PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/20, F4.5, ISO 400, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

これはK-3 Mark IIIをベースとし、センサー部のカラーフィルターを物理的に省いて、モノクロ撮影に特化させたカメラです。性能比較などの次元を超越した、全く別のステージに立つ孤高の一眼レフです。結論から申し上げれば、表現の手段として写真というメディアを選んだ方が、手放せなくなるカメラに仕上がっています。このカメラはカラーで撮影することができません。オレンジ色の美しい夕日も透過光で輝く新緑も、当然見たままには写りません。ファインダーに映る美しい実像はカラーでも、撮影される写真はもれなくモノクロです。カラーという要素から解放されることで、物の形や光と影に目が行くようになり、それだけで表現ができる被写体を探し回ることになります。これをプラスと取るかマイナスと取るか。

( Photography & Text : TAK )

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/1600, F2.8, ISO 200, Photo by TAK

水が滴って波紋ができている、それだけのシーンです。水面や石などが何色かは無関係なので、ただ事象にだけ目が向きます。詳細を削ぎ落とし本質にフォーカスすることは、俳句を詠む境地にも通じるような気がします。細かな違いというよりは普遍性に目が行くのです。そんなマインドがシャッターを押すだけで手に入るのは、大いなるプラスであると考えますし、その感覚はカラー機で撮影する時にも活かされることでしょう。このカメラを携えた思索の旅は、所有者に与えられた特権です。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/40, F5.6, ISO 200, Photo by TAK

モノクロ写真の醍醐味は、明暗間の連なりにあります。後ほどまたお話ししますが、私個人の基準ではJPEG出力はどちらかというと少し軟調側に振ってあるのかなと感じます。これは大歓迎です。RAWから現像したとしても、右奥のシャドウを気にかけることになるので、この階調幅がJPEGで一発で手に入るのは嬉しいですね。畳の濃淡や外光がふわっと入ってきている様子も、期待以上の出来栄えです。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/6, F6.3, ISO 200, Photo by TAK

伝統的日本家屋のライティングは太陽光を直射で入れるというより、上部をすっぽり覆って横からの光を間接的に入れるようなスタイルです。そんな光の中で漆塗りや磨かれた床材などが放つ鈍い輝き。その再現がたまりません。襖絵の表情も味わい深く、精魂込めて描かれたのだろうなと想像させてくれる画作りです。このカメラは「和」との相性も良さそうな気がします。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/100, F6.3, ISO 200, Photo by TAK

密集する苔の緻密さはもとより、雨を吸った壁の様子にも心を奪われました。これもモノクロでなければ得難い世界でしょうか。


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/60, F3.5, ISO 200, Photo by TAK

凄まじい松葉の分離です。レンズ性能もさることながら、ここまでの浮き立ち方はやはりカメラ側の解像性能によるところが大きいでしょう。神社仏閣というものはつくづく自然との調和を考えてデザインされているのだなと感じたのですが、このカメラがなければそんなことも考えなかったかもしれません。ちなみに最低感度はISO 200となります(K-3 Mark IIIはISO 100)。メーカーサイトでも言われている通り、カラーフィルターを外したことで、センサーに到達する光量が上がり感度も上がっています。このカラーフィルターがなければ、カラー写真は撮れません。理由は、センサー単体では光の強弱、明暗しか捉えることができないからです。つまり、センサーとは元々がモノクロなのです。かなり端折って言えば次の通りとなります。モノクロ情報しか測れないセンサーにカラーフィルターをかぶせ、そこを通った光からカラーを推測させデータを合成することで、カラー写真が生成されます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/50, F11, ISO 200, Photo by TAK

実際には2x2=4画素を一つのユニットとし、R(赤)が1画素、G(緑)が2画素、B(青)が1画素という風に、1画素ごとに担当の色をアサインし、データを補完処理してカラー化しています。ただ、この方式では1画素あたり1つの色情報しか得られません。そしてRやBに関しては総画素数の1/4の情報しかありません。2倍の量のGでも半分です。一方、モノクロ専用センサーでは色自体が不要なので、全画素を光の強弱に専念させることができます。これがモノクロセンサー最大の技術的メリットです。K-3 Mark IIIといえばご存知「リアルレゾリューション」がありますが、K-3 Mark III Monochromeではそれがデフォルトです。4画素で1ユニットを構成するカラー機において1画素ずつスライドさせてすべての色情報を得ていたのが、モノクロ機ではその必要がないのです。どうりで切れ味も階調表現も段違いなわけですね。同様に、カラー写真をモノクロ処理したものとも全くの別物であり、有効画素数2573万画素のすべてが紡ぎ出す、正真正銘のモノクロなのです。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, 1/6400, F4, ISO 800, Photo by TAK

