TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD Model B060

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

先日発売されたばかりの富士フイルムXマウント用超広角ズームレンズ「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD Model B060」を紹介します。開放値F2.8通しの大口径ズームレンズですが、重さは335g、全長86.5mmと軽量・コンパクトにまとまっています。AFはステッピングモーターユニットRXDを搭載し高速・精密に。そして静粛性にも優れており動画撮影にも安心して使用できるとのこと。最短撮影距離は広角端0.15m、望遠端0.24mと開放値F2.8のボケを活かしたクローズアップ撮影も十分に楽しめそうです。使い勝手が良い印象のレンズですが、あまり見ない11-20mm （フルサイズ換算16.5-30mm相当）という焦点距離が気になるところ。高倍率ズームが得意なタムロンが出したズーム比2倍を切った本レンズの使い心地は。街へ海へ、コンパクトな大口径超広角ズームレンズを試してきました。

( Photography & Text : A.Inden )

まずテレ端開放F2.8の描写をご覧いただきましょう。 画面全体に抜けのいいキリッとした写りです。色収差を徹底的に抑えることでクリアな写りを実現したとのこと。コントラストがあるため黒が潰れたような印象ですが、黒の中にも階調はぎりぎり残っているようです。

木の影を手前に大きく入れてフレーミング。超広角は被写体を手前に入れることで遠近感を強調した画が作りやすくなります。

濃厚な青空の表現です。色のりはコッテリとした印象で、ポジフィルムの色再現を思い出しました。ほんの少し絞っていますが、周辺減光はほとんど感じられません。

ワイド端での描写です。周辺まで画像は流れることなく画面全体で解像感の高い描写です。歪曲収差もほぼ補正されていて気持ちの良い直線が描かれています。

---

自然な雰囲気で撮影しようとノーファインダーで。人物と背景のバランスを考え焦点距離を調整しウエストレベルにカメラを構え、犬に気づかれないようにそっとシャッターを切りました。完全逆光の条件ですが、新しいコーティングでゴーストとフレアの発生が極限まで抑えられているようで、全体の調子が柔らかくなりやすい光の中でもクリアな描写を見せてくれました。適度なコントラストで髪の毛のハイライトが美しく輝いています。

駄目押しの逆光ですが、やはりクリアな描写です。超広角ズームの性格上、画面に太陽が入ることが多くなりましたが、特に逆光での描写には好印象を受けました。

テレ端、開放で人物にフォーカスして撮影。周辺までキリッとシャープな描写です。本レンズは様々な収差がうまく抑制されているためか、画面をシンプルに構成すると、実際の焦点距離より少し長めの印象を与えるように感じます。

テレ端、ほぼ最短撮影距離で開放撮影。ピントピークは砂の様子がしっかりとわかるシャープな描写です。カリカリとしたシャープさではなく立体感と質感で描いていく高解像な描写は、マクロの世界で定評があるタムロンならではないでしょうか。波に濡れた小石の表面のツヤッとした写りも素敵です。

---

• 焦点距離11mm（フルサイズ換算16.5mm相当）
• 焦点距離20mm（フルサイズ換算30mm相当）

超広角ズームレンズは焦点距離1mmの違いでパースペクティブが大きく変わるのが特徴です。撮影時にそれを意識することで同じ場所で撮影しても雰囲気の異なる写真を撮ることができます。特に直線で構成されている都市風景はパースペクティブを意識することで、印象を変えやすくなると思います。左はワイド端で、太陽が反射した道路を構図の中心に置いての撮影。コンパクトな超広角ズームレンズは都市撮影には最強アイテムではないでしょうか。右は同じ場所からテレ端で撮影したものです。

---

---

広角はこれ一本にお任せ

超広角ズームレンズのレビューは少し緊張してスタートします。それは、望遠、標準ズームレンズと比べ焦点距離の何ミリという違いが構図に影響を与えやすいからです。特に都市風景はその傾向が強く、焦点距離の違いによるパースペクティブを意識すると写真がガラリと変わります。本レンズは2倍にも満たないズーム比ですが、何本もの広角系のレンズを持っているかのように、複雑な都市風景を緊張感のある構図で撮影することができました。広角レンズというとピシッと決めた構図で撮影するのでは、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、広い画角を活かして、周りの風景を自然に入れ込むルーズなフレーミングも、超広角ズームの得意の分野です。また、海辺の風景はいいなと思ったシーンをさっとスナップしてきたもので、都市とは違うほっこりとした時間の流れまでもを写し込めているように感じるのは私だけでしょうか。さて気になった11-20mmという焦点距離は、結論から言うとたった9mmの世界に面白さがギュッと詰まっていました。極端かもしれませんが超広角1mm=レンズ1本という印象を受けました。少し緊張しながら始めた試写ですが、使い込むほどに扱いやすくなり様々なシーンを収めることができたと感じています。カメラにつけていつも持ち歩くなら、これ一本でいいのではないでしょうか。

( 2023.06.19 )