PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX K-3 Mark III, smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDM, Photo by TAK

PENTAX K-3 Mark III / SHOOTING REPORT

待望のAPS-Cサイズセンサー搭載一眼レフカメラ、PENTAX K-3 Mark IIIをレポートいたします。先代のK-3 Mark II以来、約6年ぶりの新型登場です。その間カメラの勢力図は大きく変わりましたが、PENTAXが一眼レフを作り続けると発表したことは記憶に新しいところです。光学ファインダーで切り取られた世界の、現実の光の瑞々しさに感じ入る。仕上がりを想像しながら露出を決める。時にはマニュアルフォーカスでじっくりとピントを追い込んでいく。一眼レフならではの愉しみを改めて追求することを軸に、あらゆる要素を可能な限り磨き上げたのが、K-3 Mark IIIではないかと思います。詳しくご紹介する前に、ご挨拶代わりにリアルレゾリューションを発動してみました(画像クリックで等倍拡大します)。予想はしていましたが、もはや「シャープの向こう側」を見た思いがいたします。そして、同じシーンを通常撮影して更に驚きました(等倍拡大はこちら)。等倍表示で目を凝らして初めて、花びらの輪郭や模様の微細な描写の違いが分かるといった具合で、先代以上に両者の差が縮まっている印象です。それほど、画の素性が高いレベルにあるということですね。そして何よりも感動したのは、、、と続けていたらここで終わってしまいそうなので、ボディの変更点から確認してまいりましょう。

( Photography & Text : TAK )


LOOK & FEEL

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操作系の変更をいくつかご紹介します。まず、K-1/K-1 Mark IIやKPに搭載されているスマートファンクション用のダイヤルの位置に、「静止画/LV/動画切替ダイヤル」が新設されました。スマートファンクションの設定自体は、露出補正ボタンの右下に新たに設けられた「スマートファンクションボタン」(S.Fn)を押した後、更に右下の「スマートファンクションダイヤル」と後側の電子ダイヤルにて行います。モニターはタッチパネル操作に対応しており、メニュー表示も一新されています。ドット数も増えているので、見やすいですよ。

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「測距点レバー」の追加により、AF測距点の選択がより直感的かつ迅速にできるようになりました。すでにお気づきかと思いますが、モニターは先代同様、固定式を採用しています。サイズ拡大と小型軽量化を両立させた結果かもしれません。ちなみにこの部分は先代よりも引っ込んでいて、ボディもより薄型になっております。SDカードスロットはダブルスロットで、スロット1のみがUHS-IIに対応しています。その下には、ケーブルスイッチ端子があります。USB-Cケーブルを使っての充電が可能になったのも嬉しいポイントです(給電は不可能)。モバイルバッテリーにも対応しており、移動中も充電できるのが心強いですね。注目はアイカップの出っ張り具合です。出っ張っている分モニターへの「鼻圧」も減るので、テカテカも抑えられそうです。

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バッテリーグリップ「D-BG8」を装着した姿も凛々しいですね。縦位置撮影時のホールド性を向上させ、撮影可能枚数も大幅に増やせるだけでなく、重量級のレンズを装着した時の安定感の向上にも役立ちます。内部には「D-LI90」または「D-LI90P」電池を1個装填可能。予備のSDカードも収納できます。また、ボディ、D-BG8共に言えることですが、グリップの感触が素晴らしいのです。手の大きさを問わず、どなたにも合いそうな絶妙の形状で、しっかりと構えて脇を締めればホールディングもかなり安定するでしょう。測距点レバーなどボディと同じ操作パーツが同じ位置に配置されていますので、縦位置で構えても横位置時と全く同じ操作感覚でスムーズに撮影できます。ボディと同様、防塵防滴構造です。先代と同様、まさに「フィールドカメラ」そのもので、タフなミッションでも安心です。


