PHOTO YODOBASHI

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どうしちゃったんでしょうかこれは。最初にebayの小さなサムネイルで見た瞬間からヤバい感じがビンビン伝わってきて、何も考えずにソッコーで決済しました。このジャケットについて、ebayの商品説明に何か書いてあったのかもしれませんが、もはや読む必要などありませんでした。送られてきた実物を確認して改めて分かったのは、それが真っ白なブランクのジャケットに、太めのマジックを使ってフリーハンドで描いてあったこと。

そもそもどうして真っ白なジャケットなのか。まず考えられるのは、これがサンプル盤である可能性。実際の流通に乗せる前に、音楽評論家などに配布するために少量プレスしたものをサンプル盤といいまして、中古レコード屋でもたまに見かけます。しかし、もしそうだとしたらこのジャケットは1958年のものということになりますが・・・うーん、さすがにそこまで古くはない。ヤレ具合、シミのつき方、虫食いの程度から判断して、これは1980年代前半、せいぜい1970年代後半です。そもそも1950年代に「サンプル盤を配布する」という習慣があったかどうか。ではジャケットはどこに行ったのでしょう。ボロボロになって捨ててしまったのか? あるいはお皿はターンテーブルに載せたままなのを忘れて売り払ってしまったのか? いずれにせよ、オリジナルのジャケットは失われてお皿だけになったところに、それじゃあ保管がしづらいというのでこの白いジャケットが当てがわれたわけです。

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この絵を描いたのはどんな人だったのでしょう。私のイメージはいかにもフロリダに居そうな、髭面の大男。地元のハンバーガーショップのノベルティTシャツを着ていて、手にはいつもバドワイザーの缶。そんな感じ。その彼がある日、何を思ったかバドワイザーをマジックに持ち替え、この白いジャケットと対峙したのです。緊迫した空気の中、いささかのバランスの悪さはありつつも、なんとかタイトルとアーチスト名を書き入れました。そして最後に、画竜点睛というべきか、落款代わりというべきか、とにかく裸の女性の後ろ姿を描き加え、この偉大な仕事を完成させたのです。