PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome / SHOOTING REPORT vol.6

ソフトレンズでモノクロ

with smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8

撮影地は京都市内ですが、どこか海の向こうの景色のようにも見えてきませんか。PENTAX K-3 Mark III Monochromeレビュー第6弾は、ソフトフォーカスレンズとの組み合わせをご紹介します。その昔PENTAXでは複数のソフトフォーカスレンズがラインアップされていました。35mm 判対応レンズの中で最も数多く見かけるのは85mmで、「smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8」、「smc PENTAX-FA Soft 85mm F2.8」(おそらく外観のみの違い)、もっと遡れば秋山庄太郎さんも使用したと言われる「smc PENTAX Soft 85mm F2.2」(2枚構成!)がありました。加えて「smc PENTAX-FA Soft 28mm F2.8」という広角レンズまで存在し、今に続くPENTAXのフロンティア精神がほとばしっておりました。最大の特徴は、通常は好ましくないとされる球面収差を意図的に発生させることで得られる「ソフトフォーカス効果」です。

PHOTO YODOBASHI今回使用した1本は「smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8」。本機では約132mm相当の画角となります。絞り込むほどソフト量は減少し、開放からF5.6あたりまでは独特のフレアによる柔らかい描写が得られ、点光源を後ボケに持ってくると真円のバブルボケが発生します(即ち口径食は出ません)。強い輝度差は避けるのが良い子の使い方ですが、デジタルなので失敗も怖くありません。しかもモノクロですから、興味先行で撮り歩いてみました。この機材写真のように通常のレンズで撮影すると、どんなレンズも優等生に見えます(笑)。発売は平成元年の1989年。翌年の新語大賞は「ファジー」でした。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

開放で撮りたくなるところですが、F4からF5.6あたりで使うのが最も美味しいのかなと思います。ピントとふんわり具合のバランスが良いですね。画像処理ソフトで調整しても、この画は出てきません。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

こちらもF4です。教科書通りに輝度差の少ない状況で撮ってみましたが、なるほど確かに佳い塩梅です。ピントの芯がしっかりとあるところにも、フィルターワークや画像処理によるソフト効果との違いを感じます。高精細モノクロセンサーとの相性ですが、意外にも良いですね。いや、良くなる以外に考えられませんよね。ソフトに描くにしても描き方の緻密さがやはり一段上に感じます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

そして開放。光量が多いと簡単に全体が白飛びしますので、光抑えめで黒を生かすシーンを探しました。F4でも撮っていますが、花の周りのフレアとその境界線の輪郭が付き過ぎて描画ソフトの太線のようになっていたので、このシーンでは開放が正解だったようです。逆に絞り込む選択肢もありますが、ソフトレンズを使う意味が薄れます。ちなみにF8あたりからはソフト効果が無くなり、「普通のレンズ」としてもお使いいただけます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

逆に白飛びも構わずハイキーに振っても「らしさ」が出ますね。スウィートスポットは決して広くないレンズではありますが、手なづける自由があります。


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

かぐや姫 inside

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

少し絞って鈍く光る被写体を捉えると、色っぽくなりますね。最短撮影距離50cm、最大撮影倍率0.25倍と結構寄りも効くんですよ。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

情報量の多いカラーだと収拾がつかなくなりそうなシーンも、モノクロがちょうど良い具合に整えてくれます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

ちょっと露出を間違うとやはり白飛びするので、瞬発力が要求されるスナップは少し慣れを要します。決まった時の喜びは格別です。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

賑やかなAFは爆速ではありませんが、シャッターチャンスを捉えるには十分でしょう。ピントの山はただでさえ見極めづらいレンズですから、AFが使えるに越したことはありません。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

中国桂林ではなく京都嵐山です。遠景も期待以上に解像してくれました。現場の空気は乾燥していましたが、適度なフレアが森林に湿度を与えています。


PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

この組み合わせ、日本語話者のメンタリティに合うかも。

観光客も多く利用する京都市バスの車内には、英語で「大きな手荷物を持ち込むな!」と明快に書いてあります。一方、日本語バージョンは「大きな手荷物の持ち込みは深刻な問題で、手ぶら観光がおすすめ」というような表現になっています。そもそも大型荷物を持ち込む日本人が少ないこともありますが、特に意識することもなく様々な表現で核心をオブラートで包む技を持つ日本語話者には、フレアで包むソフトレンズは合うのではないか。短絡的ながら仮説を立ててみた次第です。無論ふわっとしていても内容はしっかりと伝えてきます。むしろ間接的だからこそ伝わるものもあり、靄の中にあるからこそ理解しようとするのかもしれません。この特性は、情報量を減らし想像を掻き立てるモノクロの特性ともマッチしますし、画作りの面でも色収差を気にする必要がないのでカラーよりもまとめやすい印象を持ちました(もちろんカラーならではの良さもあります)。先に述べた「smc PENTAX Soft 85mm F2.2」や「smc PENTAX-FA Soft 28mm F2.8」(かなりレア)でも、きっとお楽しみいただけるでしょう。ほぼ中古でしか手に入りませんが、そんなにお高い買い物ではありません。花やポートレート撮影はもちろん、家族写真が色んな意味で「写り過ぎ」と言われお悩みの方にも全力でお勧めいたします。それから、フィルム時代に手に入れて使い道がピンと来ず防湿庫に入れっぱなしの方、このカメラで使ってみてください。ちょっと驚かれると思います。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

ろおじ(路地)も色んな機材で撮ってきましたが、いつも以上にろおじに見えますし、それ以外にも見えてきます。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

この場合は絞った方が良かったかもしれませんね。好み次第ですが。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

一段絞って、やり過ぎ感を抑えました。シャンゼリゼ通りではありません。所々外国の景色に喩えてきましたが、詳細をぼかすと類型的になり、既視感が増してくるのですよね。

PENTAX K-3 Mark III Monochrome, smc PENTAX-F Soft 85mm F2.8, Photo by TAK

アカデミー長編アニメ賞受賞、おめでとうございます。

( Photography & Text : TAK )

( 2024.03.19 )

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