PHOTO YODOBASHI

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FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

FUJIFILM XF56mmF1.2 R WR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

先代にあたるモデルは「XF56mmF1.2 R」。高画素センサーに対応すべく1年半ほど前にリニューアルされた「XF56mmF1.2 R WR」のレビューをお届けします。大変お待たせしてしまいすみません。先代モデルは中望遠と標準レンズのいいとこ取りの焦点距離に加え、大口径F1.2がもたらす大きなボケが楽しめるとあって、人気を博していたのも記憶に新しいところです。そのDNAを受け継ぎつつ、本レンズでは防塵・防滴・マイナス10度の耐低温構造を採用。さらには、最短撮影距離が約20cmも縮められセンサー面から50cmまで寄りきれるようになりました。解像力に磨きをかけるだけに止まらず、使い勝手の良さにも注力したあたりはさすが富士フイルムさん。人気モデルをさらに超えようとする意気込みがひしひしと伝わってきます。フルサイズ換算で85mm相当になる中望遠単焦点レンズ。絞り開放からのボケを活かしたポートレートからスナップ撮影はもちろんのこと、マクロ的なアプローチもできそうではありませんか。また、光量の少ない屋内や夕景、夜景も楽しめるかと。そんなことを頭の片隅に置きつつ試写してきましたので、第二世代の56mmF1.2の写りをご覧いただきましょう。

( Photography & Text : KIMURAX )

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

絞り開放で眠たげな瞳にフォーカスしましたが、すっきりとシャープに描き出しています。それに対してボケはピントピークから至って滑らかに溶けていくではありませんか。撮影時は背景をハイキーぎみに飛ばすと雰囲気が出るかなと、露出をシャドーエリアに合わせました。ボケ味が自然だからこそ、このような選択ができたわけですが。ピントのキレとボケの流麗さが見事に相まった描写の妙により、ガラス越しの淡い光に心地よく包まれている様子が伝わります。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

主役ともう少し距離をとって、ボケ味を見ていきましょう。強めの夕陽が差し込んでいることもありコントラストが高めな背景です。落ち葉の辺りが多少“ざわざわ” “ぐるぐる”してもおかしくないところですが、煌めきをほんのりと残しつつ実に滑らかに馴染んでいます。明るいレンズだからといって、大きくボケればいいってものでもないですし、しっかりと量感を伴っているので写真的表現とは言えリアリティがあるのでしょう。故にそこから立ち上がる主役もよりいっそう際立つというものです。それにしても絞り開放でのピントの面のキレには目を見張るものがあります。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

高画素機に対応すべく解像力に磨きをかけたということで、シャープな像は現代レンズらしい緻密さがあります。かといって無粋にカリカリするようなことはありません。ありのままを、ありのままに切り取ってくれるという印象。どんな夢をみているのか、ちょっぴり気になる無垢な寝顔です。それにしても開放からよく写るレンズなので、絞りは被写界深度の調整に使うスタンスでよろしいかと。ご覧のとおり前ボケを入れてみましたが、いい雰囲気を醸し出してくれました。


FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

明るいレンズは、屋内外問わず一日中撮影を楽しめるのがいいですね。夕刻、濡れそぼったガラス面をフレームしましたが、水滴の一滴一滴まで克明に描き出されています。それぞれ小さな存在ですが、ちゃんと立体感を伴い表情をキャプチャしているあたりはさすがです。開放では周辺に行くにつれて僅かに口径食が見られますが、絞る余裕のある大口径レンズ。気になる場合は、多少絞って形を整えてもいいでしょう。背景のボケ具合を吟味しながら。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

金箔仕立ての獅子頭を乗せた輦台(れんだい)神輿。金属の質感描写を確かめようと錺(かざり)金具にフォーカスしました。彫金細工のディテールから金板の僅かな歪みまで実にリアル。色をきちんと描き分けながら、曖昧になることなく見事に描き切っています。肉眼をはるかに超えた質感の再現とでも申しましょうか。圧倒的な情報量を感じずにはいられません。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

フルサイズ換算で85mm相当になる画角は、周囲の情報量を適度に入れながら一部分を強調するのに長けているように思います。そういった中望遠スナップの楽しさを知っているXマウントユーザーの方々は、前モデルをガシガシ使い込んできたことでしょう。もちろん先鋭度の増した本レンズも同様に、一日中スナップ撮影に興じることができます。


FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

本レンズの絞り羽根は、Xシリーズで初めての11枚となりました。つまり絞り込んでいっても円形に近い形を保ってくれるのです。こちらのカットは2段ちょい絞ったF2.8での撮影ですが、玉ボケの形も綺麗に整っているのがわかります。下にはF4での撮影カットを掲載しましたが、まだまだ円形を保っていますね。それにしても光をよく捉えてくれるレンズです。

  • PHOTO YODOBASHI(F1.2)主役を立たせるなら、開放でいきたくなるというものです。
  • PHOTO YODOBASHI(F4)開放から3段程絞って。11枚羽根の円形絞りは伊達ではありません。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX

今回のリニューアルに伴い最短撮影距離は約20cm短縮され、50cmとかなり寄れるようになりました。ポートレートレンズと割り切ってしまえばそこまで寄れなくても何ら不自由はありませんでしたがね。本レンズでは切り取ることができるシーンがさらに広がったということです。テーブルフォトにも重宝するでしょう。肝心な写りですが、絞り開放での近接時において現れてきそうな収差の類もよく抑えられているという印象です。

FUJIFILM X-T5, XF56mmF1.2 R WR, Photo by KIMURAX


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磨き込まれた解像力とボケ味に浸る。

被写体を浮き上がらせるような描写は、さすがは大口径レンズだなと感じ入りました。精緻なピントピークの像。まるみのある柔らかなボケ味。一見すると相反する“硬と軟”の要素を、ワンカットの中に見事に結実させ、先代モデルの写りをさらに超えてきたわけです。開放からシャープな像を結び、ボケもたっぷり柔らか。何気なく撮った一枚ですらまるで作品の様に仕上がってしまうのですから、ある種の中毒性がある一本と言ってもいいかもしれません。多少絞り込んでも、まる味を帯びたボケはとても柔らか。そして被写体にしっかり寄れる。先代の「XF56mmF1.2 R」をお使いの方が本レンズへ買い替えたら、撮れる画の幅がさらに広がることでしょう。また、お手持ちの単焦点レンズからのステップとして本レンズを選ばれたら、撮影意欲が爆上がりすること請け合いです。もし、まだお持ちでなければ、ぜひお急ぎください。楽しい時間が始まりますよ。

( 2024.03.04 )

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高画素機に対応すべく第二世代へ進化した56mm。最短撮影距離を約20cm短め、防塵・防滴・-10度の耐低温構造を採用し、使い勝手にも磨きをかけた嬉しい一本です。

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F1.2の大口径レンズですから、しっかり守っておきましょう。

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