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風景写真の撮影場所、どうやって探してる?
Vol.4 - Text by TAK

目指すは人のいないところ。地図と本で探す。

撮影地探しって実は撮影と同じくらい楽しいのではないかと思っておりまして、予定だけ立ててお腹いっぱいになることもあります。理想は現場の人口が限りなくゼロに近く、風景を独り占めできる環境です。勝手ですよね。でも独り占めできてこそ感じ取れる/撮れるものがあると思いますし、人間=自分だけという環境でどんな気持ちになるのかを楽しみにしています。そんなわけで人口密度の低そうな行き先を探すのですが、下調べには主に地図とアウトドア関連の本を使います。地図は文字通り位置や地形の情報を得るために使い、本は現場で何らかの気配を感じ取るために参考にしています。

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地図はやはりGoogle Mapが第一のリソースです。ピンと来たエリアは付近のランドマークをお気に入り登録しておきます。ランドマークの方が現場そのものよりもカーナビに載っていることが多く、使い勝手が良いのです。地図表示は、航空写真ではなくデフォルトの地図を使うことが多いです。林道は木々で隠れてしまうので。もちろんストリートビューもありません(笑)。

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主な移動手段はオフロード四駆です。地図にもない場所は行かなければ分からないことも多いので、走破性が高いに越したことはありません。道なき道とは言わないまでも、多少の悪路や狭い林道は平気という前提で探します。ちなみに、車は野鳥を狙う際のブラインド代わりにもなります。

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風景撮影には登山が必要な時もありますが、そんな時は国土地理院の「1/25000地形図」でルートをイメージします。登山で一番危険なのは登山そのものよりも、登山するつもりはなかったのに調子に乗って気がついたら登山になっていた、という状況だと思います。過去、軽い気持ちで200m未満の低山に入り、撮影に夢中になっているうちに遭難しかけた恥ずかしい経験があります。低くても登山道や目印が無かったり、木が生えているだけで景色が単調だといとも簡単に道迷いしてしまうことを思い知りました。以来、登山やトレッキングを伴う時は、予めルートを考えて、谷や稜線、傾斜の緩急をざっと把握して備えておくようにしています。また、撮影中に登山の必要性を感じた時は一旦退散し、後日準備してから出直すようにしています。なお、地理院地図は電子版もあり、眺めているだけでも楽しいですよ。

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危険といえば、統合型地図情報システム(GIS)を使って、地域のクマ目撃情報もチェックしています。危険回避よりも少しだけ好奇心が勝っているかもしれません。「今年は去年と出るエリアが違う」「餌が少ないのかな」などと、生態を想像するだけでも面白いんです。GISは他にも鳥獣保護区マップや地震災害想定マップなど多種多様な地図がありますから、ご自分の地域のものを探してみてはいかがでしょうか。

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本については、ここ数年はアウトドア関連、特に山岳、狩猟、釣り関係の書籍を好んで読んでいます。撮影のためというより、単なる興味で読んでいるのですが、自分自身はどれも全くの門外漢なのですよ。なのに一冊、また一冊と買ってしまいます。山に登ったりシカやクマや魚を追いかけたりする人達の感性の鋭さは、街に住んでいる人間には異次元に写ります。そして同時に憧れを感じます。風の音一つ取っても自然の息遣いが事細かに伝わってくる文章を読むことで、結果として撮影現場でもより多くのことに気がつけるのではないかと思います。

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現地に着いても、そこから更にミクロな撮影地探しが始まることを考えると、撮影前も撮影後もずっと探していると言えます。現場で何を感じ、切り取るのか。あるいは地図上での現場をどのように想像するか。読書で得た知識はそのアンテナのようなものです。一個人がある経験をしてそれを言語化したものを他人が取り込むことと、自分自身で同じ経験して言語化することは本質的に異なるのかもしれません。ただ何も知らないよりは、知っていたほうが現場でより多くのことが見えてきて、結果としてより良い場所にたどり着ける気がします。

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以上が私の探し方ですが、初めからこうやろうと思ってやってきたわけではなく、今のやり方をお伝えするためにこのような形にまとめてみた次第です。当然ながら「坊主」もしょっちゅうですが、たまに目的地に向かう途中で撮り切ってしまうこともありますし、撮影が主目的ではない外出時に思わぬ風景に出会ったりもします。

岩手旅行で遠野から花巻に向かっていた時のことです。黄昏時でした。車が橋に差し掛かると、眼下にパーッと田園風景が広がります。釜石線が前方にまっすぐ伸び、周りには集落、背後には山々が見えます。それはもう何とも言えない景色で、懐かしさすら覚えました。目的地さえ決めれば、そこに行くだけで何かが運ばれてくるのだと思います。

ただこの時は、カメラは持っていましたが胸が一杯で撮る気にならず、撮らずに帰ってきました。ライカM8を持参していて、色再現性も状況にベストマッチと思われましたが、撮りませんでした。いわゆる絶景スポットでも何でもない場所ですし、運転中なので実際見た時間は1秒間もないかもしれません。でもその風景は今でも鮮明に覚えていて、人生最高の風景だったと思っています。こうなると撮らないという選択肢もあるかなと思いますが、それを言っちゃあおしまいですね(笑)。

( 2020.06.24 )

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