SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマからフルサイズミラーレスカメラ向けに登場しました「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」の実写レビューをお届けします。昨年秋のphotokina 2018にてシグマが参加を表明しました「Lマウントアライアンス」に向けたライカLマウントレンズの第一弾。フルサイズボディではこの秋登場予定のSIGMA fpのほか、LEICA SLやPanasonic LUMIX S1RなどLマウントのボディでお使いいただけます。今回はLUMIX S1との組み合わせで撮影をしました。

本レンズはContenporaryラインに属するレンズとして、コンパクトさと単焦点レンズならではの写りのよさを両立させたものであり、加えてデザインにも凝った趣味性の高い一本となります。フードを含め総金属製の外装は質感が非常に高く、標準域のレンズとしての使い勝手のよさだけでなく、いつでもカメラにマウントしておきたくなる、そんな魅力的な一本に仕上がっている印象です。ステッピングモーターを採用し高速かつ静粛なAFは他のシグマレンズ同様。レンズ構成は7群8枚、絞り羽根は7枚の円形絞りとなっており、開放F2.8とはいえフルサイズフォーマットらしい大きなボケも期待できそうです。それでは作例をご覧ください。

( Photography : Z II / Text : Z II & Naz )

これくらい引いて撮影するとボケは控えめな印象ですが、さすがシャープさが自慢のシグマレンズ。ピントのキレは十分に感じます。また柱や剥がれかけたステッカーの質感の描写が素晴らしく、かっちりと素直に写る印象です。

爽やかな夏の朝陽に照らされたインパチェンスを俯瞰のポジションから狙いました。白い花にフォーカスして、白トビしないギリギリのところへ露出を切り詰めています。しっとりとした葉や花弁の質感だけでなく、夏の朝ならではの硬い光も上手に再現できています。

前ボケと後ボケの具合を見るにはうってつけの被写体ですね。とろけるようなぼけではなく、芯が残った控えめな印象です。ボケの好みは人それぞれですし、レンズの個性でもあります。いわばこのボケ味を描く絵筆だと思えば、一本持っていてもよいのかもしれません。

外から射し込む照り返しの光で店内は柔らかな雰囲気となっていました。フォーカスを合わせた蜂蜜のボトルの描写はもちろん、その周辺にある椅子の質感やテーブルの艶感を見事に捉えてくれています。適度なコントラストを保ちながらも、黒潰れしないシャドウ部や壁面のトーンの再現もいいですね。

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このレンズが持つ個性的なボケ味は、こういったジリジリとした陽射しや夏の空気を表現するシーンでは実にいい効果を発揮してくれますね。遠くの人影が蜃気楼のように写ることで、気温や湿度の高さまでをもリアルに感じさせてくれます。

グッと寄ってポートレートに使っても十分な写りを見せてくれます。夕刻の空のグラデーションや首筋の立体感も申し分ないです。

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誰にでもおすすめしたい、でも通好みな一本。

本レンズを初めて手にした時に、「え？どうしちゃったの？」というのが正直な印象でした。これまでシグマは、Artラインを代表とする究極の写りを追求した、まるで水晶玉のようにずっしりと重たい「ど直球なレンズ」をたて続けに見せてきました。そこへ突然チェンジアップを放ったかのような小さくて軽いレンズの登場に前のめりに驚かされたのです。今回ミラーレスカメラでも比較的大きなボディであるLUMIX S1にマウントしてみましたが、最大径64mm・全長46.2mmとコンパクト、また215gとたいへん軽量なため、ボディにマウントしてもレンズ単体の重量を感じないといえるほどでした。

昨今のシグマ製のレンズと異なる本レンズの外観は、径の異なる円筒を組み合わせた鏡胴に印象的なローレット加工が施されたダイヤルやフードをアクセントとしており、シンプルながらもメカっぽさを感じさせるデザインが秀逸です。しかも、それぞれのローレットは異なる仕上げが施され、その違いを指先で感じ取れるようになっています。ねじ1本から自社生産を行っているシグマらしい精密な金属加工といえますよね。そのダイヤルのひとつに割り当てられた1/3ステップの絞りリングのクリック感も実に良好。メーカーアナウンスでは、感触にまで拘って作り込んだとのこと。

50mmレンズより少しだけ広い画角に、F2.8と開放値を抑えたレンズを搭載し、開放から十分な性能を持ちながらも軽量コンパクトにまとめた「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」。写りもシグマの意志を受け継いだ単焦点らしい安定感あるものでした。上級者の方には、ご自身のレンズラインナップのスパイスとして選んでいただきたい一本です。一方で、これからミラーレスカメラを楽しんでいこうという方にとっても、キットズームの次に買う最初の単焦点レンズとして、写りがよく携行性に優れ、価格も抑えられているなど、カメラをいつでも持ち出しやすくしてくれる本レンズはぜひともおすすめしたい一本です。

( 2019.08.22 )