PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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はい、五糎道場の3回目でございます。前回の記事を読み返してみたら、ちょうど二度目の緊急事態宣言が延長された頃の話なんですね。で、今が三度目の宣言の延長が取り沙汰されているというタイミングで(これを書いているのは2021年5月7日)、いやーなんか不思議ですね。緊急事態宣言が出る→宣言が延長される→五糎道場が公開される、というのがパターンなんでしょうか。ただ長いことサボってただけなんですけどね。緊急事態宣言など、もう金輪際出ないで欲しい!と切に願うのであります。宣言は延長されても締切の延長はこれが限界!というわけで第3回です。

五糎道場の主旨についてはこちら。
» 第一回お稽古


第三回お稽古

講評:五糎流師範・油壺徳太郎

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ZEISS Planar 50mm F1.4
Leica M Monochrom
Photo by A. Inden

誰?ここにMRIの写真なんて置いた人は・・・と思ったら木でした。こんな風に画面全体を同じパターンで覆い尽くしてしまう、というのをついやってしまうのですが、50mmぐらいだとディテールが分かり、かつボケも大き過ぎず小さ過ぎずでちょうどいい塩梅。しかし、こういう写真は簡単なようでいて、実はアングルに気を使います。後ろのボケている部分も含めて画面全体に均一に木の枝が配置されるように(サッカーで言うところの「空いているスペース」が生まれないように)、細かくアングルを変えたに違いありません。ここでも50mmという画角がものを言います。モノクロしか撮れないカメラをお使いのようですが、背景に見える光(雲間から漏れる太陽光?)の感じなどは、まさにモノクロでしか表現できない妖しさ。

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Noctilux 50mm F1.0
Leica M-P
Photo by Serow

なんだかとっても古臭い写りで(こういう写り、すごい好きですけどね)、どんなオールドレンズを使っているのかと思ったら、ノクチの1.0でした。1930年代のノンコートみたいな発色ですが、撮影者曰く「マウントがガタガタで隙間ができてる」とのことで、そのせいかもしれませんね。それにしてもおそらく絞り開放だと思いますが(このレンズを開放以外で使う人はいないので)、例によってピントの浅さによる立体感が素敵です。そして遠景のやや乱暴なボケといい、派手に出ているフリンジといい、このレンズの特性を存分に味わえる一枚。

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YONGNUO AF 50mm F1.8
NIKON Z7
Photo by KIMURAX

大人がやると体重で思いのほかスピードが出て、怖い思いをするやつですね。「力の抜けた」というのはなかなか便利な言い回しですが、決してアイロニーではなく、額面通りの「力の抜けた」良い写真。写真をやっていれば傑作を撮ろうと思うのは当然ですし大事なことですが、なんていうか、疲れちゃいません? それは見ている方も同じで、「どうこの写真? すごいでしょ?」みたいな雰囲気に、いささか食傷気味ではあります。その反動でしょうか、それよりも、自分の知らない人(この場合は知ってるけど)が撮ったフツーの写真を見て、思いを馳せたり、いろいろ想像する方が楽しかったりします。脂ぎっとぎと、香辛料たっぷりの肉料理に対して、あっさりとしたお吸い物のしみじみとした味わい、と言えばいいか。昔読んだエッセイに(著者、タイトル失念)「知らない家庭の家族アルバムを集めた図書館がもしあったら、きっと楽しい」というのがあって、それはすごくよく分かる。

PHOTO YODOBASHI

ZEISS Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
SONY α7C
Photo by TAK

言葉を失うとはまさにこのこと。何も言えません。

PHOTO YODOBASHI

Zeiss Sonnar 50mm F1.5
SONY α7C
Photo by NB

あー、なるほど。今やほとんど見かけなくなった公衆電話と、それを示す(かなり雑な取り付け方をされた)古い看板を撮りたかったのですな。しかし、無情にも両者を分断するクロネコヤマト。がゆえに、主役がすり替わってしまいました。これがなかったら確かにいいスナップ写真にはなっていたと思うんですけどね。こういう時に、ふと邪魔な木の枝を勝手に切ったり、杭を抜いたりするマナーの悪いカメラマンのことを少し考えてしまうのです。そんな輩、カメラマンとは呼びたくないですけどね。あ、話が逸れました。いずれにしても、昭和から何も変わっていないお店のようにお見受けします。こんな風景がまだ残っているのはいいですね。

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APO-SUMMICRON 50mm F2 ASPH.
Leica M10 Monochrom
Photo by Naz

うぉ、かっこいい。石元泰博さんの「Chicago, Chicago」を思い出しました。被写体はごく小さな人影ですが、間違いなくそこに目が行くよう、構図や露出を考えて撮られています。そしてそこから、ゆっくりパンしながら全体に意識が広がっていく。お見事。しかし、こう見ると本当に50mmって万能だなあと思いますね。「1本だけレンズを残すとしたら何?」みたいな話がよくありますが、おそらく、というか間違いなく、いちばん多いのは50mmでしょう。

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SUMMARIT 50mm F2.5
Leica ME
Photo by Z II

撮影者の次女ちゃん。これまでずっとお姉ちゃんのお下がりばかりだったけど、やっと、やっと、「自分のために」自転車を買ってもらえた時の一カットだそうです。しかしそこに喜びの表情はなく、むしろ「早よ撮れや」みたいな目つきが印象的です。しかし小学校低学年の女の子のチョイスとしてはシブいチャリですなあ。画角。被写体までの距離感。被写体から向こうの距離感。ぱーん!と広がる広角や、圧縮効果どかーん!な望遠も良いですが、この、まるで遠くの新緑を眺めるかのごとく、目に優しい感じが50mmのいいところ。それにしても家族を撮るというのは、写真というものに課された、もっとも重要な役割だとつくづく思います。お父さんがんばってるから、もうちょっと優しくしてあげてね。


( 2021.05.10 )

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大人も乗れる大きさですって。近所に遊ぶところがあれば、ホントに欲しい。

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「次女の自転車」を探していたのですが、これが目に入ってしまったのでこちらをお勧めします。かっこええ。

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