SPEC OVERVIEW

K-3 Mark III K-3 Mark II
発売時期 2021年4月 2015年5月
センサー 裏面照射型CMOSセンサー
約2573万画素
表面照射型CMOSセンサー
約2435万画素
画像処理エンジン PRIME V+アクセラレーターユニットIIPRIME III
測距センサー TTL位相差検出、SAFOX13
101点測距
TTL位相差検出、SAFOX11
27点測距
ファインダー 視野率:100%、倍率:約1.05× 視野率:100%、倍率:約0.95×
画像モニター3.2型(アスペクト比3:2)、約162万ドット
タッチパネル
3.2型(アスペクト比3:2)、約103.7万ドット
動画性能 MPEG-4 AVC/H.264(MOV)
4K(3840x2160)、Full HD(1920x1080)
MPEG-4 AVC/H.264(MOV)
Full HD(1920×1080)
ISO感度 100〜1600000 100〜51200
手振れ補正 5.5段 4.5段
連写 〜約12コマ/秒 〜約8.3コマ/秒
外部インターフェース USB端子(USB Type-C)、ケーブルスイッチ端子、Xシンクロソケット、HDMI端子(タイプD)、マイク端子、ヘッドホン端子 USB3.0(micro B)、外部電源端子、ケーブルスイッチ端子、Xシンクロソケット、HDMI出力端子(タイプD)、ステレオマイク入力端子、ヘッドホン出力端子
電源 充電式リチウムイオンバッテリーD-LI90P
静止画撮影可能枚数:約800枚
再生時間:約250分
充電式リチウムイオンバッテリーD-LI90P
静止画撮影可能枚数:約720枚
再生時間:約370分
外形寸法 (幅)約134.5mm×(高さ)約103.5mm×(奥行き)約73.5mm (幅)約131.5mm×(高さ)102.5mm×(奥行き)77.5mm
質量 約820g(バッテリー、SDカードを含む) 約785g(バッテリー、SDカードを含む)

先代からの重要な変更点についてご紹介します。まず、CMOSセンサーが裏面照射型になりました。処理エンジンも2世代分進化していることも手伝って、画質が全方位で大きく向上しています。また、AF周りも一新され、より高速かつ正確な測距が可能になりました。測距点も101点と大幅に増加し、中央部25点にはより精度の高いクロスセンサーを採用しています。ファインダーの倍率が1.05倍とこれまた大幅に拡大したことも大歓迎ですが、新開発の高屈折率ガラスペンタプリズムによるものとのことで、開発陣の並々ならぬ意気込みを感じます。連続撮影はAF.S時で最大12コマ/秒を実現し、手ぶれ補正機構「SR II」の補正効果は5.5段にまで強化されています。動画機能も、4K/30pでの記録が可能になりました。まとめると、全方位で著しく進化し、別物となったということです。待った甲斐がありました。


PHOTO GALLERY

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR, Photo by TAK

国産初の一眼レフを送り出したペンタックスは、光学ファインダーの重要性を知り尽くしています。K-3 Mark IIIでは、新開発のペンタプリズムを採用し、1.05倍という驚異的な倍率を実現。その見え味を試すべく、まずはググッと寄ってマニュアルフォーカスで撮影を試みましたが、ピントの山がしっかりと判別できます。そんなに明るいわけでもないレンズの広角側でも、非常に明るくピントもよく見えます。このキレは、個人的にはK-1 Mark II以上かと思います。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR, Photo by TAK

小型軽量ボディは取り回しも良く、スナップも楽しくなります。この光に出会って、やはり光学ファインダーで良かったと思いました。朝日降り注ぐシーンがそのままの明るさでキラキラと見えて、何とも言えない喜びを感じました。そしていざシャッターを切ると、その感触が心にしみます。ダンピングが効いているというのか、ミラーやシャッターユニットの制御がきちんとなされているのでしょう。もちろん無振動というわけではありませんが、「揺れてる」という感じではなく、むしろ心地良く感じます。シャッター音も金属的なハイトーンではなく、どちらかと言えば中音域で角の取れたまろやかな音質です。時を断つのではなく、時の流れに寄り添うようなシャッターで、「写真、撮ってるな」と感じさせてくれます。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, Photo by TAK

