PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

RICOH GR IIIx, Photo by TA

RICOH GR IIIx / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2

シリーズとしては初となるフルサイズ換算40mm相当の画角を持つ「GR IIIx」がリリースされました。小さなボディに高性能な単焦点レンズとAPS-Cの大型センサーを備えた「スナップシューターのためのカメラ」として、1996年の「GR1」の誕生以来変わらぬコンセプトと変わらぬスタイリングを持ちつづけているGR。ポケットに収まってしまうほどのコンパクトなカメラですが、写りが良く表現力に長け、テンポの良い撮影ができるとあって唯一無二とも言える存在感を放っています。根強いファンも多く、世代別に数台所有しているなんていうこともよくある話でしょう。2019年に登場した「GR III」との違いは、フルサイズ換算で28mm相当から40mm相当となったレンズの画角のみ。外観や操作性は同一です。シリーズ初となる40mm相当の画角を備えたことで、今後は画角違いで2台を持ち歩く感じになっていくのかもしれませんね。今までよりも日常寄りのスナップシューターと想像しますが、はたしてどんな趣なのか。さまざまな場所に持ち出して撮影してきましたのでご覧ください。

( Photography & Text : TA )


LOOK & FEEL

PHOTO YODOBASHI

GR IIIと比較すると厚み+2mm・重量+5gの違いはありますが、フォルムや手にした感覚もそのまま。レンズ構成は5群7枚(非球面レンズ2枚)で、フルサイズ換算40mm相当の画角を備えているところが他のGRとの最大の違いになります。できるだけデジタル補正に頼らず光学系で描写性能を追求している点などもこれまで通りです。AF時の瞳検出やプログラムラインに深度優先(深い)、他にもカメラ内RAW現像やオートリサイズ等の新機能が追加されました。(GR IIIはファームウェアのVer1.5へのアップデートで対応)

  • PHOTO YODOBASHI背面タッチパネルでスマートフォンのような直感的な操作が可能。必要な設定の呼び出しもシンプルで、それぞれの項目に素早くアクセスできます。
  • PHOTO YODOBASHIグリップ側面の上下にはストラップホールを装備しており、カメラを縦吊りすることも可能。右手だけで完結する洗練された操作体系が備わっています。
  • PHOTO YODOBASHI片手でしっかりとホールディングできる大きめのグリップ、目立ちすぎない精悍で引き締まったブラックボディと、ブレないコンセプトが魅力。

OVERVIEW

RICOH GR IIIxRICOH GR III
発売時期2021年10月2019年03月
レンズ26.1mm F2.8 (35mmフルサイズ換算約40mm相当)18.3mm F2.8(35mmフルサイズ換算約28mm相当)
レンズ構成5群7枚(内、非球面レンズ2枚)4群6枚(内、非球面レンズ2枚)
センサーAPS-Cフォーマット 約2424万画素
ISO感度ISO 100〜102400
手ブレ補正センサーシフト方式(SR)、3軸補正
ローパスフィルターなし(SRユニットによるモアレ低減機能:オフ、弱、強)
露出モードP/A/S/M
測光モード分割測光、中央重点測光、スポット測光、ハイライト重点測光
シャッターレンズシャッター(1/4000〜30秒、タイム、バルブ)
オートフォーカスハイブリッドAF(像面位相差AF、コントラストAF)
撮影距離範囲約0.2m〜∞(マクロモード時:約0.12〜0.24m)約0.1m〜∞(マクロモード時:約0.06〜0.12m)
NDフィルター内蔵(2段相当)
自動水平補正SRオン時:最大1.0度まで補正可能、SRオフ時:最大1.5度まで補正可能
動画フルHD(16:9) 24p、30p、60p
背面モニター3.0型TFT、約103.7万ドット
外部インターフェイスUSB-C、ホットシュー、レンズアダプターピン
無線機能IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.2 LE
バッテリーDB-110 リチウムイオンバッテリー
撮影枚数約200枚
サイズW109.4 × H61.9 × D35.2mmW109.4 × H61.9 × D33.2mm
重量262g(バッテリー、SDカード含む)257g(バッテリー、SDカード含む)