この透明感、いかがでしょうか。もはやミネラルまで写っているのではないか?と思いたくなるほどの瑞々しさ。やはりカラーでは描ききれない世界かもしれません。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, 1/500, F8, ISO 200, Photo by TAK

ゆったりとした水流が、何とも言えない泡沫模様を織りなしていました。白と黒、静と動、過去と未来なんてことを考えながらしばらく見入ってしまったのですが、単純なものほど様々な解釈が可能であり、本質を炙り出してくれるように感じます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/200, F8, ISO 640, Photo by TAK

画像をクリックして等倍でご覧ください。説明は不要ですね。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/25, F8, ISO 12800, Photo by TAK

ノイズ耐性も別格です。外光が入らず控えめな照明のみの状況ですが、ISO 12800まではノイズが目立つようなこともなく、格子模様なども出ませんでした。参りました。


  • PHOTO YODOBASHIK-3 Mark III Monochromeの撮って出しJPEG
  • PHOTO YODOBASHILEICA M Monochromの撮って出しJPEG

ここで「参考程度、話半分で聞き流していただければ、、、」というお話をひとつだけ。ライカのモノクロ専用レンジファインダーをお使いで、このカメラが気になっている方もおられるのではないでしょうか。初代のM Monochromが生成するJPEGと比べてみました。両カットとも、画角は50mm相当、絞りはF5.6、シャッター速度は1/125、感度はISO 320にて撮影しています。ご覧の通り、ペンタックスは多少軟らかめで明るめにも見えますが、ライカはコントラストが高い印象です。これは優劣の問題ではありません。物事に白黒をつける文化、調和を重んじる文化。国や文化や環境が変われば光の感じ方も違ってくるでしょうし、その結果として画作りにも違いが出るのだとすれば、中々興味深いことです。


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/800, F2.8, ISO 800, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/25, F4, ISO 1600, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/2500, F2.8, ISO 1600, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/1000, F2.8, ISO 3200, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, 1/1000, F1.9, ISO 200, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/80, F2.8, ISO 1250, Photo by TAK

モノクロ写真は「焼き」の世界。画像処理ソフトでちょっと編集してみました。もちろんカメラ内でもRAW現像が可能ですが、高い後処理耐性を存分に生かしてPC上で細かく調整するのもまた格別です。いくらでも遊んでください。京都にも外国からたくさんの観光客が戻ってきました。日本を楽しんでほしいと心から思います。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW, 1/80, F2.8, ISO 400, Photo by TAK


PHOTO YODOBASHI

表現としての写真に魅せられた、全ての方へ。

すでに暑苦しさドバドバのテキストからもお分かりの通り、これは撮る者の冷静さを奪い去るカメラです。ある種の狂気すら呼び起こすカメラです。もちろん良い意味で。そして、魅力的なプロダクトとはそういうものですよね。実際、取り憑かれたようにこのカメラで撮り歩きましたし、これほど仕事を忘れて(=結果を考えず)撮影という行為に没頭したのも久しぶりかもしれません。以下、正直にお話しします。ライカM MonochromやシグマのFoveonセンサー機で経験済みということもあってか、今回撮影を始めた当初は、思ったよりも驚きはありませんでした。まあ、なにせあの時は初体験でしたからね。ただ、K-3 Mark III Monochromeでしばらく撮り進めるうちに、「このカメラ、すごいわ」と思うに至りました。つまりある程度の予想ができてもなお、心を鷲掴みにするカメラであり、モノクロで写真表現を極めてゆくための完璧な素材なのです。

その理由が画作りの素晴らしさにあることは、作例が示す通りです。それ以外の点では、まず吸い付くようなグリップが素晴らしい。手ぶれ補正もよく効きますが、このグリップがあるからこそ自信を持ってスローシャッターも切れます。とはいえ、高感度耐性も抜群ですから速いシャッターも自在に選べます。そしてシャッターの感触がこれまた素晴らしい(こればっかりですみません)。というより、小ぶりで凝縮感のあるボディ全体の反応がキビキビしていて高級感があって、とにかくカメラとしての完成度が高いのです。ペンタプリズムの美しいファインダー像でピントもボケもしっかりと確認できて、超望遠レンズも使えて、高速連写もできます。しかも頑丈で防塵防滴。こんなモノクロ専用カメラ、ちょっと他にありませんよ。K-3 Mark III Monochromeで写真を撮るということは、趣味の中でも最高の部類に入ります。このご時世に、よくぞ作ってくれました。その意気に応えるのが、写真の世界に足を突っ込んだ者のたしなみというものでしょう。

( 2023.04.27 )

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プルルル。

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何?ペンタックスがモノクロ専用のデジタル一眼レフカメラを出しただと?

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よし、わかった。

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すぐにヨドバシカメラに臨場する!

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