PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

コシナ創業60年、フォクトレンダーレンズの発売から20年という節目の時期にリリースされた「Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical」(ソニーEマウント用)のレビューをお届けします。昨今のデジタルセンサーの高画素化に対応すべく、アポクロマート設計を採用することで軸上色収差や倍率色収差を徹底的に抑制しているとのこと。確かな手応えを感じる金属製の鏡胴は精緻に仕上げられており、ヘリコイドの滑らかさと重すぎずそして軽すぎない絶妙なトルク感。こんなにも心地の良い操作フィーリングは、高品質なマニュアルフォーカスレンズならではでしょう。見渡せば、画質の良好なズームレンズたちが投入される現代においても、単焦点レンズを手にする悦びを感じさせてくれる本レンズ。「フォクトレンダー史上最高の標準レンズとしての性能と、コンパクトでハンドリングのしやすさを兼ね備えている」とアナウンスされていることもあり、並々ならぬ自信のほどが窺えます。標準レンズと呼ばれる数多ある50mmレンズの中にありながら、F2.8の時に絞り羽根が円形になるというギミックも備えたユニークな一本。長い歴史を有し、デジタル時代に一石を投じるAPO-LANTHAR(アポランター)ブランドの写りを見ていきましょう。

( Photography : A.Inden / Text : KIMURAX )

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

厚みのある描写

ファインダーを覗いた瞬間に「このレンズは違うな」と感じられる個性的な描写です。開放からのシャープさ、解像感はもちろん大変素晴らしいのですが、それだけではない何か心に引っかかる描写を見せてくれるのです。F2という開放値のため、とろけるようなボケ味ではないのですが、太い筆で描いたような滑らかに滲んでいくボケ方。色乗りに派手さはないものの落ち着きのある色再現で、黒が締まったトーン。それらから受ける印象は何度も色を塗り重ねて空気感を描き上げていく、油絵のような厚みのある描写とでも表現すればお分かりいただけるでしょうか? 久しぶりに撮りたい対象が見えてくる、そんなレンズに会えた気がします。


SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden


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このレンズのこだわりともいえるユニークなポイントは絞り羽根です。開放から徐々に絞るにつれて、絞り羽根の形がボケ味に現れてきます。そのため丸いボケを得るには、できるだけ開放で撮影する必要があります。ところが開放で撮影すると口径食(周辺部でボケ玉がレモンのような形になる現象)になってしまうのです。それを防ぐためにも開放から若干絞ってあげる必要が出てくるわけです。そこで本レンズは、F2.8で絞り羽根が真円になるように作られています。なるほど、撮り比べてみると「そうかそんな手があったのか」と思わず感心してしまいました。コロンブスの卵ですね。

  • PHOTO YODOBASHIF2.0:開放で撮影すると、真ん中は真円のボケになっていますが、画面の端にいくほど口径食が顕著に現れます。(画像のクリックで大きな画像を表示します)
  • PHOTO YODOBASHIF2.8:1段絞ると口径食はほとんど感じることなく画面全体でボケが真円です。(画像のクリックで大きな画像を表示します)

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

SONY α7R III, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical, Photo by A.Inden

「MFでは上手く撮れないのでは」と、レンズの描写は気に入っていても手に入れるのに少し抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思います。確かに走り回る子供を撮るには、ちょっとしたコツも必要で誰でも撮れますとは正直言えません。ただ、カメラの電子ビューファインダーの画素数が上がったことや、フォーカスアシストが使いやすくなったことで、ピント合わせは各段に楽になってきたことは大いなるアドバンテージ。習うより慣れろの精神で、様々なシーンに切り込んでいくのもいいでしょう。じっくりと構えて撮影してきたのは、新しい年を迎える村のお祭り。少々暗めのシチュエーションでしたが、カメラの便利な機能のおかげもあり、自分の合わせたいところにストレスなくピント合わせも可能に。今回使用したSONY α7R IIIの手振れ補正は実に頼もしいもので、本レンズの真価であるシャープな結像を存分に楽しむことができました。


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極上の切れ味。玉ボケへの拘り。じっくりと浸りたくなる存在。

重量364g、全長61.3mmという軽量かつスリムなサイズにまとめながらも、よくもまあこれだけ大変よく写る一本に仕上げたものです。さすがはフォクトレンダー。ピントピークのスパっと切れ味のいい描写力。滑らかに、そしてじんわりと滲んでいくようなボケ味により、何気なく撮ったワンカットにハッとさせられることもしばしばでした。というか撮影時に拡大表示してピントを追い込んでいく際のファインダー像を凝視しているだけで、すでにもう圧倒されてしまう始末。そんな驚きのある、うっとりするような描写も撮り進めていくうちに見慣れてきて“当たり前”になっちゃうのですけどね。でもホントによく光を巧く捉えてくれるものです。開放時に最短撮影距離(45cm)付近の撮影でも、収差をまったく感じさせない写り。「フォクトレンダー史上最高の標準レンズ」という言葉、納得ではないでしょうか。実用性はもちろん趣味性においても高い仕上がりのレンズですから、ゆったりとした気持ちでじっくりと被写体に向き合う時間を楽しむにはうってつけ。焦点距離のスタンダードとなる50mmですから、これ一本でお散歩なんてちょっと贅沢でいいですよね。なにせこれだけの写りを見せてくれるのですから。AF・ズームレンズ全盛の折、MF・単焦点レンズでリッチな時間を過ごしてみてはどうでしょうか。触れた瞬間に伝わる確かなビルドクオリティ、撮り手の期待にきちんと応える表現力。こりゃ参っちゃいますね、またレビューしたレンズを買ってしまうことになりそうです。いや、確定です(笑)。

( 2020.01.22 )

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コシナ創業60年、フォクトレンダーレンズの発売から20年の節目に放たれたアポランター50mm。質感ある金属製のマニュアルフォーカスレンズがもたらす悦びを、じっくりと味わってください。

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