FUJIFILM XF30mmF2.8 R LM WR Macro

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

富士フイルムXマウント用の最新レンズ「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」のレビューをお届けします。スタイリッシュなフォルムにタフネス設計、サクサク決まるAF。大変コンパクトであり、フルサイズ換算で標準相当ということもあって、寄れてしまう常用レンズとして大いに活躍してくれる一本です。最短撮影距離は10cmですから、レンズ先端から被写体までは何とほぼ1cm程度ではありませんか。ややもすると接近戦に興じているうちに被写体に触れてしまいそうな近接能力です。描写傾向は寄っても引いても絞り開放からシャープな像を結び、さすがはマクロレンズだなと。ボケ味も総じて良好で、無限遠でフレームしても解像感が落ちないのはなかなかのものです。本レンズは、4000万画素オーバーの「 X-T5」と同時リリースされており、レンズの粗までも写し出してしまう高画素機での使用を前提に開発・設計されているでしょうから当然と言えば当然のことでしょう。ま、ここで四の五の言っていても始まりませんね。そのあたりを念頭に、試写してきたカットをご覧いただければと思います。

( Photography & Text : KIMURAX )

なるほど絞り開放からシャープな描写。低くなった陽に照らし出された、髪の毛の一本一本まで丁寧に描き出しているのがわかります。背景が認識できる程度のボケ具合ですが、かえってボケすぎないことで周りの雰囲気わかってよいのではないでしょうか。これだけ輝度差があれば多少はフリンジが発生してもおかしくはないのですが、目を皿のようにして探してもどうやら見当たらないようです。

フルサイズ換算でおおよそ標準画角とはいえ、広角寄りだなとわかる伸びやかさがありますね。それにしても絞り開放から曖昧さのない描写をするものです。トーンの連なりもお見事。

フルサイズ換算46mm相当の画角がわかりやすいようにフレーム。標準と言われる50mmとたった4mm程の差ですが、周辺にそれなりのゆとりを感じます。自分の足で前後すればよいとはいえ、そのわずかな余白が画作りに好結果をもたらしてくれることも。例えば、ふたつ前の3人のカットもそんな一枚だと思います。換算50mmの標準レンズで時々感じてしまうある種の窮屈さがないという意味で。

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本レンズの最大撮影倍率は1倍。フルサイズ換算で1.5倍となる等倍撮影に対応します。それでは、グイグイ寄っていきましょう。子供のころ空き地で遊んでいるといつのまにか服にくっついて（刺さって）きた、あの例のヤツです。センダングサというのですね。初めて名前を知りました。そしてくっつく理由がわかりました。よくよく見ると、魚を突いて採る“銛”のように返しがたっぷり付いているではないですか。なるほど、手で払ったぐらいで簡単に取れるはずもありません。寄れるレンズは発見がありますね。これは楽しい。

それでは一気に最短撮影距離にて。椿です。絞り開放では深度が浅すぎるので2段絞っていますが、柔らかなボケです。自然光、手持ち撮影でこの仕上がりはまずまずではないでしょうか。

よく写るものですから、手当たり次第に何でも近づきたくなってすまうのです。

革ジャンのボタン。こんな機会もなければ、大写しで見ることはこの先もなかったでしょう。

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レインボーなスクリーンが目を引くバイクが停まっていたので、ふと近づいていったらトンボがいるじゃないですか。なぜにここにと驚きつつ、逃げてしまわないうちにサクッと撮影。素早く正確なAFは至って静かです。マクロレンズでありながらスナップ撮影にも重宝するという、この使い勝手のよさが本レンズの真骨頂でしょう。

自由な距離感で撮れるのでテーブルフォトも悩みません。サッとカメラを向けたらフレーミングは思いのままです。

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遠景の描写も確認しておきましょう。キレを感じますね。さすがはマクロレンズの解像力。

ひとつ前のカット同様、絞り込んでも画がフラットになるようなことはないですね。むしろメリハリが効いていて、パンチがあります。

周辺を見ても歪曲はなさそうです。

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標準＆マクロの二枚刃仕立て。

ズームがないと無理なシーンは別として、自ら動いてフレームできてしまうシーンであれば、「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」をマウントしておくだけでこんなにもヌケのよい画をものにすることができてしまいます。また、マクロ撮影に威力を発揮するキレのある描写は、中距離、遠距離撮影時にも遺憾なく発揮されることがお分かりいただけたのではないでしょうか。今回使用したカメラボディX-T5の高画素センサーに、本レンズが光の情報を余すことなくきちんと届けていたからこそ。単なるマクロレンズとしてだけではなく標準レンズとしても、スナップや風景撮影にと様々なシーンにグイグイ切り込んで行ける頼もしい一本に仕上がっています。単焦点ながらこれだけ表現の幅の広いレンズですから、手元にあればこれからの日々の撮影がさらに楽しくなること必至です。はたまた、ズームレンズから単焦点レンズへの第一歩をとお考え中の方にとっても、きっと末永く愛用できる存在になることでしょう。出番が多くなるレンズを、一日も早く手にしてください。

( 2023.01.11 )