Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2 S vol.1 vol.2

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ニコンZマウントから大口径中望遠単焦点レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」が登場しました。NIKKOR Zレンズのf/1.2のレンズとしては、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」に次ぐ2本目。高級ラインの“S-Line”ですから存在感たっぷりの堂々たる風貌です。全長は141.5mm、最大径102.5mmと数字からもそのサイズ感がご想像できるかと。重量は約1160gでZ 50mm f/1.2 Sと比べると、重さはわずか70g増に抑えているのは驚きです。レンズ構成は10群15枚に非球面レンズ2枚とEDレンズ1枚を効果的に配置することで、S-Lineが誇る高い解像感と開放F1.2の大きな柔らかいボケを両立しているとのこと。また、AF駆動には高性能かつ静粛性の高いステッピングモーターを2個搭載し、この二つのモーターの駆動にはマルチフォーカス方式を採用。ポートレート撮影に最適な85mmが、F1.2の瞳を持ったことで私たちにどんな世界を見せてくれるのでしょうか。極薄のピント面と大きなボケ味が織りなす特有の浮遊感はどれほどなのか期待が高まります。今回はファーストインプレッションとして、まずはポートレート的なカットをじっくりご覧いただきたいと思います。他のシチュエーションでの撮影によるレポートは、また後日お届けする予定です。

( Photography & Text : Z II )

ニコンが磨き上げた究極のポートレートレンズ

以前に試写した同社の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、ポートレートレンズとして素晴らしいアウトプットをもたらしてくれたことを記憶しています。そして今回の「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」は、さらに明るいレンズなりのボリューミーなボケで主役を浮かび上がらせてくれました。これは次元の異なるアウトプットを見てしまったなというのが正直な感想。とにかくボケ味がよい。本レンズの主戦場はポートレートであることが想定されるわけで、そこがまさに命。芯を感じない柔らかさと言ったら伝わるでしょうか。単にボケ量が多いというだけではなく、上質さがさらに加えられた印象です。そして浮かび上がる主役の表情に雑味を感じません。つまり解像力も素晴らしい。原寸で見ようものなら肌のキメまで克明に描き込んでいるのですから。ところで、トップ画像で迫力ある前玉をご覧になり、重量バランスなどが気になった方もいるのではないでしょうか。その点ではスペックと見た目の割には、実際手にすると意外と軽く感じるから不思議なものです。操作性も申し分なくF1.2という数値からもわかるように、恐ろしく浅い被写界深度ですが、AFは当たり前のように素早く正確なのには恐れ入りました。描写性、操作性、見た目と、どれを取っても一級品でプロフェッショナルユースに対応する素晴らしい仕上がり。これはきっとウェディングやファッションの業界などからも引き合いがどっと来そうな予感がします。ここぞという勝負どころで結果を左右するのは、やはり道具の切れ味と表現力ですからね。Zマウント85mmの真打がいよいよ登場です。

( 2023.03.24 )