われわれも組織に属して仕事をしている身です。日々、与えられたミッションをヒィヒィ言いながらこなしていますが、ここまで未来を見据えた仕事なんて絶対に無いですし、大抵の仕事は後から修正が効きます。 |
ところがマウントは一度世に出したら変えられない。Fマウントが65年経った今でも現役であることを考えたら、Zマウントは「100年変えない」も言い過ぎではないですよね? |
そういう仕事を任されるってどういう感じなんだろう? それを決めるプレッシャーとどう戦ったんだろう? と、まずはそこに興味があります。 |
実は、プレッシャーはあまり感じなかったんですよね。 |
すごい強心臓。 |
そうじゃないんです。これを「我が社の未来が君の双肩にかかっている。失敗は許されんぞ」みたいに言われたら、それはもうビビり散らかしたでしょうね。でも実際にはもっと軽いノリだったんですよ。 |
軽いノリ? マウントを変えるという、これ以上ない重要なミッションが? |
実を言うと、「新しいマウントを考えろ」とは言われてないんです。 |
へ? どういうことですか? |
当時、あるプロジェクトが社内で動いていたのですが、そのテーマは「ニコンがさらに輝くために」というものでした。なので、われわれに課されたミッションは「マウントを変える」という具体的なものではなくて、「ニコンをさらに輝かせる」という、もっと大きなものだったんですよ。 |
まあ、なんと漠としたミッションだこと。でもなんだか面白そう。 |
でしょう? 私もそう感じました。だから嬉々としていろんなことを考えましたよ。地味なことから振り切ったことまで、ニコンがさらに輝くためには何が必要かを。で、それらを実現させるための解決策の一つとして「マウントを変える」が出てきただけなんです。 |
マウントを変えることは目的ではなく、あくまでも手段だったってことですね。 |
そうです。最初から「マウント変更ありき」ではなかったんです。Fマウントではこの先が厳しいのは分かっていましたが、じゃあマウントを変えただけで急にニコンが輝き始めるかというと、そうではないですからね。 |
- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内