シグマ プレスイベントレポート気になる「Lマウントアライアンス」に対する対応は?
ライカ、パナソニック、シグマの3社が「Lマウントアライアンス」と名付けられた戦略的協業をするという発表があった夜。今度は会場をケルン市内のイベントホールに移してシグマのプレスイベントが開催されました。プレスカンファレンスを行わなかったシグマの考えを知るにはここしかないわけで、会場で山木社長のスピーチが始まるのをじっと待ちます。
プレスイベントとは言っても、シグマのディーラーやディストリビューターなども招待して開催されるもの。シグマの新製品を紹介する催しとして、フォトキナではすでに恒例となっているイベントでもあるのです。2年前はシネレンズ参入の発表が行われて驚かされましたが、今年はどんな話が飛び出るのか、山木社長のスピーチはディーラーにとっても注目せざるを得ません。
» シグマ・プレスリリース:ライカ、パナソニック、シグマの三社による戦略的協業「Lマウントアライアンス」
いよいよ山木社長のスピーチが始まりました。冒頭、「フルサイズミラーレスが注目を集めるフォトキナですが、当社でも新製品の発表があります」と切り出し、最初に発表されたのは、この会場で来場者に振る舞われていたオリジナルの「シグマビール」でした。山木社長、相変わらずユーモアのセンスが超一流です。これで一気に会場の雰囲気が和んだのは言うまでもありません。シグマのイベントはいつもこんな感じです。
と、一笑い取ったところで真面目な話に。製品に先立ってまず披露されたのは、会津工場の敷地内に新設された、マグネシウム専用の加工棟。すでに稼働を開始しているとのこと。レンズ/ボディの軽量化と堅牢性の両立に不可欠なマグネシウム部品ですが、今までは外注による加工でした。これを内製化したことで製品開発のスピードとフレキシビリティが向上し、同時に高品質・高精度な部品を安価に調達することが可能になるなど、ユーザーのメリットも大きいことを強調されていました。
そして、今後のシグマのアクションについて、具体的な6点のポイントが提示されました。
1つ目はフルサイズのFoveonセンサーを搭載した、Lマウントのカメラを2019年に出すこと。つまり、あのFoveonセンサーとライカのLレンズの組み合わせが、マウントアダプターを使うことなく、カメラとレンズの性能をフルに引き出した状態で使えるようになるのです。そんな夢のようなことが、すでに実現に向かって動き始めています。
2つ目は、SAマウントの新しいカメラは今後出さないこと。今後シグマが開発する全てのレンズ交換式カメラはLマウントシステムを採用することになり、SAマウントカメラの新規開発は行わないということです。乱暴なようにも聞こえますが、フルサイズミラーレスに対する本気度が示されたと感じました。
3つ目は、SAマウントのレンズ開発は今後も継続していくということ。SAマウントのカメラ開発は止めるものの、これまでのSAマウントユーザーを切り捨てることはしない、一緒に次世代のカメラを作っていくということの表明です。「その言葉を聞きたかったんだよ!」というユーザーもたくさんいらっしゃると思います。大丈夫ですよ。さらに次のポイント。
また4つ目として、Lマウントボディに対応するマウントアダプターとして、シグマレンズ対応のSA--Lマウントアダプター、キヤノンEFレンズ対応のEF--Lマウントアダプターを現在開発中で、2019年に出すことを明らかにしました。安心してください。お持ちの「レンズという資産」は、これからもお役に立ちます。
さらに5つ目が、Lマウントのレンズを2019年から出すことです。マグネシウムの加工を自社で行うことによる効果が早くも出始めているのでしょうか。早ければ来春開催のCP+、あるいはフォトキナでシグマのLマウントレンズがお目見えするかもしれませんね。
そして最後に、従来のレンズをLマウントレンズに変換するマウントコンバージョンサービスを、2019年から開始することも明らかにしました。マウント変更のサービス自体は以前から行っていますし、現在、フランジバックの短いソニーのEマウントを数多くラインナップしているシグマですから、難しいことではないのでしょう。
さらにシグマは、7本の新レンズを発表しました。
F1.4 DC DNシリーズに、クラス最小となる「SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary」が加わります。35mm版換算でおよそ85mm。小型軽量かつ高画質を実現したAPS-C用中望遠レンズです。高い光学性能とコンパクトネスを両立させたContemporaryラインですが、これで広角の16mm F1.4、標準の30mm F1.4に続く3本目の単焦点レンズとなります。全長59.5mm、レンズ径88.5mm、重さ280gと非常にコンパクト。マイクロフォーサーズ、ソニーEマウント対応で、日本での発売日と価格は未定ですが、まず欧州で2018年11月に429ユーロで発売することが発表されました。
