地図と想像力で場所探し。敢えて非効率、不確実を楽しむ。

地図を眺めるのが好きです。地図を「読む」のではなく、「調べる」のでもなく、まさに「眺める」。いろいろ妄想をかき立てられるじゃないですか、地図って。名前も聞いたことがない、日本の端っこにある小さな町の地図をぼんやり眺めて、そこに郵便局のマークを見つければ、小さな古びた郵便局を思い浮かべ、そこにはどんな人が働いていて、どんな人たちがやって来るのか、みたいなことまで想像したりする。なんかちょっと愉しいんですよ、これが。すごく地味ですけどね。

Google Mapのおかげで、世界中の地図（航空写真も含む）が簡単に見られるようになりました。例えばシベリアを見てみましょう。ひたすら広大な、極寒の地。こんな最果てみたいなところに人間の営みなどあるのだろうか？ そこでぐーっと拡大すると、ちゃんと町（あるいは村、集落）があったりする。うわ、こんなところでみんな何してんの？ 何人住んでんの？ もしここへ行かなければならない用事ができたら（絶対ないけど）、どうやって行けばいいの？・・・なんか愉しくないですか？ ないか。

前置きが長くなりましたが、そんなわけで私は撮影場所を探すのに地図を活用します。「活用」なんて言うとなんか凄そうに聞こえますが、私は海の風景が好きなので、実際にはただひたすら、あちこちの海岸線を辿って何か面白そうなものがないか探すだけの話。極めて原始的、かつ歩留まりの悪いやり方ではあります。でもそんなことをしていると時々、「おっ？」というものに出くわします。ここでストリートビューを使ってさらに詳しい状況を確認したりすることもありますが、残念ながら海岸線のキワに道路が走っていないと、ほとんど役に立ちません。となると、実際に行ってみるしかないわけです。本気で探せばいろいろ情報は得られるのでしょうが、ここは敢えて謎含みでワクワクしながら出かけるのが吉。探し方にコツがあるとすれば、航空写真のモードで探すこと。例えばこれ。

最初見た時、なんだこれ？ と思いましたね。やたらと細長い。でも橋ではないし、桟橋でもない。これが何かはさておき、こんなに大きな構造物なのに、地図には載ってない。写真で見て、初めて気づくわけです。あとはそれなりの拡大画像で探すことも大事です。楽をしようとして広い範囲をいっぺんに見ると見逃します。実際これも、少し縮尺率を下げただけで途端に見えなくなります。ひたすら地道な、そして不毛とも言える作業ですが、まぁ何かあればめっけもん、ぐらいの気持ちで楽しみながらやっています。

海岸線だけじゃありません。しょっちゅう地図を見ていると、なんて言うんですかね、ある場所がふと目に留まることがあるんです。たいていは道の形がトリガーになっているような気がします。例えばここ。ほぼ直線の長〜い農道が、ある一点でひとつになっている。その角度が実に絶妙。もう、ぱっと見た瞬間に胸騒ぎがし始める。さらに周りを見れば、遥か先まで畑が続いているだけで、建物も高圧線の鉄塔もない。となると絵のヌケもいいはず（もちろんストリートビューがあるなら活用すべし）。おお、ここいいんじゃねえかなあ。レンズはどうするか、24mmぐらいか・・・そんな風に、この時点ですでに撮影が始まっているような感覚も面白い。

何から何まで事前に調べまくる。まったく無計画に気の向くまま彷徨う。風景探しの方法もいろいろありますが、これはその中間というか、いいとこ取りみたいな感覚はあります。日本地図に向けてダーツの矢を投げ、それが刺さったところに行ってみるというテレビ番組がありますが、あれに近いものを感じます。気が向いたら是非やってみてください。ただし、時間と気持ちに余裕がある時に。さすがに仕事の撮影でこれをやってたら怒られるので、趣味の撮影限定ではあります（なのでどちらもモノクロフィルム）。

( 2020.06.01 )