FUJIFILM GFX100S / SHOOTING REPORT

1億画素という驚異のモデル GFX100 の発売から1年、装いも新たにコンパクトになったニューモデル GFX100S の登場です。フラッグシップモデルである GFX100 から単純に機能を削ぎ落としたものではなく、ほぼ同じ撮影クオリティを備えながらUIを全面的に刷新したボディとなります。手にした感覚は実際フルサイズデジタル一眼レフに近く、スタジオというよりはフィールドへ連れ出して、ラージフォーマットを身近に楽しめる1台と言えましょう。その使い勝手を確かめるべく今回はできるだけ普段の使い方、すなわちスナップ撮影を中心に遊んでみたいと思います。

( Photography : Z II / Text : Serow )

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LOOK & FEEL

50mmレンズと組み合わせてこの出で立ち。実にコンパクトなラージフォーマットカメラが生まれました。ボディ天面左にはモードダイヤルが備えられ、右には GFX100 譲りのカスタマイズ可能なサブモニター。先進的なデザインであった GFX100 と比べればオーソドックスな雰囲気になり、カメラに親しんできた方には違和感なく使えるカタチをしていると思います。

ムービーとスチルを切り替えるスイッチは現代のニーズに即したものでしょう。今や35mm判フルサイズセンサーでの映像撮影は当たり前の世界になってきましたが、ラージフォーマットで撮影するとなればどうか。ワクワクせずにはいられませんよね。しっかりしたグリップでホールディングも良好。モードダイヤルはC6まで用意され、お好みの設定を瞬時に6種類まで切り替え可能。富士フイルムの十八番であるフィルムシミュレーションを駆使して、シーンに併せてフィルムを切り替えるような撮影ができそうです。

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OVERVIEW

スペックを比較していただくとわかりますが、基本的にはGFX100と同様。ボディが小さく、軽くなったことが第一です。手ブレ補正についてはより良くなっており、フィルムシミュレーションには「ノスタルジックネガ」が加わりました。電子ビューファインダーはスペックダウンとなりますが、お値段を考えれば当然のことでしょう。

	GFX100S	GFX100
発売時期	2020年2月	2019年6月
有効画素数	約1億200万画素
連写	最大約5.0コマ/秒
ファインダー	0.5型有機ELファインダー 約369万ドット	0.5型有機ELファインダー 約576万ドット
液晶モニター	3.2型　4:3 アスペクト 3方向チルト式タッチパネル付き TFTカラー液晶モニター 約236万ドット
サブ液晶モニター	1.80型　4:3 アスペクト 303x230ドット モノクロメモリー液晶モニター
リアサブモニター	―	2.05型　4:1アスペクト 256x64ドット モノクロ有機ELモニター
AF方式	TTLコントラストAF／位相差AF
手ブレ補正	センサーシフト方式5軸補正（6.0段）	センサーシフト方式5軸補正（5.5段）
動画性能	DCI4K（4096×2160） 400Mbps 120分まで	DCI4K（4096×2160） 400Mbps 60分まで
フィルムシミュレーション	19モード （ノスタルジックネガ）	18モード
入出力端子	USB Type-C HDMIマイクロ端子（Type D） φ3.5mmマイク端子 φ3.5mmヘッドホン端子 φ2.5mmリモートレリーズ端子 ホットシュー シンクロターミナル	USB Type-C HDMIマイクロ端子（Type D） φ3.5mmマイク端子 φ3.5mmヘッドホン端子 φ2.5mmリモートレリーズ端子 DC IN 15V端子 ホットシュー シンクロターミナル
電源	充電式バッテリー NP-W235 静止画撮影可能枚数：約460枚 実撮影電池寿命：［4K］約60分	充電式バッテリー NP-T125　2個付属 静止画撮影可能枚数：約800枚 実撮影電池寿命：［4K］約100分
本体外形寸法	（幅）150.0mm （高さ）104.2mm （奥行き）87.2mm	（幅）156.2mm （高さ）144.0mm （奥行き）75.1mm ※EVF非装着時
質量	約900g（付属バッテリー､ メモリーカード含む）	約1,320g（付属バッテリー2個､ メモリーカード含む）

