PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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簡単なようで難しい。標準と呼ばれる割には奥が深過ぎる。そんな50mmレンズに改めて向かい合う鍛練の場、五糎(5センチ)道場のお時間です。今回はその2回目。皆様いかがお過ごしでしょうか。

収まりかけたように見えたコロナ禍ですが、冬に入って再び猛威をふるい始め、2度目の緊急事態宣言も延長を余儀なくされる・・・ええ加減にせえよ、コロナ。それでも嬉しいことに新しい機材は続々と発売されております。それらの作例撮影をすべて自宅で行うわけにはもちろん行かず、スタッフは万全の予防策を講じながら今日もお仕事に勤しんでおります。とは言え不要不急の外出をすべきではないのも事実で、作例撮影のアウトテイク(あるいは掲載された作例そのもの)がこの道場にもやってきますが、それはもう致し方ありません。皆様もくれぐれもお気をつけくださいませ。

五糎道場の主旨についてはこちら。
» 第一回お稽古


第二回お稽古

講評:五糎流師範・油壺徳太郎

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Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM
Leica M
Photo by A.Inden

お、これはこちらでも使われているカットですね。非常に美しい写真。質感描写など、もちろんレンズの性能に依るところも大きいのでしょうが、周辺光量が若干落ちる特性と、この被写体のマッチング(距離感も含めて)が絶妙。単一の被写体で画面全体を埋め尽くすシンプルな構図ですが、全体の色味や、仲間外れとなる落葉の入れ方など、かなり計算して撮られた一枚とお見受けします。大きくプリントして部屋に飾りたいでござる。

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ZEISS Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
SONY α7C
Photo by TAK

例のアレですな。映画が評判になるまで名前すら聞いたことがなかったのですが、そんなに面白いストーリーなら私も観てみたいと若い連中に言ったら、「予備知識(要するにここまでの流れのことね)が無いとぜんぜん分からないと思いますよぉ」とスマホから顔も上げずに棒読みで言われ、あーそうですかと。50mmというのは「目撃者の画角」だと、こういう写真を見るとつくづく思います。お婆ちゃんとお孫さん。お孫さんは何かを買ってもらったようです。先を行くお婆ちゃんは、お孫さんと手を繋ごうとノールックで手を伸ばしますが、買ってもらったものに夢中なお孫さんには、それに応える気持ちはあまり無いようです。その、虚しく空を掴むシワだらけの手にばっちりとピントが合った、まさに「瞬間の目撃者」の視点。良いでござる。

PHOTO YODOBASHI

Voigtlander NOKTON 50mm F1.2 Aspherial SE
SONY α7C
Photo by NB

今ではあまり見られなくなった古式の街灯に、これまた歴史のありそうな店の看板。あとは漆黒の闇に包まれていて何も見えない。郷愁をそそられるとも言えるけれど、それよりも恐怖心の方が先に立つ。いろいろ想像してしまう写真ではあります。画面の重心が中途半端に右側に寄っていて落ち着かない気分にさせられますが、それも「暗闇が醸す不安感」を表現しているのであれば(結果オーライだとしても、それはそれで)奏功しています。完全な暗闇は怖くない。怖いのは暗闇の中に、何かがはっきり見えた時。その意味で、この街灯の下に立っている女の子はかなり怖い。え? 見えないでござるか?

PHOTO YODOBASHI

ZEISS C Sonnar T* 1.5/50 ZM
LEICA SL
Photo by TA

光の使い方の勝利。買ってきた花を生けるために、切り揃えているところでしょうか。その作業は画面の向こう側からしている筈ですが、それをこちら側から撮っています。もちろん、そうしないと花が写らないというのもありますが、もしかすると作業者と撮影者は違うのかもしれない。いずれにしても角度の浅い冬の逆光が美しく、薄いピントと相まって被写体を柔らかく包み込む感じが、この上なく被写体に合っています。撮影者は女性かな? たぶんそうでしょう。もちろん生けたものも撮ったでしょうが、敢えて製作中という「和服の似合う演歌歌手が、楽屋ではTシャツにジーンズ」みたいな雰囲気で撮ったのがいい。床に散らばった切屑もいい仕事をしているでござる。

PHOTO YODOBASHI

Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 II VM MC
Leica M9-P
Photo by Serow

今年は成人式の開催を中止したところが多いと聞きました。当日になって取りやめになったところもあったとか。危険を回避するためですから致し方ありませんが、ご本人や親御さんにとっては一生に一度のお祝い事。特に(私も人の親として声を大にして言いたいのは)親御さんにとっては「子育てという大事業のいったんの終わり」を意味する日でもあるわけで、むしろこの日は親を讃えるべき・・・まぁそれはさておき、そんなご時世にあって、彼女たちは幸運だったわけです。いたってシンプルな写真です。しかし、とても貴重な瞬間を記録したものであることは間違いないし、その重さは計り知れないでござる。

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YONGNUO AF 50mm F1.8
NIKON Z7
Photo by KIMURAX

じわじわくる、不思議な写真。「きちんと揃えて置かれた靴」というのは、日本ではまったく珍しいものではありませんが、見る場所は限定されます。つまりソトとウチの境界線です。玄関とか、座敷席へのあがり口とか。駅のプラットホームや階段の踊り場というのもありますが、それらも二つの世界の境界線という意味では同じでしょう。少なくとも消防署のガレージにこれがあるイメージはありません。ただ一つ辻褄の合う説明があるとすれば、「消防車って実は土禁」ですが(確かに耐火靴のようなものがあるかもしれない)、それにしても何故ここにポツンと一足だけ? ああ、だめだ。消防車がわりとキッチキチに詰まっているのも、靴が若干内股になっているのも、もうすべてが可笑しく見えてくる。よくぞこれに目を留めたと感心します。どう撮るかより、何を撮るかが常に先なんでござる。

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Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 II VM SC
Leica M10
Photo by Naz

これ、計算し尽くされた構図なのが分かりますかね。左上の、ちょうどカドのところから右下に伸びた線は、寸分の狂いもない、完璧な対角線。しかしただの対角線ではなく、同時に太い帯となって、画面下のフチの、ちょうどいい塩梅のあたりにぶつかり、あたかもホッケーゲームのパックが跳ね返るように右上に逃げていく。そうやって二分された画面の一方は単一の文様で埋め尽くされ(しかしそこにもちゃんと変化がある)、もう一方は黒く塗り潰される。この計算ずくの直線的な舞台の上に、計算できない生身の人間(とその影)がポン、と乗る。この妙。写真を見た瞬間に感じる、安心と緊張。お見逸れしましたでござる。


( 2021.02.03 )

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とりあえずコレを買う。話はそれからだ!(全23巻が入っています)

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ちゃんと靴が同梱されているかどうかは未確認です。

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検索すると、カラフルでポップなデザインのものがたくさん出てきますが、やっぱりこういうのでしょう。

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まったく内容が想像できませんが、興味をそそられるタイトルではあります。たまには真面目な本も読みましょうよ。

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