PHOTO YODOBASHI

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FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

FUJIFILM XF50mmF1.0 R WR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

本レンズの開放F値は1.0。従来のXマウント最高速のF1.2を更新する、最も明るいXマウントの中望遠レンズです。しかもAFを搭載。世界で最も明るいミラーレスデジタルカメラ用のAFレンズとなります。実は当初「33mmのF1.0」として設計されましたが、焦点距離を「50mm」、35mm判換算で76mm相当の中望遠域に変更。「標準域、F1、AF」ではXマウントとして現実的なサイズに収まらなかったのでしょう。仮に33mmのままF値を上げていくと名玉「XF35mmF1.4 R」とかぶります。一方、サイズ増を抑えつつF1を実現しようとすると、これまた傑作「XF56mmF1.2 R」が鎮座、さらにはボケを極めた派生型の「XF56mmF1.2 R APD」も控えているのです。それでも「50mm F1で、AF」を通したのは、老舗のプライドの表れかもしれません。また、各マウントのラインナップに超が付く大口径レンズが加わる中、同じ楽しみをXシステム自慢の画作りと共に味わってほしい。AFで極浅のピントを確実に快適に愉しんでほしいという心遣いもあるでしょう。そのAF性能はどうなのか。そして、極薄のピントが一体どんな世界を見せてくれるのか。じっくりとご覧ください。ちなみに今回はレンズの特徴に鑑み、全カット開放でお送りします。

( Photography : Rica / Text : TAK )

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

AFの動きを見るためにベーシストの指先を捉えてみましたが、激しく動く指先にピタリと合いました。正直、「爆速」とは言えませんが、信頼の置ける速さです。考えてみてください。F1でAFですよ。他に何を望めと言うのでしょう。そして開放のボケ、いかがですか。透明感、滑らかさ、量感を兼ね備えているばかりか、距離が変わるごとに繊細にボケていく様が圧巻です。このあたり、男性的というより女性的な美しさを感じるのですが、いかがでしょう。設計陣によればあえて収差を味わいとして残したということです。確かに弦のあたりに若干の収差が認められますが、これこそが「調味料」なのでしょうね。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

解像力は予想以上に高く、良い意味で期待を裏切られました。F1ということで甘めになると思っていましたが凛としたキレがあり、一見平面的に見える世界でも距離感の違いがしっかりと伝わってきます。色再現やツヤの表れ方も良いですね。Xシステム黎明期のXF35mmF1.4 RやXF56mmF1.2 Rは特に神がかっている印象を持っているのですが、その路線を踏襲しながらもF1独自の世界が加わり、Xマウントの新たな世界を見ているような感覚がします。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

奥にピントを合わせると、手前がこんなに。視線誘導も思いのままで、如意棒のようなレンズですね。


FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

どこにでもあるような公園の遊具ですが、このレンズで撮ると精神性すら漂っているようにも見えます。76mm相当の画角はほどほどにセレクティブで、望遠でありながらも狭すぎないのがメリットです。そこにF1のボケが加わることで、主役を簡単に明示化させることができます。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

もはや言葉で説明するのも野暮。そういう描写力です。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

前後のボケの確認。明るいといっても、単に大きくボケりゃいいというものじゃない。そう言っているかのようです。前ボケも後ボケも非常に滑らかであるものの、やはりしっかりと量感があるので嘘臭さがありません。「ぐるぐる」もほぼ無いと言っても良いでしょう。ピント部の解像力は現代レンズらしくキリッとシャープで、特に近距離ではその傾向が強いようです。豊かなボケとの大きな対比が、表現の自由度を底上げしてくれます。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

平面的なシーンでも、微妙な距離の違いを描き分けることで主役を浮かび上がらせる。このレンズならではの力技です。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

玉ボケもいたってキレイじゃないですか。当然F2あたりで真円になりますが、開放でも表現を邪魔するどころか夢見心地にさせてくれる形であります。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

遠距離もこの通り。当初、F1だから甘いのでは?と疑っていた自分。お見それいたしました。悔い改めたいと思います。周辺の落ちも驚くほど少ないですね。

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

やはり、ボケは単にストンと溶けておしまいではなく、しっかり量感も感じさせてくれる。結果、人工的な感じがしないのです。ピント部は相変わらず凛としていますね。


FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica


FUJIFILM X-T4, XF50mmF1.0R WR, Photo by Rica

フジの超大口径は高性能だけじゃない。

デジタルになって光学設計は自由度が増し、「高性能」を出しやすくなりました。しかしながら官能性という要素はまた別のところにあり、その演出法も作り手の腕の見せどころ。本レンズの設計陣は、収差を抑えるだけではなく、むしろ活用することでボケのまろやかさを出すという選択をしました。事実、ボケ味はいたって自然でありながら、コクが豊かで、慈しみさえ感じることができます。「開放からシャープ」のような優等生的高性能もちゃんとあります。でもそれで終わらないのがフジフイルム。じわっとくる大人の味わいも兼ね備えたレンズを送り出してくれたのです。当然絞ればさらに先鋭になりますが、開放でこれだけ写るということは、低輝度下でも画質を担保できるということでもあります。そしてAF。これが本当にありがたい。F1だからと身構えることなく、イージーな撮り方だってできるのですから。こうして見ると大きな鏡胴ですし重さも845gあります。でもバランスがいいので、カメラを持った瞬間から気にならなくなります。操作性も良いですよ。最後の水たまりのショットではAFで合焦後にMFで微調整しましたが、ピントリングのトルク感が絶妙。軽過ぎて抜けた感じもなく、かといって重過ぎずで、ちょうど良いのですね。もちろん防塵防滴設計ですから、どんなシーンでも安心して撮影に集中できます。ということで、成績優秀なのに色気も持ち合わせたXF50mmF1.0 R WR。単なる「新型」を超えた、Xマウントの新たな顔となるレンズです。当初は「XF56mmF1.2 R」などと比較してどうなの?と思っていましたが、そんなことはどうでもよくなりました。あらゆるジャンルに対応できますし、マンネリの打破にも即効性が高そうです。是非お迎えの上、独自の世界に酔いしれていただきたいと思います。

( 2020.10.27 )

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このボケを見るために被写体を探す。そんな罪深い遊びにも本気になりそうな強烈な魔力を持っています。

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フード径は77mmとなっております。しっかりと保護してあげてください。

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