PHOTO YODOBASHI

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SORI - 新宿光學總合研究所

4群1枚目  100年間変えられないことを、考えて、決める
Zマウントはこうして生まれた

発端は、「ニコンを輝かせる」だった

というわけで、こちらがZマウントを考えた小濱さんです。

原田

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株式会社ニコン 光学本部 第三設計部
小濱 昭彦(おばま あきひこ)さん

もちろん1から10まで私ひとりで考えたわけではありませんよ。プロジェクトの旗振り役として基本となる部分を考えて、いろんな人の意見を聞きながら最終的な形にまとめた、という感じです。

小濱
4号

小濱さんも、言ってみれば一介のサラリーマンですから、やはり会社からその命を受けたわけですよね?

そうです。

小濱
3号

そういう指示って、どんなふうに下されるんでござるか。やはり真夜中、港に停めた車の中とか。

それは大昔のスパイ映画ですね。ふつうに昼間、会議室で言われました。

小濱
1号

われわれも組織に属して仕事をしている身です。日々、与えられたミッションをヒィヒィ言いながらこなしていますが、ここまで未来を見据えた仕事なんて絶対に無いですし、大抵の仕事は後から修正が効きます。

4号

ところがマウントは一度世に出したら変えられない。Fマウントが65年経った今でも現役であることを考えたら、Zマウントは「100年変えない」も言い過ぎではないですよね?

1号

そういう仕事を任されるってどういう感じなんだろう? それを決めるプレッシャーとどう戦ったんだろう? と、まずはそこに興味があります。

実は、プレッシャーはあまり感じなかったんですよね。

小濱
2号

すごい強心臓。

そうじゃないんです。これを「我が社の未来が君の双肩にかかっている。失敗は許されんぞ」みたいに言われたら、それはもうビビり散らかしたでしょうね。でも実際にはもっと軽いノリだったんですよ。

小濱
2号

軽いノリ? マウントを変えるという、これ以上ない重要なミッションが?

実を言うと、「新しいマウントを考えろ」とは言われてないんです。

小濱
1号

へ? どういうことですか?

PHOTO YODOBASHI

クッキリとした、実にいい生命線です。

当時、あるプロジェクトが社内で動いていたのですが、そのテーマは「ニコンがさらに輝くために」というものでした。なので、われわれに課されたミッションは「マウントを変える」という具体的なものではなくて、「ニコンをさらに輝かせる」という、もっと大きなものだったんですよ。

小濱
2号

まあ、なんと漠としたミッションだこと。でもなんだか面白そう。

でしょう? 私もそう感じました。だから嬉々としていろんなことを考えましたよ。地味なことから振り切ったことまで、ニコンがさらに輝くためには何が必要かを。で、それらを実現させるための解決策の一つとして「マウントを変える」が出てきただけなんです。

小濱
4号

マウントを変えることは目的ではなく、あくまでも手段だったってことですね。

そうです。最初から「マウント変更ありき」ではなかったんです。Fマウントではこの先が厳しいのは分かっていましたが、じゃあマウントを変えただけで急にニコンが輝き始めるかというと、そうではないですからね。

小濱