続いて発表されたのが、Artライン単焦点レンズの2本。まず「SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art」は、シネ起点で開発をスタートさせた初めてのレンズとのこと。ハイエンドのシネレンズには、Artラインのコンセプトである「光学性能最優先」の設計が求められることから、映像制作用プロフェッショナル機材という新たな視点で開発されたもの。シグマ、キヤノンEF、ニコンF、ソニーEマウント用がラインナップされる予定です。40mm単焦点レンズとは思えないほどの大きさのレンズですが、スチル用レンズとしても大いに期待できると言っていいでしょう。2018年11月の発売を目指しているとのこと(価格未定)。
そして「28mm F1.4 DG HSM | Art」は、これまでのArt F1.4単焦点レンズのノウハウを基盤に、最新の設計と素材、加工技術を惜しみなく投入して開発されたレンズ。広角レンズを代表する画角をArtラインのクオリティで実現してほしいという要望に応えたもので、シグマ、キヤノンEF、ニコンF、ソニーEマウント用の各マウントが用意され、発売時期は2019年1月。価格は未定。Artラインシリーズのレンズらしく、ズシリとした重量感がありますが、開放の描写やボケはどんなものなのか、気になるところですね。
続いてSportsライン。「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM | Sports」は、標準60mm〜超望遠の600mmまでの10倍の高倍率ズームレンズ。19群25枚のレンズ構成により、150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sportsとほぼ同等の高画質を実現していることが紹介されました。また、最新のアルゴリズムを採用した「Intelligent OS」を搭載し、4段分の手ブレ補正を達成。軽量化や剛性を考えた素材が効果的に配置されており、高い防塵・防滴性能を備えたレンズであることが紹介されました。
そしてこのレンズ、機動性を高めるために直進ズームが可能になっています。高倍率ズームですから、ズーミングの回転角が小さいと微妙なズーミングが難しく、大きいと一気に回せる範囲が狭くなってしまい、結果的にシャッターチャンスを逃す可能性があります。また直進ズーミングをしやすいように、ズーム先端部には指がかかりやすいくぼみが設けられています。シグマ、キヤノンEF用は10月12日発売、ニコンF用は10月26日発売。いずれも価格は250,000円(税別)です。
「SIGMA 70-200mm F2,8 DG OS HSM | Sports」は, 報道、スポーツ、風景、ポートレートなどオールラウンドに使えるF2.8通しのズームレンズ。光学性能、堅牢性、機動力の面でプロの要求に応えるべく開発された究極の70-200mm F2.8であると自信を滲ませました。
このレンズは10枚の特殊低分散ガラスを採用していて、思った以上にコンパクト。シグマ用、キヤノンEF用、ニコンF用が登場予定(価格未定)。F2.8通しのズームレンズはこれに加えて14-24mm、24-70mm、120-300mm、そして200-500mmと5本が揃うことになり、特に一番右にあるレンズを買うには、もっとたくさんお金を貯めなくてはいけないだろうというジョークで会場を和ませていました。
フォトキナに先立って、9月にオランダ・アムステルダムで開催されたIBC 2018で発表された3本のシネレンズも実際に手にすることができました。大型のイメージセンサーを搭載するデジタルシネマカメラにも対応するレンズですから、今後のミラーレスカメラへの応用なども大いに期待されます。
最後に、シグマのアイデンティティとも言える「Made in Aizu」について、新しく作られた会津工場を紹介するショートムービーが上映されてスピーチが締めくくられました。シグマの、まさに「ものづくり」を象徴した映像に、最後は惜しみない拍手が贈られていました。単に元気なだけではなく、「何をしでかすかわからない」。そんな予想不可能なところがシグマの魅力。ドキドキしながら待ちましょう。
( 2018.09.29 )