PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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祝 PENTAX 100周年! - Chapter 3
レンズに迫る「Limitedレンズへのこだわり」

ペンタックスのLimitedレンズをご存知ですか? 多くのカメラメーカーではそれぞれが持つシステムで、特別なレンズをラインナップしています。一般的には光学性能が優れた上位ランクの製品がそれにあたりますが、そこはペンタックス。ひと味違います。実用的な光学性能だけでなく、鏡胴の素材や塗装をはじめとした造りのよさや、手にして愛でる楽しさまで1つの製品にまとめたレンズをラインナップしています。つまりそれが「Limitedレンズ」です。Limitedレンズは現在9本が製品化されていて、今回はその中からフルサイズ向けの3本をご紹介したいと思います。製品名にすると、smc PENTAX-FA 31mm F1.8AL Limited、smc PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited、smc PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited。

これらのレンズを手にしてまず感じるのが、金属鏡胴とガラスの詰まった重心を感じる重量感。プラスチック鏡胴のレンズが多い中、ずっしりとした重みを感じさせてくれます。だからといって重すぎるわけではなく、開放F値を踏まえれば重さやサイズも含めて非常に小さくまとまっています。これはおそらく、AFモーターをレンズ内に搭載せず、ボディ側のモーターを駆動させることで実現できたサイズでしょう。また絞りもメカ連動でボディ側から制御します。Kマウントになる前のM42マウント時代のレンズとほとんど変わらないサイズ感は、これらのレンズがカメラボディのサイズが今よりも小さかったフィルム時代に生まれた製品からだともいえます。アルミ削り出しに刻まれたローレットの手触りもよく、また厚く塗られた塗装の肌触りも含め、写真のように使い込まれた姿がとても様になります。


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3本のレンズに共通する、他の写真用レンズとは少し異なる焦点距離。そしてその理由は…? もちろん偶然生まれてきたのではなく、何か意味がある数値なのでしょう。31mmは28mmと35mmの間、43mmは35mm判(24x36mm)の対角線長、では77mmは…? いろいろと思いを巡らせてみましたが、説得力ありそうな答えは見つかりませんでした。いつか開発された方に本当のところを伺ってみたいものです。絞りもF1.8とF1.9。そんなミステリアスなものを秘めたスペックもこのレンズたちの魅力のひとつなのかもしれません。

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実際に使ってみて感じるのは、近年の高性能レンズとは設計思想が異なる描写をするということ。3本のレンズたちが生まれたのは2000年前後とまだカメラの多くがデジタル化されていない時代の設計。デジタル化された時代の高性能レンズたちが、収差を極限まで取り除き、癖のないクリアな描写を身の上とするものが多い中、このレンズたちはピントを合わせるときにも、撮れた写真を見たときにも、わずかな収差の存在を感じさせます。でもそれは決してマイナスなものではなく、これらのレンズたちが持つ個性や魅力に繫がるものでもあります。クリアなだけではない“気配”や“気品”を感じさせる写り。撮るほどにいいレンズだなあと思わせてくれるものでした。


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プリントではなく刻印された文字には白い塗料が入り、“Limited”の文字には誇らしげに赤い塗料が入っています。最近のレンズでは省略されたものも出てきましたが、このレンズには緑色のフィンガーポイントが。レンズの装着時の目印であり指印でありますが、Limitedでは七宝焼きを採用。金属製となるフードやレンズキャップの内側にはフェルトが貼られるなど、細部にまでこだわり抜いたものたちです。

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繊細さとウェットさを感じるしっとりとした描写。やや落ち着いた色合いが大人な描写に感じさせます。晴れた日のコントラストの高い光の下ではなく、こんな風に曇天や雨天の弱いフラットな光の下でこそ、このレンズのよさを感じられるのではないかと思います。


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3本のレンズとも現代ならば標準ズームレンズ1本でカバーできてしまう画角ではあります。しかしそのズームレンズでは、撮れない世界を描いてくれるように思います。どのレンズも個性的な画角ですが、実際に使ってみると思っていた以上に違和感を持たず、むしろ腑に落ちるような気さえしてきます。不思議な存在感です。最近の一眼レフ向けのレンズデザインには少ない先すぼまりな鏡胴のデザインも、クラシカルな雰囲気に通じてむしろ格好よく感じます。

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カメラやレンズを愛し、写真を愛す作り手の思い。
それを感じられることこそが、Limitedレンズの価値。

ペンタックスも通常の製品群となるレンズは、他メーカーと同様にデジタル時代に対応した最新の設計や生産方法により生まれてきているように感じます。一方でLimitedレンズは、もっと昔ながらの作り方で生まれてきているように感じるのです。設計されたものを試作し、数多くの試写から磨かれてきたであろう写り。そして丁寧に組み立て、調整された感触。そこに作り手となる人たちの介在を感じるのです。しかもその作り手たちはカメラやレンズを愛し写真を愛している人たち…使う我々にそう思わせる存在こそが、このLimitedレンズの価値ではないかと思います。

ペンタックス100周年記念特集のChapter 1でご紹介したイベントで行われたアンケートでも、熱心なファンの方々は新しいLimitedレンズの登場を期待されているようでした。写真の機材もどんどん便利になっていくなか、個性的な画角のレンズを複数揃え、しかも写りだけでなく所有欲さえ満たしてくれる。ロングセラーとなっているこの3本の成功なくして、この後に続いた6本ものAPS-C向けとなるDA-Limitedレンズの登場もなかったのかもしれません。パンケーキありズームもあり…と、なかなか魅力的です。

( 2019.12.12 )

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