PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
- 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
- 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
- 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。
2群6枚目 あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
謎の写真用語・説をめぐるアレコレ
仮に今、私が押し入れの中にいたとします・・・ |
・・・何? この声は。 |
どこから聞こえてくるんだろう? |
仮に今、私が押し入れの中にいたとします・・・ |
やだこわい。 |
この声、原田さんのような気がする。失礼ですが・・・原田さんですよね? |
そうです、原田です・・・ |
原田さん、どこにいるんですか? |
この場合、何かの罰として閉じ込められたのではなく、自主的に入ったものとお考えください・・・ |
その注釈は必要でござるか。 |
がちゃ。 |
ロッカーから原田さんが出てきた・・・登場の仕方がセンセーショナル。 |
ちょっとカッコいいかも。 |
押入れのような真っ暗な場所でじゅうぶんに開いたヒトの瞳径は年齢や個人差が結構あるようですが、最大で5~7mm程度。つまりこれが有効口径(光が通る円の直径)です。一方、眼球の焦点距離はおよそ17mm程度。詳しくは次回で解説しますが、F値は有効口径と焦点距離によって求められます。 |
ん? 何の話? |
焦点距離を有効口径で割ったものがF値ですから、例えば瞳径が最大でも17 ÷ 7 = 2.43。したがって、ヒトの眼の開放F値はF2より暗いと言えそうです。もちろん多少の個人差はあると思いますが、F1.0なんてことは絶対にありません! |
原田さん、いったい何の話をされているのですか? |
「ヒトの眼=F1.0説」に対する反証です。 |
ああ、それ聞いたことあります! ヒトの眼はF1.0ぐらいだっていう話。 |
でも今説明したように、それはあり得ないのです。もしヒトの眼がF1.0の明るさを持っているとしたら、そうですねえ、動物で言えばアザラシみたいに大きな黒目が必要になります。アザラシがF1.0かは知りませんが。 |
それでロッカーに入っていたわけね。押し入れの代わりに。 |
どこから出てきたんでしょうね? ヒトの眼=F1.0説。 |
さあ、大昔の超大口径レンズの宣伝文句が誤解されて広まったような説もあるようですが本当のところはよくわかりません。でもまことしやかに囁かれている、カメラや写真にまつわる謎説っていっぱいありますよね。 |
そういえば、2号殿は何ミリのレンズがいちばん好きでござるか。 |
何よ突然。そうねえ、昔は28mmが「自分の標準レンズ」だと思っていたけれど、それがいつしか35mmになり、最近は気づけば50mmばかり使ってる。 |
「焦点距離年齢比例説」というのを知っているでござるか。 |
「焦点距離年齢比例説」
何それ。 |
好きな画角は年齢に比例して狭くなるという、アレでござる。 |
ああ、それも聞いたことがある・・・えっとぉ、これは念のための確認なんだけど、あくまでも「比例する」という話よね? 「年齢イコール焦点距離」じゃないわよね? 実年齢と比べたら、焦点距離の方がまだだいぶ長いから。 |
たいして変わらんでござろう・・・イタタタタタ。痛いでござる。 |
あーら、足、踏んでました? ごめんあそばせ。 |
年齢を重ねると、色々な理由で視野が狭くなっていくらしいです。 |
つまりこの説は、あながち根拠のない話でもないのでござるな。 |
ところで、視野って言ってもヒトの眼は写真レンズみたいに広い画角にわたって高解像力を持っているわけではないのですよ。 |
え、そうなんですか? 今、私はまっすぐ前を見ているのに、ほぼ真横にいる3号の姿がなんとなく視界に入っていますけど? |
実はヒトの目って、解像度が高く見える範囲ってとても狭くて、周辺は解像度は高くないし色も見えない。でもそう感じませんよね。そういうところが、センサーの画面全域で解像力を高く保っていて一回の露光で撮影を完了する写真レンズとは違いがあります。 |
へええ、すごいなあ、人間の体って。 |
ついでにいうと、加齢とともに肉眼ではピントの変えられる範囲が狭くなってきます。写真レンズで言えば、フォーカシングの範囲が狭くなってしまう。これがいわゆる老眼です。加齢とともに視野が狭くなって好みの焦点距離が変わるかを自分自身で検証したいのですが、昔から今までずっと変わらず50㎜が好きなので本当かどうかはわかりません。 |
では私からも。みなさん、「回折(かいせつ)ボケ」って聞いたことがありますか? |
- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内