PHOTO YODOBASHI
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Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
フォクトレンダーより登場した、SONY Eマウント用レンズ「MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 」のレビューをお届けします。2017年8月にフォクトレンダーからハーフマクロのSONY Eマウント用レンズ「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」が発売となり、絶大な人気を博したのは記憶に新しいのではないでしょうか。今もなお単焦点マニュアルフォーカスレンズ群の中で圧倒的な存在感を放つアポランター。一昨年の冬、そのラインナップ上に新たに本レンズが加わりました。フォクトレンダーのレンズの中でも高性能な製品に与えられる称号である "APO-LANTHAR" の "APO" は、アポクロマート設計されたレンズを示し、軸上色収差を限りなくゼロに近づけることにより 高次元の色再現度が得られることを特長としています。その描写性能はすでに神格化され、撮る者見る者を魅了してやまないほど。またマクロアポランター65mmと同様、撮影位置に応じて3つのレンズ群を独立して動かす3群フローティング機構を搭載しているため、近接から無限遠での撮影まで安定した描写が得られるというのも既知の通りです。レンズ重量は771g、全長は99.7mmと、明るい中望遠アポマクロレンズとしてはコンパクトに感じるサイズであり、最大撮影倍率は等倍 1:1 （最短撮影距離35cm）と、既に魅力しか感じられない本レンズ。中望遠の画角と等倍マクロ、そして我々を魅了してやまないアポランターの描写力がどんな化学反応を起こすのか、もはや期待しかありません。使い勝手を含め、じっくりとその写りを見ていきましょう。
( Photography : Z II / Text : TA )
晴天時に白い上着というのはコントラストが強くなりがちで難しい条件となり得るのですが、シャドウは潰れることもなくハイライトも白飛びし過ぎず、その写りにはどこか余裕すら感じます。エッジの滲みなど微塵も見られません。
透明感と包容力が同居した描写
見たままを忠実に再現するだけでなく、見えない「何か」まで写っている気がします。張り詰めているけれど、どこか懐が深い冬の空気までしっかりと写し込んでいるように思えるのです。露出を開け気味にしたときに、透明感と包容力が同居したような描写を見せることがあります。これは、本レンズの数ある魅力のうちの一つと言っていいでしょう。ところで開放付近では四隅が少し落ちる傾向にありますが、F値を考えればかなり優秀でいい雰囲気を醸し出してくれています。空抜けに細い枝などをフレームすると色収差が出やすくなるものですが、ピントピークにもアウトフォーカスにも色収差は全く出ていません。絞り開放から素晴らしい描写を見せてくれるものです。こういった何気ないシーンを切り取った時の描写が見せる、透明感と包容力に思わず感じ入ってしまいます。
ピントピークのキレと、極上のボケ。これぞ本レンズの真骨頂とでも言わんばかりの納得の写りです。超極薄のピント面ですので手持ちで撮る際には息を止めてシャッターを切らねばならないのが辛いところではありますが、狙い通りにハマればご覧の通り。またボディ側の手ブレ補正もしっかり効いています。特にマクロ撮影では、ブレにはシビアにならざるを得ませんが、少々シャッタースピードが遅くなってもカバーしてくれるのはありがたいです。
見たものをごっそりダイナミックに持ち帰るワイドレンズとは違って、シーンをどう切り取るかを考えさせられるレンズだと感じました。それがまた、楽しさに繋がるのですけどね。また空気を含んだような透明感から一変して、油絵のような厚みを感じる描写を見せることがあります。見ているものを忠実に再現する性能があるので、シーンが変われば新しい表情を見せるのは当然のこと。そこがまた本レンズの魅力なのだと思います。
質感描写も大変素晴らしく、ハイライトの中にも微かな諧調を捉えて再現しています。
ピントピークのキレと輪郭を残した美しいボケが、被写体のメインとなる部分を一層際立たせてくれます。フリンジも全く見受けられず、各色収差が徹底的に抑えられていることがわかります。
少し離れた位置からのカットです。少し絞ることでややその性格を変え、硬さは全く感じないもののしっかりとした線で髪の毛やコートの質感を鮮明に描いているのが伝わってきます。フォーカスリングの操作によるファインダーの拡大表示も大変便利で、咄嗟に訪れる良い瞬間にもマニュアルフォーカスで素早くピントを送ることができます。とは言え、絞り開放ではピントを合わせるには少々慣れが必要でした。特別なレンズですから特別な作法もあって然るべきなのかもしれません。
等倍マクロを実現した、アポランターの次なる一手
「やはり描写が神がかっている。」カメラマンが撮影してきたデータを見て、まず感じた印象です。像の分離が良くクリアに描ききる描写力。ピントピークのキレと被写体を浮き立たせる極上に美しいボケ。この美しいボケはピントピークからアウトフォーカスにかけて輪郭を失っていく様に性急さを感じないのですが、とにかく自然で好感が持てます。雑味がないのに味わいが無いわけではない。その場の空気まで写し込む真の力を持っています。"帯に短し襷に長し" といった印象を全く抱くことのない本レンズの描写は、我々に最高級品であることを再認識させるほど。改めて「アポランター最強」と感服した次第です。
操作系においては、ピントピークをつかみ易く、フォーカスリングの回転角も大きいレンズですので絶妙なフォーカシングが可能です。おまけに被写体にグッと寄りきれますし、被写体と距離をとることもできるので取り回しが良いのです。110mmの歪みの少ないパースぺクティブや、近接・描写性能は、ブツ撮りや人物撮影といった特定のシーンにおいて欠かせないレンズになるでしょうし、普段使いにおいても適度な狭さを持った画角は大きな武器となってくれるはずです。中望遠レンズ特有の被写体との間を置いて「時」を写し込むようなアプローチも画にバリエーションを生んでくれるでしょう。純金属製ヘリコイドユニットのなめらかな操作感が写欲を高め、単焦点レンズを初めて手にした悦びを再び思い出させてくれるかもしれません。こんなレンズを手にしていたら撮影が楽しくならないわけがありませんね。
( 2020.01.28 )
圧倒的な存在感を放つアポランターの称号を提げた等倍マクロ中望遠レンズ。その圧巻の写りは、見る者撮る者を魅了し続けます。良いなあと感じた貴方の目は確かです。
アポランターのポテンシャルを最大限に引き出すには高画素機がおすすめです。α7R IIIはバランスの取れた良機種。レンズとセットでの購入をお勧め致します。
Eマウント用しかないの！という心配はご無用です。他マウントでアポランターが使えるマウントアダプターもあります。こちらはNikon Zマウント用になります。ニコンZシリーズのミラーレスカメラでオートフォーカスが可能な電子アダプター搭載。
アポランターの名を現世に知らしめたMACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical. はこちらになります。