PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

じゃんけん ジャケ買い ムール貝

ワタクシも長いことモノクロフィルムで写真撮ってきまして、しかもこういう「うら寂しい」「寒々とした」「茫々たる」風景ばっかり探して撮ってきたものですから、このジャケットには胸元をぐいっと掴まれた感じがしました。モノクロフィルムならではの粗い粒子とか、アンダーに撮ったネガを無理矢理持ち上げたことによって破綻しちゃったコントラストとか、ホント、こういう写真は大好物です。なにより、中身の音楽に対してこの写真を組み合わせちゃうという、絶妙なバランスで成り立たせるセンスが見事です。

裏ジャケのクレジットを見ると、撮影したのはKlaus Knaupという人。クラウス・ナウプと読むのかな。おそらくドイツかオーストリアの人ですね。しかしググってみても、殆ど情報がない。バイオグラフィーもわからない。1978年のレコードとは言え、前述した理由によりこの写真を撮ったのはそれよりずっと前の可能性は大いにあります。仮に若く見積もって1978年の時点で30歳だったとしても、現在74歳。ふうむ。

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調べてみるとこのナウプさん、過去に少なくとも3冊の写真集を出しています。

  • Windbuchen(1981)
  • Auf dem Wald(1982)
  • Wann endlich reisst der Himmel auf.(1986)

このうち、1981年のものは表紙にこのジャケットと同じ写真が使われています。写真集刊行の方が後なので、天下のECMのジャケットに使われて自信を深めたのかもしれません。1986年のものは純粋な写真集ではなく、Ellen Schlüter(テキスト)+Klaus Knaup(写真)という共著のようです。では、ECMのレコードで、ナウプさんの写真が使われたものは他に無いのでしょうか。

ありました、ありました。本作含め、ECMでは以下の4タイトルでナウプさんの写真が使われています(あくまでもワタクシ調べ)。

  • Kenny Wheeler "DEER WAN"(1977)
  • Jan Garbarek "PLACES"(1978)
  • Keith Jarrett "SUN BEAR CONCERTS"(1978)
  • Terje Rypdal "WAVES"(1978・本作)

おんや? おいおい、キース・ジャレットの「Sun Bear Concerts」って、ジャケットは写真じゃなくて、ただ下手くそなカタカナで「サンベア・コンサート」って書かれてるだけだぞ? と思ったら、同梱されているブックレットにナウプさんの写真が使われているようです。

サンベア・コンサート。伝説のLP10枚組のライブ盤。じ、10枚組って・・・。再生時間の合計は7時間超。キース・ジャレットが1976年11月にソロで来日した際、札幌から福岡まで7都市で8公演を行ったのですが、そのうち6公演ぶんを収録したものです。どうしてそんなことを? という人のために説明すると、キース・ジャレットというピアニストは「完全な即興演奏」の人なんです。普通のコンサートでは演奏する曲目と曲順が予め決められていますが、この人の場合は完全な即興、つまり曲は演奏しながらその場で作られていくので、そもそも曲名や曲順という概念が無く、内容は日によってまったく違います。なので自ずとこういうライブ盤になっちゃうわけですね。

で、実はその来日にはナウプさんも同行していて、ジャレット本人や日本の様子を写真に収めていました。のちにそれらがブックレットとしてLPに同梱されることになったというわけ。私はこの「サンベア・コンサート」を持っていませんが、画像検索をしてみると、50年近く前の新宿などの様子が生々しく写し撮られていて、風景だけでなくスナップシューターとしてもなかなかの腕前だったことが窺えます。こうして見ると、1976年の日本ってまだまだ「戦後」を引きずっていたんだなあと思います。なんか、このブックレットだけ欲しいかも。

あと、写真家の三好耕三さんが1977年から1979年まで自費で定期刊行していた写真誌「GRAIN」に、日本人の作家に混じってしばしば作品を発表しており、日本の写真界とのつながりも多少あったみたいです。

いろいろ調べてみたのですが、1982年2月にフランクフルトで開催されたナウプさんの個展のポスターがebayに出品されたことがあり、そこに写っているものが今回確認できた中では最新の作品でした。それはカラーの、不思議な雰囲気をもった女性のポートレート。いずれにしても写真家としての活動期間は70年代半ばから80年代半ばまでの10年ほどと思われ、まさに彗星のごとく現れ、疾風のように去っていった、謎多き写真家と言えそうです。今はどうされているんでしょうね。

そして最後に、これを言ってしまうとジャズ、いやそれどころか音楽を聴く耳を持っていないことを自ら証明しちゃうようなものですが、ワタクシ、実はキース・ジャレット苦手です。あー、言っちゃった。ジャズピアノの神様とまで言われるような人なんですけどね。なんかダメです。(NB)

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とりあえず「キース・ジャレット入門」で最初に聴くべき音源として、これに異論がある人はまずいないでしょう。ちょー名盤です。これも完全即興演奏のライブ盤ですが、初心者に優しい普通の長さなのが嬉しい。

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今回取り上げたアルバムの元ネタ(?)となっている、こちらも名盤。「元ネタ」という表現はネガティブに聞こえるかもしれませんが、音楽は「系譜の芸術」なので、こういうことは普通にありますし、あって然るべき。

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結局、中学2年の私が買ったのは「461 Ocean Boulevard」でしたが(クラプトンがお好きな方なら、結果的にこれが大正解だったことはお分かりですね)、実はいちばん気になっていたのはこっちでした。中2たるもの、そうでなくちゃいけません(笑)。しかしこれをレジに持っていく勇気は無かったので、大人になったら買おうと思いました。

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この連載のタイトルにこれっぽちも意味はありません。たんに語呂とリズムだけでこのタイトルにしました。まぁしかしこれも何かの縁ですから、ムール貝でもつまみながら乾杯しましょうよ。これ、なんだか美味しそうじゃないですか。

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