TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD Model A043

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

タムロンから出ました新しいカテゴリーのズームレンズ「TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD Model A043」の実写レビューをお届けします。コンセプトは“ポートレートズーム”。35mmスタートで常用域を中心としつつも、望遠域を150mmまで伸ばしています。しかも開放はF2.8-4と大口径ですから、ボケ量を活かした撮影にも使えますよね。本レンズはフルサイズに対応したキヤノンEFマウント向けとなりますが、1ヶ月ほど早く発売になったニコンFマウント向けの実写レビューもPYでは公開しています。そちらもぜひご覧ください。

本レンズの特徴について触れておきましょう。35〜150mmの画角をカバーする約4.3倍のズームレンズとなり、ワイド端を35mmと抑えることにより、テレ側は150mmまで手に入れています。しかも、タムロン渾身の標準ズーム「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2 Model A032」（88.4×111mm、905g）と比べても全長がわずかに長いだけで、やや細身で110g軽量に仕上がっています（本レンズは84×126.8mm、796g）。要するに、24-70mm F2.8と変わらない大きさに、テレ側は約2倍の焦点距離までカバーしたレンズを詰め込んでしまっているのです。レンズ構成は14群19枚のうち、複合非球面レンズと異常低分散（LD）レンズをそれぞれ3枚ずつ使用した贅沢な設計も、おそらく性能を犠牲にせずこの大きさに纏めることに一役買っているのでしょう。9枚羽根の円形絞りを採用していますから、開放から2段絞り込んだ状態までほぼ円形の絞り形状を保ち、ボケ味とボケ量にも拘ったものになっています。強力な手ブレ補正も搭載し、簡易防滴構造も採用。またBBARコーティングにより、逆光時のゴースト・フレアをしっかりと抑制していますから、ポートレート撮影にも頼もしいですね。今回の実写レビューでは、大口径標準ズーム並の機動性の高さを活かしスナップ撮影を行ってみました。それではどうぞご覧ください。

( Photography : A.Inden / Text : A.Inden & Naz )

“ポートレートズーム”、ネーミングがいいですね。シャイな性格なんで正面から人をスナップするのは苦手なんですが、このネーミングに乗せられてチャレンジしてみました。ドキドキしながらカメラを向けてみると、みなさん笑顔で答えてくれてピースサインまで。なんかほっこりした気持ちになり、こちらまで幸せになりました。コミュニケーションをとりながら人物を撮るのもいいですね。

ズームレンズとして馴染みのない35〜150mmという焦点距離を見たとき、150mmをもう少し短くすれば、もっと小さく軽くなるのかなと思っていました。でも実際に使ってみると150mmを多用することが判明。開放値F4の柔らかなボケ味とタムロン独特のナチュラルな色味が150mmの圧縮感とうまくマッチして、日本の少し湿気を感じる空気感を作り出してくれました。気になった重さも「えっ？こんなに軽いの」とびっくり。ぜひ実際に手に取っていただければと思います。

F2.8-F4の開放値の変化が気になる方もいらっしゃるかと思います。EXIFからの開放値のデータです、参考にしてください。
38mm=F2.8、50mm=F3.2、58mm=F3.2、76mm=F3.5、98mm=F3.5、105mm=F4

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ズーム全域で最短撮影距離が45cm。専用のMPUを持つ約5段分の手ブレ補正効果と聞くと、マクロ撮影に使わない手はないですね。上の2カットは150mmで撮影。開放値F4は高感度に強くなったデジタルカメラでは十分に明るく、手ブレ補正効果まで確認できませんでしたが、マクロ撮影に強いタムロンらしいクリアな描写が印象的でした。

軽くてコンパクト、自然なパースのズームは旅レンズに最適でした。

旅に出るとき、35mmと50mmの2本があれば十分、ちょっとカバンに余裕があるときは100mmを、それが定番の機材です。自分が見たものをそのまま記録してくるには、このあたりの素直な見え方の焦点距離がしっくりくるからです。伊豆半島のつけ根、東京寄りの根府川。海のそばの駅を出発し、遠くに海が見える山の中腹までゆっくり歩いて約30分、途中商店を覗かせてもらいながら気になるものをスナップ。約2時間ぐらいでしたが、ズームレンズ一本の気楽なショートトリップが楽しめました。

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• 窓に写り込んだ東京駅。お店のディスプレイと写り込みのバランスを考えながらクラシックな雰囲気を狙ってみました。タムロンの誇張しない描写が全体のトーンを、いい雰囲気に仕上げてくれています。
• 逆光で硬質な素材を狙ってみました。透明感のある描写も、ピントピークのカリカリしないシャープさもタムロンらしいですね。
• 直射日光が当たっている真っ白な杭が飛ばないように少し露出を絞って撮影。それほどコントラストが高い描写ではありませんが、水に写り込む杭が誇張されることなく自然に美しく再現されています。
• 逆光の条件ですが階調が柔らかく表現されています。風が強く塩が舞っている雰囲気が、少し湿気を含んだ描写でうまく表現されています。開放では周辺光量落ちが感じられます。

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タムロンはうまいところに目をつけた。

解像感がありながらも、タムロンらしい繊細な柔らかさもある描写は、このレンズでもしっかりと感じ取ることができました。標準ズームの焦点域を超え、150mmまでテレ側を伸ばしたことにより、レンズを交換することなく薄いピントや大きなボケを引き出すことが容易くなりました。これが想像していた以上に使えるのです。特にこのレンズの画を見て感じたのは、ピントの芯の残し方の巧みさ。繋がりのよい階調もあり、肌の滑らかな質感描写は相当いいレベルになっていると思いました。このあたりはさすが“ポートレートズーム”を謳うだけあるものですよね。

本レンズでは使い勝手でも新しい提案をしてくれました。本レンズに加え、もう1本コンパクトな「17-35mm F/2.8-4 Di OSD Model A037」を組み合わせれば、大三元や小三元が3本でカバーしている画角の大半を2本でカバーすることができます。これはレンズ交換の頻度を大幅に減少させることができ、ズームレンズの強みである画角の自由度をさらに広げてくれるのです。また望遠ズームが150mmスタートとなれば、「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 Model A022」と組み合わせてしまうことだってできるのです。今回ご紹介しました「35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD Model A043」は、多彩なズームレンズがラインナップされているEFマウントでも唯一無二のキャラクター、タムロンはうまいところに目をつけましたね。どうぞ期待を持って手に入れてください。

( 2019.07.12 )