PHOTO GALLERY

RICOH GR IIIx, Photo by TA

AFは必要にして十分の速さと確度で被写体を捉えます。おおよそのシーンでは、液晶モニターのタッチやスライド操作で速やかにAFポイントを移動、そして撮影という動きで十分な結果を得られます。このようなシーンでは、液晶モニターをタッチしてのフルプレススナップ撮影機能がより快適で確実でした。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

シャドーの描き方に相変わらず色気があり、ラフに撮っても、それをひとつの表現であるかのように見せてくれる描写力はあっぱれの一言。画面全域にわたって曖昧さのない確かな解像力と、歪曲を感じさせず真っ直ぐに伸びる直線は、硬質な都会の表現にもうってつけです。勝手の良い画角で被写体に対してまっすぐに対峙するのはもちろん、カジュアルに撮影してもバシッと画が決まります。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

GRを手にしていると、ひたすらに光と影を追い求めたりとなにかと遊び心を掻き立てられます。ファインダーレスでカジュアルに撮影したカットが意外にも面白かったりと、写真表現の新しい一面を見出せるところもGRの魅力でしょう。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

少しややこしいボケの題材を持ってきましたが、いかがでしょう。ピント面をシャープに描きながらボケは実になだらかで雑味を感じません。輝度差のあるシーンはコントラストもつきますが、階調もよくまとまっています。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

こちらに向かって歩いてくる猫の瞳や髭の辺りをご覧ください。瞳の部分を澱みなくクリアーに描き、ピント面をシャープに浮き立たせつつ毛並みの柔らかさを再現しています。また、咄嗟の撮影でもしっかりと被写体を捉えてくれました。電源をオンにしてからの起動も速く、カメラが身体の一部になったような感覚で撮影に挑めるところは、フィルム時代のGRシリーズから変わらず続く伝統です。


RICOH GR IIIx, Photo by TA

横に長く伸びた陽射しが全てを黄金色に染める美しい時間。GR IIIxをポケットにしのばせていると近くの公園の散策も楽しいのなんの。カメラを振る角度によってはフレアが出ることもありますが、それも見せたい部分をシャープに描きながら画に柔らかさがプラスされるといった具合。これがまた良い塩梅なのです。40mmはフレームの収まりも良く、最強のお散歩カメラだと思います。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

描かれる線が極めて緻密で、ハイライトの描写に透明感すら感じます。また丸みを帯びた前ボケが美しく騒がしくなることがありません。写りに定評のあるGRシリーズとはいえ、これだけコンパクトなカメラです。さすがにレンズ交換式カメラと同じような雰囲気は得られないだろうと思い込んでいるフシがあったのですが実際に使うと、そんなことはあっさり払拭されました。こういったややこしい被写体に対してもどんどん踏み込んでいくことができるのですから。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

マクロモードでは被写体まで12cmとかなり寄りきることができます。GR IIIはハイライト側にも若干墨がのるような燻銀の渋味を感じていましたが、IIIxはさらに抜けの良さが増した分発色も良く、全体的にニュートラルな描写に近づいた印象。目にしている情景をそのまま切り取ってくれるナチュラルさがあるように思います。日常を捉えるのに最適なIIIxの画角を考えると、さもありなんと納得の描写です。


RICOH GR IIIx, Photo by TA

からりとした秋晴れのイメージから一転して小雨がぱらつく肌寒い朝でした。しっとり寒々とした重たい空気を写し込むのもお手のもの。隅々まで破綻のない写りで、それだけにとどまらず、瓦や枝、葉といった一つ一つの細かい物の形状がきちんと立体として描かれていることに驚かされます。それぞれの質感の違いもよく描き分けられていると思います。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

像面の平坦性が高くキレのある写り。きちんと写ってくれるからこそ、気軽に振り回せるというものです。

RICOH GR IIIx, Photo by TA

シャッタースピードは1/15秒。手ぶれ補正もよく効いて原寸で見ても確実に画は止まっています。これが流れのある水辺だったらどうでしょう。手持ちでも止めたり流したりと自由自在です。