AF、連写性能、高感度耐性を見るため、望遠ズームで飛行中のキンクロハジロの群れを狙いました。AF-Cモードで、AFエリアは「セレクトエリア拡大」の「M」です。群れは20羽ほどでしたが、フレーム内の位置や数に応じて測距点が移り変わり、距離を問わず迅速かつ正確に測距を続けてくれました。この高い追従性は、新開発の30.7万画素RGBIrセンサーと最新の動体予測アルゴリズムによるところが大きいと思われ、この点もK-1/K-1 Mark IIを凌駕している印象です。まあ、AFセンサーも世代が違うので、当然と言えば当然ですけどね。連写速度はAF.C時は11コマ/秒となりますが、一眼レフではトップクラスの速さです。ミラーの動きにもキレがあり、確実に瞬間を仕留められそうな安心感があります。感度はISO 1600ですが、胴体部の水滴までクッキリと捉えられています。APS-Cセンサー搭載機は長玉での動体撮影にも多用されるカメラですから、少しでもシャッター速度を稼ぐために自信を持って感度を上げていけるのは、素直に嬉しいです。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE, Photo by TAK

手ぶれ補正機構「SRII」は、5.5段の強力な補正効果を誇ります。初期設定のままで流し撮りにも対応しますが、ゆっくり動く被写体に対応したモードが新設されたとのことで、一定速度で走行する自転車を離れた位置から捉えてみました。結果はご覧の通りで、確かに効果てきめんですね。1/15秒でゆ〜っくり流していますので、背景は思ったよりシルキーにはなってくれませんでしたが(笑)。


PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR, Photo by TAK

  • PHOTO YODOBASHIファインシャープネス: 0
  • PHOTO YODOBASHIファインシャープネス: 2

こちらのカットでは、解像感を高める「ファインシャープネス」機能の検証を行いました。K-3 Mark IIIでは、従来の「ファインシャープネス」と「エクストラシャープネス」を統合した、新しい「ファインシャープネス」を採用しています。このカットは度合いを「2」として撮影したものですが、「0」としたカット(共に一部等倍拡大)と比べてみてください。質感が著しく向上していながらも、シャープさにもわざとらしさがありませんよね。リアルレゾリューションが使えない場面でも、これだけリアルなアウトプットが得られるなら文句の出ようもありません。暗部やボケの部分がうるさくならないことにも好感が持てますし、竹の艶の描き方もこれまた絶妙です。このファインシャープネス、RAWで撮っておけばカメラ内現像時に適用できますので、撮影後に解像感を上げたい際には重宝するでしょう。それにしても、この20-40mmのズームレンズ、良い仕事をしてくれます。低倍率の中に常用域を収めているのも効いているのでしょうが、往年の28-50mmを思い出しました。

PENTAX K-3 Mark III, smc PENTAX-DA★55mmF1.4 SDM, Photo by TAK

更に感度を上げてみましたが、ISO 6400でこれなら御の字でしょう。上限が上がったことで常用域も拡大しているので、持ち出せる時間帯も長くなります。ピントはAFとMF両方試しましたが、結果は同じでした。-4EVの低輝度限界はやはり伊達ではありません。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited, Photo by TAK

グリップの安定感、強力な手ぶれ補正、さらにはミラーショックを抑えた駆動システムのおかげで、スローシャッターも自信を持って切っていけます。


PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR, Photo by TAK

申し遅れましたが、今回はほとんどのカットにおいて、カスタムイメージを「リバーサルフィルム」としています。ポジフィルムで撮ったような深みのある発色や絶妙なコントラストを気に入っていて、こういう空の色が一発で出てくれるのが嬉しいのです。解像も相変わらずキレッキレで、ヌケもずば抜けていますが、ローパスフィルターレス仕様と巧みな画処理が生きているのでしょう。ローパスフィルターといえば、ローパスセレクター機能も試すべく、MA-1ジャケットの生地(ツイル素材)を接写して比較しております。写真自体は実に詰まらないので割愛しますが、結果はどのカットもモアレが認められず、差が分かりませんでした。このあたりは、画素ピッチが小さいこともプラスに作用しているのかもしれません。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR, Photo by TAK

