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SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art

シグマからライカLマウント向けの超広角レンズ「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」が登場しました。ここ最近の同社からはContemporaryラインレンズのリリースが相次いでいたこともあり、このArtレンズの発売が気になっていた方も多いのではないでしょうか。Artの20mmというと既に一眼レフ用の「20mm F1.4 DG HSM | Art」の存在がありますが、今回レビューをお届けする20mmはミラーレス専用(DG DN)となる新設計。レンズ構成はSLDガラス2枚、非球面レンズ3枚を含む15群17枚と手厚く、絞り羽根は円形11枚と超広角レンズながらボケの表現にも注力していることが窺えます。それでいて重量は635g、全長も111.2mmと先輩格のDG HSMに比べ随分と軽量かつコンパクト化。加えて最短撮影距離は23cmとさらに近づける仕様に。重くて大きいというイメージのあるArtレンズでしたが、このサイズ感ならストリートでも気の向くままにブンブン振り回せるというものです。早速、SIGMA fp Lに装着して試写してきましたので、その実力の程をどうぞご覧ください。

( Photography & Text : KIMURAX )

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

稲穂がほのかに色づき始める季節になりました。これが超広角レンズなのかと疑いたくなるような深度の浅さです。絞り開放からフォーカスエリアは実にシャープ。ボケも相まってよりいっそう鋭く浮き上がってくるように感じます。これだけ複雑な背景でもあからさまにボケが煩くなるようなこともなく、柔らかさを伴いながら巧くいなしているように見受けられます。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

フォーカスしたのは階段の下った先。それなりに深度は深くなるものの、画面中央あたりから手前はすでにボケエリアになっています。高コントラストなシーンなのでメリハリが効いているせいか、解像感が画面全体に行き渡っているかのように一瞬見えましたが、しっかりボケている。超広角らしいワイド感はありつつも、これから降りて行く先へと視線を投じた瞬間の視界を、写真的に表現したような仕上がりです。これだけの強い日差しの中でも色収差の類がよく抑えられているのには感心します。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

ご覧の通り、周辺歪曲はほぼ無しと言っていいレベルでしょう。光学系で歪曲収差をピタッと黙らせるとは、さすがArtレンズ。無機質な被写体ではありますが、どことなく空気感を漂わせる写りにドキッとしました。ところで画面がわずかに左に傾いていますね、詰めが甘くてスミマセン。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

こういった被写体は超広角レンズの得意とするところでしょう。シャドーエリアもストンと急に落ちることなく、トーン豊かに描いています。そこから浮かび上がるハイライトゾーンの質感表現が醸し出す生々しさ。色乗りもいいです。


SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

明るいレンズですからもろに太陽がフレームインする際は、それなりに絞り込まないと即露出オーバーです。開放付近を活用したいシーンではフィルターが必要になるでしょう。本レンズの後部(マウント側)にはシートタイプのフィルターを装着できる「リアフィルターホルダー」が備えられています。前後で異なるタイプが使えるので、フィルターワークも思いのままです。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

絞ったついでと言っては何ですが、遠景の描写も確認しておきましょう。F5.6~8あたりでほぼパンフォーカスになりますが、ご覧のように立体感が後退するようなことはありません。手前から奥へと連なるレイヤーをきちんと感じられる。繊細な線が無粋に太くなっていないからなのでしょう。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

絞り開放に戻りまして、最短撮影距離(23cm)での撮影です。収差の類は見当たらず、キリッとシャープに解像しています。まるですぐ目の前にあるかのようなリアリティではありませんか。ボケも滑らかです。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

とても明るいレンズということでAFが迷うということはなく、素早く正確に捉えてくれます。瞳にしっかりピントが来ていますが、しなやかに振り上げた翼のフォルムがあまりにも格好よすぎて、鳩の意外な一面を見てしまったようで正直びっくり。それにしても宙を舞っているとはいえ背景との分離がハンパないです。立体感どころか“飛び出す写真”さながらです。


SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

ガラス越しでもフォーカスした生地の繊維まできめ細やかにキャプチャしています。拡大するとわずかな埃まで見えてくる容赦のない描き込み。前後の大きなボケの存在でシャープさを感じるのではなく、ピント面そのものに一級のキレがある。さすがはArtレンズの仕事だと感心するばかりです。

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX

SIGMA fp L, 20mm F1.4 DG DN | Art, Photo by KIMURAX


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20mmのイメージを覆す、キレ味とボケ味。

期待通りと言いますか、なるほどシグマのArtレンズらしい非常に解像感たっぷりの撮像でした。それでいてボケ味は大きい上に美しい。一般的に焦点距離が短くなるほど被写界深度は深くなるものですからボケはあまり期待できないのが超広角レンズというものでした。ところがどっこい絞り開放F1.4という武器になるスペックを手に入れた本レンズが紡ぎ出す画には、キレ味とボケ味が絶妙に同居します。持て余してしまいそうな20mmの画角ですから、フレーム内の整理に相当気を使うのではと心配される方も少なくはないでしょう。しかしそんな広い画角内にボケが添えられることで、試写の間も構図決めに悩むシーンはほとんどなかったように記憶しています。ですからスナップ的なアプローチにおいて、サクサクとシャッターボタンが進んでしまうのです。個人的な感覚としては24mmレンズで撮っているような印象でした。撮像そのものはArtレンズがもたらすクオリティですから極端な話、どこに向けてもハッとするような画が面白いようにものにできてしまうのです。ですから撮っていてとにかく楽しい、という一言に尽きます。キレ味の鋭い描写と美しいボケ味の相乗効果で、超広角レンズで表現できる世界がこんなにも広がるのですから活用しない手はありません。モチベーションの上がる機材は、日頃の作品作りに欠かせない存在になるはずです。

( 2022.08.26 )

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超広角レンズなのに大きく美しいボケ味が表現できる。約束されたArtの写りに、F1.4による表現の幅の広さが光る一本。

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夜景や星空の撮影に持ち出すらな必携です。

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