Tokina atx-m 23mm F1.4 X

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

本レンズは、トキナーのミラーレスカメラ専用の交換レンズ群「atx-m」シリーズに登場した富士フイルムXマウント用の広角単焦点レンズ。Xマウント用のサードパーティレンズ自体が珍しいこともあり、Xシステムのボディをお持ちの方には朗報です。23mm F1.4というスペックは純正レンズにもラインアップされていますが、本レンズの特長はコンパクトであること。全長 72mm・フィルターサイズ 52mm・質量 276gと、一回り小さいサイズでこの大口径を実現しています。35mm判換算35mm相当の画角となるので日常的に使いやすく、旅にスナップに、昼夜問わず軽快な撮影が期待できますね。純正レンズとは異なる選択肢としてXシステムを一層充実させるこの1本、その写りと使い心地を確かめていきましょう。

( Photography : A.Inden / Text : Serow )

開放から緻密な描写です。強い逆光のシーンながら粘り強く、表情豊かな夏の砂浜を素直に描いてくれました。コンパクトなX-E3との組み合わせでしたが手にすっぽり収まるサイズ感でバランス良く、F1.4という大口径にも気負わず持ち出せる印象です。

大口径レンズに求めるのはボケですよね。被写体に近づけば被写界深度の薄さは強烈で、ダイナミックに背景を溶かしてくれます。ピントピークもカリカリとすることなく、柔らかな雰囲気が好印象。

最短撮影距離は0.3mですから相当寄れます。ちょっと腰を下ろして休憩する場面、手元でササッと構えてもご覧の通り。花や昆虫など、接写にチャレンジするのも楽しいでしょう。ボケも素直でやわらかです。

ガラス越しのカーテンや木の窓枠などを質感豊かに、しっとりと描いてくれました。品のいい写りといいますか、よい雰囲気で仕立ててくれます。

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夏の雲を背景に。いや、実に気持ちの良い写りです。ヌケの良さと繊細な線で店舗の看板が浮き立って見えますね。F1.4らしく周辺減光はありますが、それがまた中心部を際立たせてくれる効果も。レンズの画作りには色々な方向性があるから面白いですね。

中距離の被写体でも、きちんとピント位置に合わせた描写をするから驚きます。画面奥の樹木と夕陽に照らされる人物をクッキリと描きながら、前後は自然にボケていく。広角レンズでもこんな写りができるのですね。

直線も直線らしく、目立った歪曲は見られません。開放から優秀なレンズですが少し絞ることで曖昧さを解消し、全域に意識が向かうカットになります。絞りによって表現を変えられるのは撮影していて楽しく、atx-mシリーズの目指す「創作行為を掻き立てられる」ものだと感じます。

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強い光の入ったシーンでしたが、コーティングも優秀。あまり難しく考えずに撮影して十分な結果が得られると思います。Xシステムのボディが優秀であるということもあるのですが、シャドー部分のディテールがしっかりしているのがいいですね。トーン豊富な画も本レンズの持ち味だと思います。

程よいサイズに収まるカメラとレンズだから丸一日撮り歩くこともできるわけで。心地よい疲れを感じながらも、日が落ちていくひと時にもうひと頑張り。朝から晩まで使える明るさが頼もしい限りです。

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端正で柔らかな写りが持ち味。大口径の世界を堪能しよう

シンプルに期待通り、いやそれを上回る印象のレンズでした。F1.4に期待するボケや表現力をしっかりと見せてくれることはもちろん、AFもスピーディで使い勝手に不安がありません。それでいてコンパクトな作りと使いやすい画角なのですから、魅力的な選択肢と言って間違いないですよね。特に記憶に残るのはその写りです。柔らかで端正な描写は昨今の流行と一線を画すイメージで、使っていて実に心地よいものでした。サードパーティ製レンズというと昔は「純正レンズを買えないから選ぶ」ようなところがありましたが、今やまったく様相が変わっていて面白いと思います。一定のクオリティを満たせるようになったからこそ「味わい」が焦点となり、「写りが好みだからこのレンズを選ぶ」という世界になってきたのかもしれません。

カメラらしい手触りのXマウントボディを選ぶ方なら、写真の雰囲気にもお好みがあるでしょう。残しておきたい光景にぴったりのレンズを選ぶとき、atx-m 23mm F1.4 は有力な1本になると思います。

( 2021.09.02 )