PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
3群7枚目 設計図と完成品のはざまで
試作のプロフェッショナルたち (前編)
「壊れ方」が問題
さて、機構ごとやパーツ単位での試作を経て、設計も終盤になると、製品の完成形が見えてきます。やはりここにも試作があります。 |
「ほぼ完成形」の試作を使って、まず最初に行うテストは何だと思います? |
何だろう?・・・操作感とか、そういうことかな。 |
実はですね、衝撃のテストなんです。 |
おお。「ニコン=頑丈」のイメージは確かにある。 |
衝撃的でしょ? |
ええ、まあ。はは。 |
一番最初に衝撃のテストを行う理由は、不具合があった場合、対処するのが一番大変で時間もかかるからです。ニコンとしては堅牢性をとても重要視しています。その部分を担保するためにもまず最初にぶつけてみるということです。 |
いくら気をつけていても、ぶつけたり、落としたりはフツーに起こり得ることですもんね。 |
大切に、丁寧に使ってもらうのがいちばんですが、実際はそうとは限りません。特に職業として写真を撮られている方にとっては仕事の道具。腫れ物に触るような扱い方では仕事になりません。すべてのレンズで耐衝撃性能のテストをしていますが、特に報道機関でハードに使われることが想定されるレンズでは、より厳しい基準で頑丈に作っています。 |
そういったテストはあらゆる状況を想定し、開発チーム総動員で行います。実際に試作品を何本も壊してみて、「どういう衝撃を加えると、どこが、どう壊れるか」を検証し、対策を練るんです。 |
何本も! |
理想はどんな衝撃を受けても壊れないことですが、それは不可能。問題は、衝撃を受けた時にどこが壊れるか。いきなり使い物にならなくなることだけは避けたい。だから光学性能に影響しないところだけが壊れて衝撃を吸収する、という発想が生まれます。 |
自動車のクラッシャブルゾーンと同じ考え方ですね。 |
その最たるものがフード。衝撃を受けるとレンズ本体に影響せずに外れたり壊れたりするよう、設計をしています。 |
レンズを守るという意味でも重要なんですね、フードって。 |
われわれにとって大事なのは「ここまでやると壊れる」という限界を知ること。それを知ることで初めてコントロールできるようになります。闇雲に頑丈さだけを追求してしまうと、ユーザーの皆さんが求める軽さや小ささを実現できませんから。 |
軽さと頑丈さのバランス・・・その最善ポイントを探るためにも、試作と検証の繰り返しが大事なんですね。 |
- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内