RICOH GR IIIx, Photo by TA

カウンターでシェフが一品ずつ料理をサーブしてくれるちょっとお洒落なランチをいただきました。こういったシチュエーションで料理を撮るのは厳しいものがありますが、GR IIIxなら座ったままサッと鞄から取り出せてスマートな撮影が可能です。マクロモードがあるので料理から距離を取る必要もなく、撮れた画を見てニンマリ。40mmの画角にF2.8は飯撮りになんとも絶妙なスペックであり、自然なパースのつき方で物の形の歪みに気を使わずにいられます。そして前述した通り、ハイライトに透明感があり発色も良いので最強の飯撮りカメラかと。

  • RICOH GR IIIx, Photo by TA
  • RICOH GR IIIx, Photo by TA


RICOH GR IIIx, Photo by TA

ボケの中に幾重にも重なる山の稜線や輪郭をゆるやかに残しながら立体感を描いていく描写は、この画角ならではのもの。こんなふうに日常のワンシーンを切り取ってくれるカメラをいつでも持ち歩けたら最高ですね。

RICOH GR IIIx, Photo by TA


  • RICOH GR IIIx, Photo by TA[GR IIIxにて撮影] 玉ねぎの大きさが同じくらいになるように、おおよそ同じようなフレーミングになるように撮影しています。バットの形状や木板を見比べるとわかりやすいかと思われますが、こちらはパースのつき方が穏やか。形の歪みを気にすることなく撮影が可能です。
  • RICOH GR III, Photo by TA[GR IIIにて撮影] GR IIIxに比べるとパースがついているのがわかります。物の形を歪ませたくない時はGR IIIx。パースペクティブを利用してダイナミックにというシーンではGR III。やはりこれは2台必要ということなのでしょう。GRなら2台持ち歩いても嵩張りませんね。

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「あるがまま」をひとつの表現として切り出すスナップシューター

24MPのセンサーにセンサーシフト式の手ぶれ補正機構「SR」が搭載され、加えて映像エンジンは新開発の「GR ENGINE 6」へとアップデート。また光学系もより現代的なものへ新設計されるなど、ほぼ全面的といっていい進化・深化を遂げ先行したGR III。それをベースに今回登場したGR IIIxは、にフルサイズ換算で40mm相当の高精細レンズを搭載したモデル。発表当時は「いったい28mm以外のGRはどんな感じなのだろう」と想像していましたが、実際に手にして撮影を進めていると良い意味でいろんな考えが払拭されました。標準の画角はなにかと勝手が良く、画作りが若干ニュートラルになった印象で振れ幅が増えたような気がします。日々の生活を送る中で、あるがままを記録しながらもそれをひとつの表現であるかのように切り取り、持ち出した先が街なら最強のスナップシューターとして、それが旅先なら出会ったさまざまな光景を美しく記録する。「いつでもどこへでも」という言葉がしっくり。撮り手に寄り添い、持ち歩けばさぞ楽しかろうと思わせる人たらしなカメラです。こんなカメラをいつも持ち歩けたら最高でしょう。交換レンズを持ち歩くより嵩張らないポケットサイズですから、まだGRの経験がないという方にもお試しいただきたい一台です。

( 2021.11.10 )

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「あるがまま」をひとつの表現として描くスナップシューター。精悍で引き締まったブラックボディは見目麗しい佇まい。ポケットサイズの精鋭は唯一無二の相棒に。

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画角違いのGR III。パースペクティブを利用してダイナミックにというシーンにはGR III。GRなら2台持ち歩いても嵩張りません。

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大型センサーにライブビュー、そして手ぶれ補正機構など、バッテリーには少々厳しいGR。旅先などでは予備のバッテリーが必要になってくるでしょう。GR IIIと兼用のバッテリーです。

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チャージャーもあると便利です。お忘れなく。

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IIIx専用のテレコンバーションレンズが用意されています。クロップ機能との組み合わせで、フルサイズ換算75mm相当と2段クロップで107mm相当の画角での撮影が可能になります。

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テレコンバーションレンズを装着する際に必要となるアダプターです。こちらもお忘れなく。

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バッグやポケットに入れる際などにGRを保護するGR IIIと兼用のレザーケース。しなやかな手触りで小さくたためます。

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こちらもGR IIIと兼用のレザー製ケース。ベルトループが装備され、ホルスター的な使い方にも向いたタイプになります。

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