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PHOTO GALLERY

中判フィルムを手に入れた日のように

いよいよ実写です。気分は（フィルムカメラに親しんできた方ならお分かりになるであろう）中判カメラにロールフィルムを装填してお散歩に出かける、あの感覚。GFX100は状況が許すならしっかり三脚でも据えて撮影したいカメラでしたが、GFX100Sは気分も軽やかに、必要以上に構えずに撮影を楽しむことができます。フィルム時代と違うのは勿体ぶらずにシャッターを押せること。よくぞこのサイズにボディをまとめてくれたと感心してしまいます。フィルムシミュレーションにはスタンダードなPROVIAと新しく追加されたノスタルジックネガを選びました。すべてJPEG撮って出しの写真となりますので、どちらのモードを使ったものか想像しながらご覧ください。

大きなセンサーゆえのリッチな描写がGFXの本領。ピント面を精細に描きながら背景をならだかに溶かしていくその写りは、撮りたかったものを自然に際立たせて記憶をトレースしてくれるようです。その根底にあるものが1億画素ということで情報量に違いがあることは明らかですが、縮小した画像でも違いを感じてしまうから面白いですね。

花びらの淡い色を質感・階調豊かに描いてくれました。高画素の地力はこういった点にも生きてきます。特に近距離の被写体を狙うとラージフォーマットの凄みが顕著に表れますね。気が向いたものにシャッターを切れば、これほどまでにリアリティ溢れる写真に残せるのだから痛快です。

わかりやすく緻密な描写を見たいと思って枯山水を一枚。一見して隅々まで気持ちよく描写してくれていますが、撮影後に拡大してしみじみ眺めるのも1億画素の楽しみなのです。例えば・・・

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観光地を絵葉書的に撮影するというのもいいと思います。何気ない一コマでも問答無用の解像力で記録してくれる本機であればこそ、現在の光景を「記録」したくなるもの。何かと行動の難しい昨今ではありますが、その時だから撮れる写真というものがありますよね。

土手を見上げて一枚。空の表情に惹かれて撮影したカットですが、トーン豊かに描いてくれたと思います。実寸で見てみると自転車を押す男性の表情まで描写しており驚きました。鑑賞時に発見があるカメラを持てば、シャッターの数もついつい増えてゆきます。

野菜のポートレートもご覧の通り。整然と並ぶキャベツたちの生命力あふれる姿に春の訪れを感じます。よく育った葉の厚みや感触までも想像できませんか？　この気持ち良いグリーン、さすが富士フイルムです。

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走り去るバイクを追いかけてふとシャッターを切りました。こういう撮影ができてしまうのが、コンパクトなGFX100Sの魅力です。AF速度など、ラージフォーマットなりの難しさがあるものですが、十分に使えるレベルですね。使っていて遅いと感じることはなく、テンポのいい撮影ができました。

日も暮れて高感度撮影に挑みます。こちらはISO 6400。ディテールは少し甘くなりますがノイズも気になる程ではなく、夜のスナップでも活躍できそうです。暗部のトーンも良い具合に浮かび上がらせてくれました。

こちらはISO 12800。いやはや隔世の感があります。

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新しい世界が手のひらのなかに

大きなセンサーゆえの魅力的な写りがあることはわかる。1億画素がすごいこともわかる。だからといっておいそれとは手を出せなかったのがGFX100だと思うのですが・・・はてさて困った選択肢が出てきてしまいました。デジタル一眼レフに肉薄するサイズとあれば日常的な使い方も想像がついて、お値段がスリムになったことで現実感も出てきてしまう。「まだ手を出さなかった理由」をひとつずつ剥がされてしまっては、次の選択肢としてGFXが一気に躍り出てきたとしても無理はありません。さんざん写真を楽しんできた方ならお分かりの通り、ブレイクスルーをもたらしてくれる機材というものが確かにあって、しかるべきタイミングで人はそれに出会うのです。あとは踏み出す勇気だけ。ラージフォーマットのもたらす世界はぜひご自身の目でお確かめください。

( 2021.03.12 )