こちらのシーンも当初は「リバーサルフィルム」を適用していたのですが、頭の中での最終イメージはこのカットでした。晴天下の真昼間、元の画はコントラストが付きすぎて硬い印象になってしまいました。そこで帰宅後、カメラ内現像にてカスタムイメージの「ほのか」を選択、それをベースにコントラストなどを微調整し、自分のイメージに近づけていきました。K-3 Mark IIIには、「ほのか」や「リバーサルフィルム」を含む、全13種類の魅力的なカスタムイメージが搭載されています。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited, Photo by TAK

こちらはカスタムイメージではなく、多彩なエフェクト効果が得られるデジタルフィルターを適用しています。選んだフィルターは「粒状感モノクローム」で、効き目の度合いは「2」としていますが、なかなか良い雰囲気ですね。デジタルフィルターは他にも「トイカメラ」「ネガポジ反転」など11種類が用意されています。あれこれ試して、新しい表現に挑戦してみてはいかがでしょうか。

PENTAX K-3 Mark III, HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited, Photo by TAK

最後に、リアルレゾリューションには動体補正にも対応したモードがあるとのことで、試してみました。確かに細かなシルエットや波紋の様子も自然で、このカットだけを見せられたら合成とは気がつかないかもしれません。被写体や動きの速さやパターンなどの要素が絡んでくるのですから、この結果には脱帽ですね。ただ、撮影時は4コマ連続撮影はもちろん、合成処理のための時間(2-3秒くらいだったと思います)がかかるので、風景や建築物などをじっくり撮る時に最も使いたくなる機能なのかなと感じます。そして、元々の画が極めてシャープであることも、改めてお伝えしておきます。


PHOTO YODOBASHI

伝統に最新を注入した、とにかく気持ちの良い一眼レフ。

何よりも心を動かされたのは、ファインダーです。これだけ明るく見やすいと、まずマニュアルフォーカスが楽しくなりますし、AF時でも覗くだけで良い気持ちになります。そのAFも当然のことながら進化していまして、検出力が向上し、動きものも高速かつ正確に追従してくれます。連写速度も十分以上ですが、これはシャッター機構の出来の良さによるところも大きいでしょうね。また、作例にはありませんが、ポスターにカメラを向けたところ、顔や瞳もしっかり検出してくれました。主にミラーレスで進化した技術が一眼レフにも取り入れられているところが興味深いのですが、「伝統に最新を注入」と言った理由はまさにこれです。確かに姿形は一眼レフであり、ファインダーなどトラディショナルな部分を真面目に作り込んでいます。しかし、ミラーレスに比べて古いなどということは全くなく、中身は最新の技術が満載され、一眼レフとしてかつて無いほどに気持ちよく使えるのです。実は、ミラーレス以外使ったことがないユーザーにこそ、このカメラをオススメしたいです。「今時の感覚」のまま撮影できますし、ファインダーを覗いていただければ、理屈抜きに感動されると思います。一眼レフならではの作法もありますが、マスターすることで撮影技術も向上するでしょう。一眼レフ道を貫いている方、ミラーレスと併用している方は、そのままお心に従われるのが吉かと存じます。今こそ、一眼レフで撮りこむ悦びを、味わってみませんか?

( 2021.04.16 )

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光学ファインダーの最新機で、心のままにシャッターを切っていく。これを粋と言わずして、何と言うのでしょう。

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こちらはシルバー。外見はスタイリッシュで中身は高性能。これまた乙なものでございます。

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バッテリーグリップ付きのキットですが、何と予備電池と、本革製の限定モデル専用ストラップまで付いて来ちゃいます。

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こちらはシルバー版。予備電池を買うくらいなら、グリップも付けちゃった方が長い目で見ればお得かも、という思考法もございます。

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予備電池です。発売は2012年。それだけ、一眼レフは電力消費が少ないのです。

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ズームとは思えぬほど、描写に色気のあるレンズ。ブラックボディにあえてシルバーを合わせるのも、洒落てますね。

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